野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 2022年2月26日 中藤尾根から藤光寺山と天覚山表参道

2022年03月02日 | 奥武蔵へようこそ
(天神山南峰と北峰との鞍部 歩きやすい尾根が続く)

飯能駅から名栗方面のバスに乗ると新寺(にってら)バス停で中沢方面と湯の沢方面に路線が分かれる。その二つの路線に囲まれた小さな尾根は地名を取って中藤(なかとう)尾根と呼ばれている。9年前に龍谷山を歩いた際、山行計画の参考にした新ハイキング誌の記事に載っていたのが中藤尾根で、それ以来気になっていた尾根ではあった。奥武蔵登山詳細図(吉備人出版)でこの尾根が紹介されてからは歩く人が増え、南沢山の記事にコメントを寄せていただいたJ-BOYさんの記事によると現在ではハイキングコースとして整備されているという。今回は東端の曲竹(くせだけ)口から取り付き、荒田集落の中藤中郷口へと歩く。中藤尾根だけではあまりにも短いので、北にある御嶽神社から藤光寺山を経て栃沢峠まで行き、余裕があれば種木(くさき)集落まで下りて天覚山の表参道を登り返して東吾野駅に出る予定とした。

中藤尾根を歩く
昨年最後の山歩きから2か月。昨年末にスマホが故障し、年明けには身内に不幸が起きるなどなかなか山歩きに行けないでいた。それでも今年は坐骨神経痛が酷くなく、左肩の四十肩もだいぶ良くなり、昨年よりもやや早い始動となった。湯の沢行きの始発に乗り、J-BOYさんの記事の通り、尾長入口バス停で降りる。バス停の前には葬儀場があり、その奥には中藤尾根らしき低い山が見える。バス通りには登山口が無さそうなので、登山詳細図を見るともう一つ先の曲竹バス停付近から登れるという。一旦そちらへ向かおうとしたが、J-BOYさんの記事には曲竹口だけどバス停は尾長入口と注意書きしていたのを思い出し、葬儀場右の道に入ってみる。すると記事で見かけた看板が見えてきた。無事ここから取り付けそうだ。

(曲竹口)


(中藤尾根周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)

登山詳細図では曲竹口には藪がある旨書かれているが、ハイキングコースを整備した際に藪に道を付けてくれたようだ。藪の中の道を登っていくと曲竹集落を見下ろす伐採地に出る。今回歩いた中藤尾根の中では唯一のビュースポットだ。伐採地より先は檜の林に入る。比較的傾斜の緩やかな坂で、2か月山歩きをサボった身体にはちょうど良い。傾斜が緩むとなだらかな尾根が続く。3分ほど歩くと尾根が分かれる。左に行くのが稜線縦走路だが、右に下りる道もはっきりとしており、逆方向から来ると曲竹口へ下りるのが難しそうだ。分岐の先は小ピークで登山詳細図にも書かれている石造りの祠がある。柚子?と榊が奉納されており、麓に管理している人がいるのだろう。よく整備された道を進むと伐採地の中の送電鉄塔に出る。登山詳細図によると奥秩父線66号とのこと。鉄塔下からは辛うじて下赤工地区が見下ろせる。

(伐採地からの眺め 中央手前に見えるのがバス停前の葬儀場)


(檜の林に入る 中藤尾根はほぼ終始植林の中を歩く)


(分岐 右にも踏み跡があるが、堂西山方面は左に入る)


(石造りの祠 登山詳細図にも記載あり)


(道はよく整備されている)


(送電鉄塔 奥秩父線66号)


(北側の天覚山方面 ギザギザの尾根は表参道だろうか?)


