(太郎坊谷川沿いの道)
西武池袋線高麗駅のホームから南側を眺めると丘の上に武蔵台と呼ばれる住宅地が広がっているのが見える。古い地形図を見ると現在の平らな丘とは異なる尾根と谷が入り交じった丘陵地帯で、高麗川へ流れ出ていた太郎坊谷川や勇ノ沢沿いの道を使って尾根を越えていたようだ。かつて滝不動尊を訪れた際に参考にさせていただいた武蔵太郎さんの「こま武蔵台団地 蛙のつぶやき」というサイト内にある「武蔵台の昔1 古道」という記事によると武蔵台にあった太郎坊新道と勇ノ沢道は宅地造成により消失したが、武蔵台から西武の車両基地へと下る大ぐった坂は今でも存在しているという。そこで今回は東吾野駅から高麗川沿いに下り、太郎坊新道の入口があった所から武蔵台へと上がって大ぐった坂を下る予定だ。また地理院地図に道形が残されている太郎坊谷川沿いの道も探索する予定である。
東吾野駅から横手渓谷
朝7時ちょっと前に出発地点である東吾野駅を降りる。梅雨明けが宣言された盛夏の時期にもかかわらず登山者をそれなりに見かける。今年から盛夏・厳冬期は山歩きを休んでいるのだが、他人が山を歩いていると自分も山歩きがしたくなってしまうのには困ったものだ。まずは5月に使った屋船山への登山ルートを再び歩く。田島地区の住宅街を抜け、高麗川沿いの林道のような広さの山道に入る。九十九折の手前に岬のように突き出た岩場があり、高麗川をのんびりと眺めるのに良い。細道の九十九折から西武線を見下ろすトラバース道を進むと再び林道のような広さの道へ変わる。ここからは初めて歩く道だ。
(東吾野駅から横手渓谷まで 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(東吾野駅裏から屋船山を望む)
(高麗川に突き出た岬のような所)
(岬から高麗川を眺める)
(鉄道写真を撮るのに良さそうなルートだ)
(九十九折が終わるとトラバース道に)
緩やかなアップダウンを繰り返す道にはクルマの轍が残っており、木々の間からは深沢山がよく見える。墓地を過ぎると道が高麗川方面へと分岐する。分岐には道標が立ち、武蔵横手駅を示しているのだが、橋が破損していて通り抜けできないとの注意書きがされている。様子だけでも見に行こうかと思っていると犬を連れた地元の人が通りがかりやはり通行止めになっていると忠告してくれる。流石にそこまで言われてまで行ってみたいとは思わないので、屋船山を登った際に見かけた林道の入口だけは確認しに行くことにする。分岐から少し入るとすぐに右手にゲートの設けられた林道が登っている。5月に見かけた道はおそらくこれだろう。満足したので道を戻り、高麗川方面へと下る。
(クルマの轍もある林道のような道)
(深沢山らしき山が見える)
(左へ下るのが国道方面)
(通行止めの表記有り)
(ここから屋船山方面へと登ることが出来そうだ)
梅林らしき所を抜けて踏切を渡ると勝小舟地区の住宅街だ。東は橋がないので一旦西に戻る形になる。下平戸自治会館を見送り、天神橋を渡って国道299号に出る。ここまで出発してから30分。結構な遠回りだった。深沢集落の入口を過ぎると右に道路が分かれる。古い地形図を見るとこちらは旧道だったようだ。交通量が少ないのでこの旧道を行く。吾野原木センターの材木置き場へやって来ると釜戸(かまど)山がよく見える。国道に合流すると今度は長念寺が見えてくる。愛宕山の登山口がある寺でかなり敷地が広い。東側の入口までやって来ると道路が右へ分岐する。長念寺側には道標があって釜戸山と武蔵横手駅を示している。ただ民宿川波の看板が大きく掲げられているのでそちらのほうが目印になる。
(梅林らしき所を通る 右に見えるのは深沢山)
(下平戸自治会館 看板に「ここは勝小舟」と書かれている)
(国道から見えるのはおそらく愛宕山)
(入漁料を払っての釣りが認められているためか高麗川へ下りられる所がある)
(吾野原木センターの材木置き場のそばを旧道が通る 正面の山は釜戸山だろう)
(長念寺の前に道標があって横手渓谷・武蔵横手駅も示している)
(民宿川波の看板)
高麗川を渡ると住宅街が続く。武蔵横手駅までこの炎天下を歩くのはしんどいなぁと思っていると民家の路地の向こうに踏切が見える。奥武蔵登山詳細図(吉備人出版)を見ると踏切を渡って山側を抜けていけるらしい。踏切を渡ると気持ちの良い野原が広がる。途中道標もあり、ハイキングコースの扱いになっている。住宅街に入り、改装中の薬師堂のある交差点を左に下る。踏切を渡って国道を進めば武蔵横手駅に着く。ここも駅員が常駐しなくなり、自動券売機の扱いなども全て停止している。静かになった駅の待合所で遅めの朝食を取っていると西武秩父行の電車が入線してくる。ここでも降りてくる登山者が意外と多い。五常の滝にでも向かうのだろうか?
