快読日記

日々の読書記録

「老いへの不安 年を取りそこねる人たち」春日武彦

2014年03月24日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《3/23読了 朝日新聞出版 2011年刊 【日本のエッセイ】 かすが・たけひこ(1951~)》

生きてる以上、すべての人が当事者である「老い」の問題。
還暦を迎えた筆者の、批評する冷静な目と当事者としてのうろたえっぷりが混在してぐらぐらしてるところが「老い」問題の手ごわさを表してる気がしました。

年を取ることへの不安といえば、まず体力の問題、容姿の問題、頭の問題(記憶力とか)など具体的なことが浮かびます。
でも、この人のいう「不安」はそういうことじゃないみたい。

「若者のまま老朽化した姿がわたしというわけで、これでは老いイコール劣化としかならない。見苦しいだけではないか。どうやって「きちんと」歳を取ったらいいのか分からないのである。しかも自分の周囲を見回し、世代の近い人間を眺めてみても、彼らも上手く老人になれそうに思えない。厚い一枚板で作られた木製の机ならば、古びればなお艶が増していくだろう。しかしプラスチックの食器は、変色し脆くなっていくだけである。木材はプラスチックの手本にはならないのである」(15p)

“劣化した人=老人”とひとくくりにされるのは嫌だ、滋味あふれる落ち着いた「年寄り」になりたい、と言いながら、筆者があげていく年寄りのケースが、どう考えてもちょっとおかしい、共感しにくいキッチュな人たちで、そこらへんがまた味わい深い。
いったいどうなりたいんだ。

結局、こうなりたい!というモデルは見つからないかんじで、「そりゃそうだ」という読後感。

ところで、本書には、魅力的な短編小説がたくさん紹介されています。
春日武彦が編んだアンソロジーがあればぜひ読んでみたいなあと思います。
できれば解説(コメントでも)つきで。

/「老いへの不安 年を取りそこねる人たち」春日武彦
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