(こちらは南側 下赤工地区が見下ろせる)

伐採地から再び檜の林に入る。地形図では細く描かれた尾根になっているが、歩いてみるとそれほどヤセ尾根という感じはしない。一か所だけ草の被った道を抜けると堂西山(291)に着く。曲竹口の案内板にはB29の空襲に備えて防空監視哨が置かれた旨書かれていたが、確かに山頂部分に窪みがあり、何か建物でも設置されていたのだろう。地形図で見るよりも広い山頂なのでグループでの休憩にも適すると思う。

(再び林に入ると送電鉄塔用ポストがある 登山詳細図によると67号へ向かえば麓に下りることができるという)


(中藤尾根では珍しく道上に草が被る)


(堂西山頂上 意外に広く感じる)

堂西山から山王坂峠へ向かっては尾根が二手に分かれる所があるが、踏み跡が明瞭なので間違うことはない。歩きやすい尾根をぐんぐん下って山王坂峠に着く。尾根を明瞭な道が横切っており、房ヶ谷戸集落と中藤下郷地区を結ぶ峠として今でも使われているのかもしれない。紙の地形図ではこの峠付近で「飯能」から「原市場」へ移り、少々見づらい。檜の林から明るい常緑の広葉樹林に変わるとやや急な登り坂となる。急坂を登りきると天神山南峰から南へ延びる尾根の上に出る。道標が立ち、ここから房ヶ谷戸集落へと下ることもできる。分岐から北へ登り、傾斜が緩むと天神山(307)南峰に着く。尾根のちょっとした高まりといった感じで道標が無ければ山頂と気づきにくいだろう。南峰の先には少し落葉樹があり、暖かい日差しが差し込んでくる。道端には新所沢線55号と書かれた黄色いポストがあり、縦走路を外れて急坂を木段が下っている。登山詳細図によると正八幡宮へと下れるらしい。

(朝早いせいか林の中は暗い)


(山王坂峠 小さいけど形が良い)


(峠から天神山へ向かう 登り返しはそれほどきつくない)


(広葉樹林の急坂)


(広い尾根に出た 左に入れば房ヶ谷戸集落に下れる)


(天神山南峰 あまり山頂っぽさは無い)


(南峰と北峰との鞍部に木段が付けられた急坂がある 正八幡宮へと下れるらしい)

少し登り返すと今度は天神山北峰に着く。ここで縦走路は西に折れ曲がるため、三ッ窪峠を示す道標は直角の向きに付けられている。ただ道標には北へ向かう尾根を示していた形跡があり、かつては種木辺りへ下ることもできたのかもしれない。天神山からはやや大きく下るがここも傾斜は比較的緩やかだ。下りきった鞍部が三ッ窪峠だが、山王坂峠と異なり峠道は無い。一応北側には林道が間近まで登ってきており、また現在の道標の脇にある古い道標には大両寺を示す文字が書かれているので、かつては峠道があったのだろう。中藤尾根の最高峰である高山へは峠から70mほどの標高差を登る。途中高山手前の小ピークは南から巻けるのだが、念のために上がってみると金亀石と書かれた標識が立っており、大小の岩が露出している。

(天神山北峰 縦走路は左へ折れ曲がる)


(三ッ窪峠 峠道はないが古い道標には大両寺集落が示されている)


(大両寺方面からは林道が上がってきている)


(金亀石)

高山の手前はやや急な登り坂だが、ここを登り切れば肩のような所に出て、そこから緩く登ると山頂(330)に着く。ここから東に下ると倉掛峠の配水場脇に出られるが、今日は北の荒田集落を目指す。荒田へ下る道も良く整備されていて歩きやすい。途中何の変哲もない所に久根花(くねばな)山と書かれた道標がある。正確な位置は分からないが、山というくらいだから西に枝尾根が分岐する辺りだろうか。久根花山から5分ほど下るとまたも道標が立ち、正面の尾根が枝で塞がれている。荒田へは更に北西に延びる尾根を下っていけばよいようだ。道標に従って左へ下ると緩やかだが細い尾根が延びる。木の間越しに麓の民家が見えてくるとロープと木段が設けられた伐採地をジグザグに下っていく。無事中藤中郷口に到着。出発して2時間弱。終始歩きやすい道で、道標とエスケープも随所にあり、ファミリー向けの良いルートだと思う。良いビュースポットがあれば申し分ないのだが、それは少々望み過ぎというものだろう。

(高山へ向けてやや急な登り ここを登りきると肩のような所に出て山頂までは更に登る)


(高山の頂上 ここも結構広い)


(荒田へ続く道 よく整備されていて気分が良い)


(久根花山)


(道標があり、ここで左に入る)


(荒田集落が見えてきた)


(中藤中郷口)