(高麗川から民宿川波(左)と釜戸山を望む)
(ここから奥の踏切を渡る)
(ラビューが通過していく)
(野原が広がる)
(ハイキングコースであることを示す道標)
(この上に薬師堂が見えるが改装中)
(踏切から愛宕山を望む)
(武蔵横手駅)
駅を出て五常の滝への道を見送ると右に道路が分かれる。住宅街を10分弱進むと河原へと下りる道が延びる。ここが横手渓谷の遊歩道だ。河原からは西武池袋線を望むことができ、鉄道写真のロケーションに良さそうだ。川沿いには整備された遊歩道があり、電車からもよく見える。途中ベンチなどがあるが夏場は暑くてのんびりとしていられない。川を眺めながら進むと左手に武蔵横手神社への道が分かれる。坂の上に神社があってなかなか雰囲気は良い。神社から戻ってくる所で民家の壁にプレートが張り付けられていることに気付いた。プレートには2019年の台風19号が襲来した際の最高水位が記されており、遊歩道を遥かに超える高さまで水が押し寄せた事実に驚かされる。
(ここを右に入る)
(関ノ入沢 五常の滝から流れ出した沢だ)
(住宅街の途中に横手渓谷遊歩道への道に入れる 入るとすぐにこのような景色が広がる)
(西武線を見上げる ここも鉄道写真に良さそう)
(遊歩道下の横手渓谷)
(ここから遊歩道が延びる 西武線からも見える)
(よく整備された道が続く 途中河原へ下りられる所もある)
(この先に横手神社がある)
(この神社の手前には道路があって車が通るので要注意)
(横手神社の拝殿を見上げる)
(2019年の台風19号で増水した時の最高水位が示されている)
諏訪橋を渡って老人ホームを過ぎると地蔵尊の立つ所で川へと下る道が分岐する。一旦川へ下ってみると木の板を渡した簡素な橋が架けられている。登山詳細図によると大門橋という名が付けられていて、橋の中ほどまで行くと横手渓谷の眺めが良い。ただ木の板は撓み易いのでバランスを取るのが結構難しい。
(諏訪橋)
(この地蔵尊の前の道を下ると大門橋に出る)
(大門橋)
(大門橋から見る横手渓谷)
こま武蔵台を歩く
道を戻って踏切を渡ると道路は左右に分かれる。右に登る道は日高市の横手地区へと出る道だ。武蔵台へは左の細い道路を入る。杉の植えられた鬱蒼とした林を抜ける道はなかなか雰囲気が良い。ただ夏場は羽虫が大量にいて鬱陶しい。一旦踏切を渡って依然として雑木林に囲まれた道を行くと再度踏切が現れる。この踏切を渡った先がかつて存在していた太郎坊新道の入口に当たる。踏切を渡ると左右に道が延びていて、右は民家へ左は武蔵台へと続く。線路沿いの林を抜けると草原の斜面が眩しい武蔵台の分譲地下に出る。道なりに行くと道が二手に分かれ、右は太郎坊谷川沿いの道、左は武蔵台に通じる。武蔵台への道に入るとすぐに分譲地へと上がる舗装路が延びているので、先に太郎坊谷川沿いの道を歩いてみる。
(武蔵台周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(踏切を渡って左の道に入ると鬱蒼とした林の中を行く)
(この踏切を渡るとかつての太郎坊新道の入口に至る なお踏切を見送って左に進むとかつては勇ノ沢道に通じていた)
(草原の斜面が見えてくる)
(振り返ると日和田山が見える)
(右が太郎坊谷川沿いの道 左は武蔵台の分譲地方面)
太郎坊谷川沿いの道は元々現在の横手・永田台地区を抜けて飯能市下火(しもび)地区まで延びていて、永田台通りはその名残ともいえる。道に入ると轍があって現在でも林道のような役目を果たしているのだろう。水底の浅い川なのだが川から少し離れた左岸を只管道が延びている。鬱蒼とした杉林が続き、かつてはこうした景色が分譲地一帯に広がっていたのだろうなと推測される。分岐から10分ほど歩くと草原と灌木だらけの詰めに出る。比較的傾斜の緩い谷で林に入れば藪も無いので分譲地に出ることもできるかもしれない。しかし住民の方たちに迷惑をかけたくないので道を引き返す。
