快読日記

日々の読書記録

「眠れる美女」川端康成

2012年03月04日 | 日本の小説
《3/2読了 新潮文庫 1967年刊 【日本の小説 短編集】 かわばた・やすなり(1899~1972)》

収録作品:眠れる美女(昭和35年)/片腕(38年)/散りぬるを(8年)/解説 三島由紀夫

「眠れる美女」
老人たちが夜な夜な訪れる「眠れる美女」の家。
部屋に通され、布団の中で深く眠る若い女の傍らで一夜を過ごすために。
裏表紙には「老人の眼は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している」とありますが、
読みながら連想したのはむしろ昨今の“二次元のキャラクターしか愛せない”とか言う人たちの姿です。
性欲はあっても相手と意志の疎通はしたくない。
相手を観賞したいくせに自分を評価されるのは嫌。
解説で「『愛』からもっとも遠い性慾の形」と指摘されているところなんだろうけど、
これ、うっすら気持ち悪くないですか?
自分がここで観賞される娘たちの年齢をとっくに越えてしまっているから余計にそう思うのかな。
おばさんと純文学は相性が悪い。

「片腕」
主人公の男性「私」が、女の右腕を一晩借りる話。
その了見は「眠れる美女」と同じですが、ちょっとシュールな設定のおかげでおもしろく読めました。
ここでも、「私」に逆らわず、「私」の精神の中に入り込まず、とにかく「私」の邪魔をしない観賞用の娘が静かに美しく描かれています。

「散りぬるを」
小説家「私」が面倒をみている2人の娘(「私」の弟子)が顔見知りの男に殺害される、という話。
刃物を突きつけられても冗談だと信じ、犯人の膝を枕に眠ってしまうような娘に、人間離れしたものを感じます。


そういえば、「眠れる美女」で江口老人と添い寝する娘は6人、「散りぬるを」で殺される娘は2人、「片腕」の娘はパーツだけ。
どれも男女1対1にはなっていないんですね。

/「眠れる美女」川端康成
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