(よく出来た案内板 でも登山詳細図などの地図は持ち歩いたほうが良い)

御嶽神社から藤光寺山を経て栃沢峠
中藤尾根を歩き終えてすっかり下山モードに入っていたが、まだ今日の行程の3分の1を終えたにすぎない。次の藤光寺山は登山詳細図を見ると中藤川を渡って御嶽神社から尾根に取り付けばよいようだ。中藤中郷口に下りてくる際、伐採地から御嶽神社の鳥居が山の上のほうに見えていたので、麓から石段か何かが延びているのだろう。ところが勘が鈍っているのか川をどう渡ったらよいかも見当がつかない。J-BOYさんの記事では確かステンドグラス工房の看板があったはずだ。周囲を見回すと少し南へ行った所に件の看板があり、地図のとおり川を渡る橋もある。集落を抜ける舗装路を上がっていくと砂利道となり、これ以上先へ行けないようロープ柵が設けてある。ロープ柵の手前右に石段があり、山腹を横切るように道が付けられている。トラバース道は集落の上を進み、御嶽神社へと続く道につながった。集落内から鳥居を潜る道もあるようだが、どうなっているのかはよくわからない。

(この看板の前の道を行く)


(中藤川に架かる牛骨入橋 ラーメンが食べたくなるような名称だ)


(中藤川)


(林道牛骨入線を上がるとロープ柵手前右側に石段がある)


(石段から左に入るとご神体らしき石がある)


(右の道に入ると御嶽神社へ向かう)


(荒田集落を見下ろす 集落内から上がってくる道もあるようだ)


(藤光寺山周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)

御嶽神社への道はかなりの急斜面だが、ジグザグの九十九折となっているので意外と登りやすい。道端には不動明王像(清瀧不動尊のもの)や普寛上人(木曽御嶽教の開祖)像、大山祇神社などの石碑が置かれ、様々な宗教の信仰の場となっているようだ。鳥居が見えてくると御嶽神社の拝殿に着く。こんな急斜面の上に建てられた建物にもかかわらずベンチとトイレがあり、休憩にも良い所だ。拝殿を回り込むと細い道が尾根に付けられ、摩利支天を納めた祠がある。摩利支天より先も尾根が延びるが踏み跡は薄い。傾斜もきつく、如何にもバリエーションルートを歩きに来たという感じだ。急坂を登りきると平坦な尾根に出る。おそらく地形図上で舌状になっている所に出たのだろう。

(不動明王像)


(普寛上人像)


(大山祇神社の碑など境内には石碑が多数ある)


(日本武尊だろうか?)


(御嶽神社)


(神社の拝殿裏にも仏像がある)


(急傾斜の崖地にある建物だが見晴らしが良いというわけではない 奥は貴重なトイレ)


(拝殿裏から道を上がる)


(摩利支天 この裏にも道がある)


(摩利支天より先は薄い踏み跡になる)

尾根が西に向きを変える辺り、立木に黄色いテープが巻かれ、御嶽山と書かれている。標高は300mと書かれているが、正確なものかはわからない。緩やかな尾根を行くと林道が尾根を横切る。その先はやや急な坂になっている。尾根を直登するのが確実だが、この辺りいくつか南へ尾根が派生しているので、その尾根に乗ってみるべく林道を左へ入ってみることにした。よく整備された林道を下ると山側に大きな岩が見えてくる。この岩の上に出れば縦走路につながりそうだ。岩は切り立っているものの、裏側は土付きで樹木も植わっている。感覚的には昨年歩いた北川の岩場を回り込んで秋葉山へ出たのに近い。岩の上に出ると尾根道が延び、縦走路に合流する。面白い道ではあるが、わざわざ手間をかけてまで登るほどでもない気がする。

(御嶽山)


(林道が横切る 今回は林道を左に入ったが真っ直ぐ尾根を登ったほうが良い)


(林道に突き出す形で大岩がある 裏から回ってこの岩の上に出た)


(岩の上 見晴らしは特になし)


(尾根を真っ直ぐ登った際はここを登ってくることになる)