(太郎坊谷川沿いには林道のような広い道が延びる)
(杉が多いのだが左岸は広葉樹なども多い)
(この先で急斜面となり、道は消える)
(ここを登って行けなくはないが住民に迷惑を掛けたくないので引き返す)
(途中こんな看板がある 生活道として使われていた頃の名残だろうか?)
今度は武蔵台方面への道に入る。一旦分譲地の上に出てみたいので舗装路を登ると住民の方らしき高齢の御夫婦に出会う。挨拶を交わした際に特に咎められることは無かったのでこの道を使うことは問題ないようだ。下から見てもわかるように草地の中を登っているので北側の眺めが良い。ここも鉄道写真を撮りに来る人はいそうである。分譲地に出る所で車止めがあるのでクルマで上って来ることはできないようになっている。
(分譲地へと上がる道)
(西武線と日和田山の眺めが良い)
(武蔵台7丁目に出る)
暑い中戻って下に延びているもう一つの舗装路を進む。小さな貯水池のある所までは舗装されていて、それより先は砂利が敷かれた公園になっている。浅い沢がすぐそばを流れていて雰囲気は良い。ただここも羽虫が多く、立ち止まるとあっという間に集られてしまう。東屋まで来ると右岸に分譲地への木段が延びている。結構急でこれを登るのは辛そうだ。東屋の先は砂防ダムがあるのでここで引き返す。
(小さな貯水池脇を通る 水辺なので羽虫が凄い)
(ベンチが置かれた公園のような砂利道を行く すぐ側を沢が流れる)
(東屋 左手に木段が登っている)
(砂防ダムまでやって来た 紅葉の頃だと気持ちの良い所かもしれない)
再び厳しい日差しの下舗装路を登り返して分譲地に出る。古い地形図を見ると太郎坊新道は今いる武蔵台7丁目から4丁目・5丁目を直線的に突っ切って四つ辻へと延びていた。一方武蔵台を通っていたもう一つの道である勇ノ沢道は武蔵台に入る手前にあった踏切を更に東へ進み、現在の4丁目と3丁目の間にあった勇ノ沢沿いにあったようだ。7丁目の西端の道路を歩いていると4丁目へ向かって上り坂になっているのが見える。かつて4丁目の辺りに尾根が張り出していたのでその名残だろう。東屋から登ってきていた道を見送ると山脈公園が見えてくる。園内にはスロープが付いていて暑さで疲れた身体には有難い。砂防ダムの上の遊水地の様子も観察できる。
(7丁目から4丁目方面を見ると登り坂になっている かつての尾根の名残だろうか)
(ここから先ほどの東屋へと下れる)
(山脈公園)
(公園内から砂防ダム上の遊水地を望める)
交通量の多い学校通りを渡って階段を登ると武蔵台中学校の脇に出る。グラウンドを回り込むと越上山や関八州見晴台などが見える展望スポットになっている。でも生徒たちがいたらここから写真撮影をするのは避けたいところだ。暑い住宅街を道なりに進み、配水所のタンクを見送ると道標の立つ四つ辻に着く。当初はここから横手村の太郎坊嶽(こちらのページを参照)跡を経由して多峯主山に登る予定だったが、暑さで疲労が激しいので大ぐった坂を直接下ることにする。
(この木段を登ると武蔵台中学校のグラウンド脇に出る)
(グラウンドを回り込むと眺めが良い)
(四つ辻 多峯主山を指す道は横手村の太郎坊嶽跡を経由する道だ)
