快読日記

日々の読書記録

「オウムを生きて 元信者たちの地下鉄サリン事件から15年」青木由美子/編

2015年07月03日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《☆☆ 6/26読了 サイゾー 2010年刊 【インタビュー集 オウム真理教】 あおき・ゆみこ》

元信者6人と松本智津夫の四女へのインタビュー集。

いわゆる幹部ではない、一般の信者だった彼らに共通するのは、この世には「真理」というものがある!と考えていて、それを本気で手に入れようとしているところ。

「生涯打ち込める「何か」がほしい。(略)自分を支えてくれる確かなものがほしい」(1965生 女性 27p)

「真理だけは探究する価値がある」(40代 男性 61p)

彼らが言う「真理」ってなんでしょう。うまく想像できません。

そういえば、人が“陰謀説”にはまってしまうのは、知的負荷が少ないわりに“わかった!”という快感が得られるから、なんだそうです。
何で読んだのか忘れてしまいましたが。
たしかに、比較的学校の成績がよかった人ほどはまりやすいかも。


この本に出てくる女性で、オウムの信者の話を聞いて「この人わかってるわ!」と評価して入信したという人がいます。
まず“自分の答え”があって、それに沿うものを「正解」とみなしているわけです。
本人は大真面目ですが、端から見たらばかみたいな姿です。

中学生みたいなことを延々と語る彼らは、実は30代・40代のいいおじさん・おばさんです。
こういう人たちを世間は“真面目”というのでしょう。
ピュアとは違う“真面目”。
このまえ新幹線で焼身自殺して無関係な乗客たちを巻き込んだ男を知る人たちも、口をそろえて“真面目な人だった”と言っていましたね。
単純で頑固、思考に遊びや柔軟性がなく、自己評価が高くて見栄っ張り(プライドとは違う)なので、世間の自分への評価とのギャップに苦しんでいる、それが“真面目な人”の正体なのではないかと思います。

6人のうち2人は親子です。
双方に誤解やすれ違いがあって、それでも子供を見捨てない(出家した娘に会うために自身も信者になった)姿に、親ってありがたいものだなあ、と思ったり。


最後の四女は、その6人とは全く意味が違う話でした。
たまたま松本智津夫の娘として生まれたことを罰するかのような世間の仕打ちには、怒りがこみ上げてきました。
しかし、例えば自宅の隣に松本智津夫の子供が引っ越してきたら、と考えたら、大歓迎!とは言えない現実があるのだと思います。

/「オウムを生きて 元信者たちの地下鉄サリン事件から15年」青木由美子/編