縦走路は御嶽神社を出てから終始檜の林が続く。登山詳細図には藪と書かれている所もそれほど鬱陶しさは無い。再び林道が見えてくるので今度は尾根を忠実に登る。ここはなかなかの急坂で、登りきると岩が露出している。これが登山詳細図にいう天狗岩らしい。ここまで来ればそろそろ藤光寺山も近い。只管登り坂の尾根を行くと黄色い張り紙が目に入る。狩猟の注意を呼び掛けるもので、道の無い山林に立ち入らないことと警告している。今のところは登山詳細図が示したルートを外していないので、ハンターから視認できないということはないと思う。アセビの藪が少し煩く感じるようになると藤光寺山(388)の頂上に着く。地形図で見る限りでは存在感のありそうな山頂なのに、実際に着いてみると杉と檜に覆われた地味な所だ。「画廊天地人」のyasuhiroさんが付けた山頂プレートはまだ健在であった。

(再び林道が出てくる 今度は尾根を登った)


(これが天狗岩だろうか)


(狩猟警告の看板 この辺りは通年で有害駆除をしているとのこと なので猟期以外も要注意)


(藪はこの程度)


(藤光寺山の頂上 わかりにくいが中央の木に下のプレートが括り付けられている)



藤光寺山の北側は尾根が二手に分かれていて、東に延びる尾根も明瞭なのだが、縦走路となっている北西の尾根側にテープが巻きつけられている。中藤尾根と異なり道標の類はないので、分岐の度に地形図とコンパスで見定める必要がある。更に傾斜が急な所は踏み跡が薄く藪っぽいため余計にわかり難さを増している。ただ平坦な所に出てしまえば尾根は明瞭なので、分岐となる小ピークだけ気を付ければそれほど危険はない。順調に高度を下げていくと尾根が大きく右へ曲がる小ピークに出る。一旦東の尾根を下りかけたが、地形図では栃沢峠へ向かって急斜面が下っていることを思い出す。小ピークに戻り北側の斜面を見回すと薄く踏み跡が下っている。かなりの急斜面で下る分には楽だが、登りは相当しんどいだろう。下りきると栃沢峠に無事到着だ。尾根の北側には立派な祠と墓地があり、往時は通行量も多かったのだろう。しかし今は枝が散乱し、峠道はどちら側も荒れた雰囲気が漂う。

(藤光寺山頂から東に延びる尾根 こんな具合に紛らわしい尾根の分岐が多い)


(山頂からはこちら側を下る)


(アップダウンや藪が多く奥武蔵のバリエーションとしてはやや難しい)


(小ピークには巻き道もある)


(一応テープのマーキングもある)


(栃沢峠南の小ピーク付近)


(東に明瞭な踏み跡があるが峠に下りることはできない)


(ここを下る 現地だと踏み跡があるのがわかる)


(急斜面の下り 何となく踏み跡はある)


(栃沢峠 飛村方面を向いている)


(栃沢峠の北にある祠 墓地があるので通っている人がいないわけではないようだ)


(祠内部 右の仏像をしっかり立てておこうと思ったのだが台座が水平ではなかった)

表参道を使って天覚山を越える
栃沢峠に着いて時計を見ると10時半を過ぎたところだった。エスケープとしては飛村集落へ下って前坂を越えて吾野駅へというルートを計画書に書いておいたが、表参道を歩くためだけに中藤地区を再び訪れるのは面倒だ。当初の予定通り峠道を東に下り、種木(くさき)集落から表参道を使って天覚山を越えることにした。まずは荻沢集落へ向かって峠道を下る。登山詳細図には倒木・荒廃と書かれているように落枝が散乱し倒木が行く手を遮る。ただ栃ノ沢の左岸に付けられた踏み跡は確りと残っており、南沢峠の峠道に比べれば状態は良い。フリヤ久保からの林道が合流すると荻沢の集落に出る。最奥の民家からは舗装路になっていて、ナンバーの付いたクルマも停まっていたのでまだ人は住んでいるのだろう。荻沢沿いの舗装路には何軒かの民家と製材所があるが、人が住んでいるのは最奥の民家だけだったようだ。

(荻沢集落へ向かって峠道を下る 倒木が多い 右に見える栃ノ沢の上部に水流は無い)


(一応沢の左岸に道形は残っている)


(倒木 ここは潜っていった)