林に入ると再び道標が立ち、右へ天覧山・多峯主山への道が分かれる。フェンスが設けられた広い道を進むと今度は左に登り坂が分岐する。おそらくこれが飯能西武の森への道だろう。分岐を見送った後も広く整備された道が続く。「こま武蔵台団地 蛙のつぶやき」によると飯能ツーデーマーチのために整備されたらしいとのこと。傾斜が急になるといくらかかつての山道の雰囲気も感じられる。傾斜が緩んでくると馬頭観音が彫られた石橋供養塔に着く。大きな木の根元に供養塔が置かれ、大ぐった坂の中では最も往時の雰囲気を残す所だ。
(四つ辻 林内に入る手前も含めた名称ではないかと推測される)
(左への分岐は飯能西武の森方面へと至るようだ)
(大ぐった坂は広い道を下る 往時の雰囲気には乏しい)
(傾斜が急な所 沢沿いでいくらかかつての山道の雰囲気も感じられる)
(石橋供養塔が置かれた分岐 左は飯能西武の森へ通じる 右は武蔵丘車両基地・飯能市観光案内所方面)
(石橋供養塔 正面には馬頭観音が彫られている)
道なりに進めば西武鉄道の武蔵丘車両基地に出る。ここからは飯能駅まで延々と舗装路歩きが続く。途中飯能市観光案内所夢馬で少し休憩を取ったものの、そこから駅まで40分も歩かなければならなかった。山歩きに比べれば疲労感は軽いものの、真夏の里歩きもあまり長いものは難しいと思い知らされたのだった。
(道なりに行けば武蔵丘車両基地の入口に着く)
(武蔵丘車両基地)
(飯能市観光案内所夢馬)
(飯能市仲町 飯能ぎんざと呼ばれている)
DATA:
東吾野駅6:55→7:27下平戸自治会館(勝小舟地区)→7:46長念寺→8:02武蔵横手駅8:07→8:14横手渓谷遊歩道→8:21武蔵横手神社→8:25諏訪橋→8:31大門橋→8:43太郎坊谷川入口→8:54太郎坊谷川の詰め→9:18武蔵台7丁目→9:24山脈公園→9:43四つ辻→9:54石橋供養塔(大ぐった坂入口)→10:01飯能市観光案内所夢馬→10:40飯能駅
地形図 飯能
トイレ 飯能市観光案内所夢馬
交通機関
西武池袋線 小手指~東吾野 356円
西武池袋線 飯能~小手指 252円
参考HP:「蛙のつぶやき」「こま武蔵台自治会」
関連記事:
平成28年2月21日 久須美坂から滝不動尊を経て第二天覧山
2023年5月28日 屋船山から平野砦跡を経て糸引山
なお、愛宕山については平成23年11月26日 後編 越上山からスカリ山と深沢山・愛宕山
釜戸山については平成24年9月1日 かまど山から大高山
長尾根山については平成29年1月29日 関ノ入尾根から黒尾根(訂正版)
舗装路歩きが多いため底の固い山靴は不適です。スニーカーでも問題ありませんが、山道を歩くのが不安な人はトレランシューズがお勧めです。
西武池袋線高麗駅のホームから南側を眺めると丘の上に武蔵台と呼ばれる住宅地が広がっているのが見える。古い地形図を見ると現在の平らな丘とは異なる尾根と谷が入り交じった丘陵地帯で、高麗川へ流れ出ていた太郎坊谷川や勇ノ沢沿いの道を使って尾根を越えていたようだ。かつて滝不動尊を訪れた際に参考にさせていただいた武蔵太郎さんの「こま武蔵台団地 蛙のつぶやき」というサイト内にある「武蔵台の昔1 古道」という記事によると武蔵台にあった太郎坊新道と勇ノ沢道は宅地造成により消失したが、武蔵台から西武の車両基地へと下る大ぐった坂は今でも存在しているという。そこで今回は東吾野駅から高麗川沿いに下り、太郎坊新道の入口があった所から武蔵台へと上がって大ぐった坂を下る予定だ。また地理院地図に道形が残されている太郎坊谷川沿いの道も探索する予定である。
東吾野駅から横手渓谷
