野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

地形図の話 ~斜面の角度について考えてみる~

2016年01月28日 | 地形図の話
今回は小ネタです。斜面の角度(斜度)について考えてみます。まあ難しい話をしなくても地形図を見てれば何となくわかるところなんですけれども、とりあえず理屈っぽく考えてみます。

まずは等高線について考えます。国土地理院のサイトに解説(主曲線計曲線)がありますが、要は高さの等しい線です。尾根と谷あるいは山頂と鞍部は等高線の形によって表現されることは前回指摘しました。尾根と谷を見ると感覚的にわかると思うのですが、等高線の間隔が狭いほど傾斜が急で、逆に等高線の間隔が広いほど傾斜は緩やかとなっています。

下のボクが作った下手くそな図を見て下さい(あっ、書き忘れましたが、底辺と高さで挟まれた角は直角です)


地形図上での直線距離は図の「底辺」に当たります。図の「高さ」に当たる部分は地形図上の一定の直線距離における等高線の本数で決まります。下の図は上の図に等高線を横に引いて、高さの異なる三角形(なお底辺は同じ長さ)を比較したものです。高いほうの三角形は低いほうよりも等高線の本数が多くなっています。このように同じ距離であれば、等高線の本数が多いほうが高く、また傾斜が急になっていることがわかります。


ところで普段歩いている山の斜面の角度って大体どのくらいかご存知でしょうか?一般的には斜度が30°を超えると斜面を真直ぐ歩くことが出来なくなる、つまり九十九折に道を付けたり土留めの木段を設置しないと上がれなくなると言われています。試しに年初めに歩いた浅間山東の斜面急傾斜だった印象の強い小都津路山南東の斜面について斜度を測ってみます。斜度を算出するには逆三角関数のアークタンジェントarctanを使います。計算式は

arctan(高さ/底辺)=θ(傾斜角)

です(arctanの計算はここでできます)。底辺はスケールコンパスに付いている25000分の1の距離表示で測り、高さは等高線の数を数えます。浅間山は林道の屈曲点から山頂手前の緩やかな平場まで距離は400、高さ130となり、斜度は約18°と出ました。一方小都津路山は山頂直下の部分で距離100、高さ60で、斜度は約31°と出ました。浅間山の登りは結構急な感じもしましたが、真直ぐ歩いて登れたので、それほど斜度は大きくなかったようです。奥武蔵の山の一般ルートにおける斜度は大体20°くらいまでというのが多いようです。また斜度が30°を超えていなくても旧正丸峠辺りのように木段を付けていることがよくあります(当時の記事から計算すると26°くらいのようです)。小都津路山は30°を超えていて、実際真直ぐ登っていくのはかなり困難でした。ただバリエーションルートでは木段はもちろんのこと、九十九折にもなっていないことが多く、真直ぐ歩けるギリギリの斜面ということも少なくありません(なお、この斜度は平均値を出しているため、実際にはもっと急だったり、または緩やかな斜面であったりすることをご了承ください)。

浅間山の斜面 踏み跡は真直ぐ登るように付けられています)


小都津路山直下の斜面 確か踏み跡はジグザグに付けられていたような…)

実地では斜度を一々測っている余裕はありませんので、等高線がどのくらいの密度だとどのくらいの斜度になるのかを経験していくことで、地形図から斜度を予測していきます。ただ平塚さんの本にも書かれていますが、しばらく山に行かないと傾斜の感覚は忘れてしまいます。したがって地形図を使いこなしていくということは常に地形図を使い続けなければならないということを意味しているのです。
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