朝7時ちょっと前に出発地点である東吾野駅を降りる。梅雨明けが宣言された盛夏の時期にもかかわらず登山者をそれなりに見かける。今年から盛夏・厳冬期は山歩きを休んでいるのだが、他人が山を歩いていると自分も山歩きがしたくなってしまうのには困ったものだ。まずは5月に使った屋船山への登山ルートを再び歩く。田島地区の住宅街を抜け、高麗川沿いの林道のような広さの山道に入る。九十九折の手前に岬のように突き出た岩場があり、高麗川をのんびりと眺めるのに良い。細道の九十九折から西武線を見下ろすトラバース道を進むと再び林道のような広さの道へ変わる。ここからは初めて歩く道だ。
(東吾野駅から横手渓谷まで 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(東吾野駅裏から屋船山を望む)
(高麗川に突き出た岬のような所)
(岬から高麗川を眺める)
(鉄道写真を撮るのに良さそうなルートだ)
(九十九折が終わるとトラバース道に)
緩やかなアップダウンを繰り返す道にはクルマの轍が残っており、木々の間からは深沢山がよく見える。墓地を過ぎると道が高麗川方面へと分岐する。分岐には道標が立ち、武蔵横手駅を示しているのだが、橋が破損していて通り抜けできないとの注意書きがされている。様子だけでも見に行こうかと思っていると犬を連れた地元の人が通りがかりやはり通行止めになっていると忠告してくれる。流石にそこまで言われてまで行ってみたいとは思わないので、屋船山を登った際に見かけた林道の入口だけは確認しに行くことにする。分岐から少し入るとすぐに右手にゲートの設けられた林道が登っている。5月に見かけた道はおそらくこれだろう。満足したので道を戻り、高麗川方面へと下る。
(クルマの轍もある林道のような道)
(深沢山らしき山が見える)
(左へ下るのが国道方面)
(通行止めの表記有り)
(ここから屋船山方面へと登ることが出来そうだ)
梅林らしき所を抜けて踏切を渡ると勝小舟地区の住宅街だ。東は橋がないので一旦西に戻る形になる。下平戸自治会館を見送り、天神橋を渡って国道299号に出る。ここまで出発してから30分。結構な遠回りだった。深沢集落の入口を過ぎると右に道路が分かれる。古い地形図を見るとこちらは旧道だったようだ。交通量が少ないのでこの旧道を行く。吾野原木センターの材木置き場へやって来ると釜戸(かまど)山がよく見える。国道に合流すると今度は長念寺が見えてくる。愛宕山の登山口がある寺でかなり敷地が広い。東側の入口までやって来ると道路が右へ分岐する。長念寺側には道標があって釜戸山と武蔵横手駅を示している。ただ民宿川波の看板が大きく掲げられているのでそちらのほうが目印になる。
(梅林らしき所を通る 右に見えるのは深沢山)
(下平戸自治会館 看板に「ここは勝小舟」と書かれている)
(国道から見えるのはおそらく愛宕山)
(入漁料を払っての釣りが認められているためか高麗川へ下りられる所がある)
(吾野原木センターの材木置き場のそばを旧道が通る 正面の山は釜戸山だろう)
(長念寺の前に道標があって横手渓谷・武蔵横手駅も示している)
(民宿川波の看板)
高麗川を渡ると住宅街が続く。武蔵横手駅までこの炎天下を歩くのはしんどいなぁと思っていると民家の路地の向こうに踏切が見える。奥武蔵登山詳細図(吉備人出版)を見ると踏切を渡って山側を抜けていけるらしい。踏切を渡ると気持ちの良い野原が広がる。途中道標もあり、ハイキングコースの扱いになっている。住宅街に入り、改装中の薬師堂のある交差点を左に下る。踏切を渡って国道を進めば武蔵横手駅に着く。ここも駅員が常駐しなくなり、自動券売機の扱いなども全て停止している。静かになった駅の待合所で遅めの朝食を取っていると西武秩父行の電車が入線してくる。ここでも降りてくる登山者が意外と多い。五常の滝にでも向かうのだろうか?
(高麗川から民宿川波(左)と釜戸山を望む)
(ここから奥の踏切を渡る)
(ラビューが通過していく)
(野原が広がる)
(ハイキングコースであることを示す道標)
(この上に薬師堂が見えるが改装中)
(踏切から愛宕山を望む)
(武蔵横手駅)
駅を出て五常の滝への道を見送ると右に道路が分かれる。住宅街を10分弱進むと河原へと下りる道が延びる。ここが横手渓谷の遊歩道だ。河原からは西武池袋線を望むことができ、鉄道写真のロケーションに良さそうだ。川沿いには整備された遊歩道があり、電車からもよく見える。途中ベンチなどがあるが夏場は暑くてのんびりとしていられない。川を眺めながら進むと左手に武蔵横手神社への道が分かれる。坂の上に神社があってなかなか雰囲気は良い。神社から戻ってくる所で民家の壁にプレートが張り付けられていることに気付いた。プレートには2019年の台風19号が襲来した際の最高水位が記されており、遊歩道を遥かに超える高さまで水が押し寄せた事実に驚かされる。
(ここを右に入る)
(関ノ入沢 五常の滝から流れ出した沢だ)
(住宅街の途中に横手渓谷遊歩道への道に入れる 入るとすぐにこのような景色が広がる)
(西武線を見上げる ここも鉄道写真に良さそう)
(遊歩道下の横手渓谷)
(ここから遊歩道が延びる 西武線からも見える)
(よく整備された道が続く 途中河原へ下りられる所もある)
(この先に横手神社がある)
(この神社の手前には道路があって車が通るので要注意)
(横手神社の拝殿を見上げる)
(2019年の台風19号で増水した時の最高水位が示されている)
諏訪橋を渡って老人ホームを過ぎると地蔵尊の立つ所で川へと下る道が分岐する。一旦川へ下ってみると木の板を渡した簡素な橋が架けられている。登山詳細図によると大門橋という名が付けられていて、橋の中ほどまで行くと横手渓谷の眺めが良い。ただ木の板は撓み易いのでバランスを取るのが結構難しい。
(諏訪橋)
(この地蔵尊の前の道を下ると大門橋に出る)
(大門橋)
(大門橋から見る横手渓谷)
こま武蔵台を歩く
道を戻って踏切を渡ると道路は左右に分かれる。右に登る道は日高市の横手地区へと出る道だ。武蔵台へは左の細い道路を入る。杉の植えられた鬱蒼とした林を抜ける道はなかなか雰囲気が良い。ただ夏場は羽虫が大量にいて鬱陶しい。一旦踏切を渡って依然として雑木林に囲まれた道を行くと再度踏切が現れる。この踏切を渡った先がかつて存在していた太郎坊新道の入口に当たる。踏切を渡ると左右に道が延びていて、右は民家へ左は武蔵台へと続く。線路沿いの林を抜けると草原の斜面が眩しい武蔵台の分譲地下に出る。道なりに行くと道が二手に分かれ、右は太郎坊谷川沿いの道、左は武蔵台に通じる。武蔵台への道に入るとすぐに分譲地へと上がる舗装路が延びているので、先に太郎坊谷川沿いの道を歩いてみる。
(武蔵台周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(踏切を渡って左の道に入ると鬱蒼とした林の中を行く)
(この踏切を渡るとかつての太郎坊新道の入口に至る なお踏切を見送って左に進むとかつては勇ノ沢道に通じていた)
(草原の斜面が見えてくる)
(振り返ると日和田山が見える)
(右が太郎坊谷川沿いの道 左は武蔵台の分譲地方面)
太郎坊谷川沿いの道は元々現在の横手・永田台地区を抜けて飯能市下火(しもび)地区まで延びていて、永田台通りはその名残ともいえる。道に入ると轍があって現在でも林道のような役目を果たしているのだろう。水底の浅い川なのだが川から少し離れた左岸を只管道が延びている。鬱蒼とした杉林が続き、かつてはこうした景色が分譲地一帯に広がっていたのだろうなと推測される。分岐から10分ほど歩くと草原と灌木だらけの詰めに出る。比較的傾斜の緩い谷で林に入れば藪も無いので分譲地に出ることもできるかもしれない。しかし住民の方たちに迷惑をかけたくないので道を引き返す。
(太郎坊谷川沿いには林道のような広い道が延びる)
(杉が多いのだが左岸は広葉樹なども多い)
(この先で急斜面となり、道は消える)
(ここを登って行けなくはないが住民に迷惑を掛けたくないので引き返す)
(途中こんな看板がある 生活道として使われていた頃の名残だろうか?)
今度は武蔵台方面への道に入る。一旦分譲地の上に出てみたいので舗装路を登ると住民の方らしき高齢の御夫婦に出会う。挨拶を交わした際に特に咎められることは無かったのでこの道を使うことは問題ないようだ。下から見てもわかるように草地の中を登っているので北側の眺めが良い。ここも鉄道写真を撮りに来る人はいそうである。分譲地に出る所で車止めがあるのでクルマで上って来ることはできないようになっている。
(分譲地へと上がる道)
(西武線と日和田山の眺めが良い)
(武蔵台7丁目に出る)
暑い中戻って下に延びているもう一つの舗装路を進む。小さな貯水池のある所までは舗装されていて、それより先は砂利が敷かれた公園になっている。浅い沢がすぐそばを流れていて雰囲気は良い。ただここも羽虫が多く、立ち止まるとあっという間に集られてしまう。東屋まで来ると右岸に分譲地への木段が延びている。結構急でこれを登るのは辛そうだ。東屋の先は砂防ダムがあるのでここで引き返す。
(小さな貯水池脇を通る 水辺なので羽虫が凄い)
(ベンチが置かれた公園のような砂利道を行く すぐ側を沢が流れる)
(東屋 左手に木段が登っている)
(砂防ダムまでやって来た 紅葉の頃だと気持ちの良い所かもしれない)
再び厳しい日差しの下舗装路を登り返して分譲地に出る。古い地形図を見ると太郎坊新道は今いる武蔵台7丁目から4丁目・5丁目を直線的に突っ切って四つ辻へと延びていた。一方武蔵台を通っていたもう一つの道である勇ノ沢道は武蔵台に入る手前にあった踏切を更に東へ進み、現在の4丁目と3丁目の間にあった勇ノ沢沿いにあったようだ。7丁目の西端の道路を歩いていると4丁目へ向かって上り坂になっているのが見える。かつて4丁目の辺りに尾根が張り出していたのでその名残だろう。東屋から登ってきていた道を見送ると山脈公園が見えてくる。園内にはスロープが付いていて暑さで疲れた身体には有難い。砂防ダムの上の遊水地の様子も観察できる。
(7丁目から4丁目方面を見ると登り坂になっている かつての尾根の名残だろうか)
(ここから先ほどの東屋へと下れる)
(山脈公園)
(公園内から砂防ダム上の遊水地を望める)
交通量の多い学校通りを渡って階段を登ると武蔵台中学校の脇に出る。グラウンドを回り込むと越上山や関八州見晴台などが見える展望スポットになっている。でも生徒たちがいたらここから写真撮影をするのは避けたいところだ。暑い住宅街を道なりに進み、配水所のタンクを見送ると道標の立つ四つ辻に着く。当初はここから横手村の太郎坊嶽(こちらのページを参照)跡を経由して多峯主山に登る予定だったが、暑さで疲労が激しいので大ぐった坂を直接下ることにする。
(この木段を登ると武蔵台中学校のグラウンド脇に出る)
(グラウンドを回り込むと眺めが良い)
(四つ辻 多峯主山を指す道は横手村の太郎坊嶽跡を経由する道だ)
林に入ると再び道標が立ち、右へ天覧山・多峯主山への道が分かれる。フェンスが設けられた広い道を進むと今度は左に登り坂が分岐する。おそらくこれが飯能西武の森への道だろう。分岐を見送った後も広く整備された道が続く。「こま武蔵台団地 蛙のつぶやき」によると飯能ツーデーマーチのために整備されたらしいとのこと。傾斜が急になるといくらかかつての山道の雰囲気も感じられる。傾斜が緩んでくると馬頭観音が彫られた石橋供養塔に着く。大きな木の根元に供養塔が置かれ、大ぐった坂の中では最も往時の雰囲気を残す所だ。
(四つ辻 林内に入る手前も含めた名称ではないかと推測される)
(左への分岐は飯能西武の森方面へと至るようだ)
(大ぐった坂は広い道を下る 往時の雰囲気には乏しい)
(傾斜が急な所 沢沿いでいくらかかつての山道の雰囲気も感じられる)
(石橋供養塔が置かれた分岐 左は飯能西武の森へ通じる 右は武蔵丘車両基地・飯能市観光案内所方面)
(石橋供養塔 正面には馬頭観音が彫られている)
道なりに進めば西武鉄道の武蔵丘車両基地に出る。ここからは飯能駅まで延々と舗装路歩きが続く。途中飯能市観光案内所夢馬で少し休憩を取ったものの、そこから駅まで40分も歩かなければならなかった。山歩きに比べれば疲労感は軽いものの、真夏の里歩きもあまり長いものは難しいと思い知らされたのだった。
(道なりに行けば武蔵丘車両基地の入口に着く)
(武蔵丘車両基地)
(飯能市観光案内所夢馬)
(飯能市仲町 飯能ぎんざと呼ばれている)
DATA:
東吾野駅6:55→7:27下平戸自治会館(勝小舟地区)→7:46長念寺→8:02武蔵横手駅8:07→8:14横手渓谷遊歩道→8:21武蔵横手神社→8:25諏訪橋→8:31大門橋→8:43太郎坊谷川入口→8:54太郎坊谷川の詰め→9:18武蔵台7丁目→9:24山脈公園→9:43四つ辻→9:54石橋供養塔(大ぐった坂入口)→10:01飯能市観光案内所夢馬→10:40飯能駅
地形図 飯能
トイレ 飯能市観光案内所夢馬
交通機関
西武池袋線 小手指~東吾野 356円
西武池袋線 飯能~小手指 252円
参考HP:「蛙のつぶやき」「こま武蔵台自治会」
関連記事:
平成28年2月21日 久須美坂から滝不動尊を経て第二天覧山
2023年5月28日 屋船山から平野砦跡を経て糸引山
なお、愛宕山については平成23年11月26日 後編 越上山からスカリ山と深沢山・愛宕山
釜戸山については平成24年9月1日 かまど山から大高山
長尾根山については平成29年1月29日 関ノ入尾根から黒尾根(訂正版)
舗装路歩きが多いため底の固い山靴は不適です。スニーカーでも問題ありませんが、山道を歩くのが不安な人はトレランシューズがお勧めです。