(フリヤ久保からの林道に合流 この先に橋がある)


(ここからは荻沢の集落に入る)


(一番奥の家に人が住んでいるので道路はしっかりとしている)


(途中数軒の民家があるが壊れていたり、取り壊し途中のものがほとんど)


(長い舗装路だけど雰囲気は悪くない)

ゲートで閉鎖された林道荒田入線に合流するとバス通りに出る。この辺りは荒田・大両寺の集落で民家が多い。散歩している地元のお婆さんや物置らしきものを建てている同年代の男性に挨拶される。新型コロナが流行っていなければこちらも元気よく返事をしたいところなのだが、小声で「こんにちは」と返すに止める。種木の集落に入ると中藤川の対岸に道路が延びているのが見える。どうやらあれが天覚山表参道へと通ずる林道種木入線らしい。新種木橋と名付けられた新しいコンクリートの橋を渡ると種木橋バス停がある。

(バス通りに出た)


(バス通りに沿って中藤川が流れる)


(新種木橋)

種木入線は種木の集落を抜けていく。日当たりが良く人の住む民家が多い。なおこのときは全く気付かなかったのだが、YAMAPのいくつかの記事を読むと集落内から表参道へ通ずる道があるそうだ。そんなことは全く知らぬままチェーン柵のあるゲートまでやって来る。ここから左にゼンゴ山への道が延びているらしいが踏み跡は特に見当たらない。登山詳細図を見ると林道の二又を右に入ると踏み跡があるらしいのでそこまで行ってみる。チェーン柵のゲートを越えると砂利道が続く。抉れている所は無いものの、石が多く足を捕られる。思ったより傾斜も急で行けども行けども二又に辿り着かない。途中登山詳細図に廃道と書かれた踏み跡を見つけるがかなりの急坂で登る気にならない。ようやく二又が見えてきた所で種木入の川縁に腰を下ろして昼食のカップラーメンを食べることにした。エネルギー不足でこれ以上斜面を登るのは困難だと思ったからだ。

(チェーン柵のある種木入線 柵を越えた先へ進む)


(林道の途中にある古びた看板には「天覚山へ」と書かれている)

20分で食事を終え、表参道の探索に取り掛かる。登山詳細図の記載に従い右の道を上がっていくとすぐに行き止まりとなる。東側の斜面のどこかに取り付ける所があるはずだ。見回すと東の谷の中をピンクのテープのマーキングがある。踏み跡らしきものもあり、これを辿る。最初こそジグザグに上がっていけそうだったが、急斜面の尾根で行き詰まってしまう。一旦谷へ下りて先の行程を考える。種木橋バス停に戻れば13時台のバスに十分間に合いそうだ。しかし最後の山である天覚山はもう目の前だ。幸い今いる谷は傾斜が比較的緩い。この谷の南にある尾根が表参道であることはほぼ間違いないので、谷を出来るだけ詰めて尾根に上がってみよう。

(谷にマーキングがある ここから南の尾根に取り付いたが道はなかったと思う)


(この谷を詰められる所まで登った)

谷は先ほど行き詰まってしまった尾根に比べれば傾斜が緩い。ただ登り始めてみると倒木や灌木の藪が多く、右に左に障害物を避けていかなければならない。登るにつれてどんどん傾斜が急になっていくが、立っていられないほどではない。これならサッキョ峠を目指した時のほうが遥かにきつかった。問題は食べてすぐに動いたせいか吐き気が酷くなってきたことだ。四十を過ぎてから食道炎が酷くて食べてすぐに動くと気持ち悪くなってしまう。久しぶりの山歩きでそのことをすっかり失念していた。それでも今は尾根に上がることが優先だ。谷を上がるにつれて南の尾根がだいぶ近づいてきた。ここから先は谷を真っ直ぐ詰めるより尾根に向かってトラバース気味に登っていったほうが速い。斜面を登りきるとよく整備された尾根に出る。表参道に到達することができた。

(表参道の尾根に出た 疲労困憊…)

一応どの辺りにいるか確認するため、勿体ないが一旦尾根を下る。緩やかに下っていた尾根が急斜面に差し掛かった所で引き返すことにした。一応この辺りが足沢山なのか、あるいはもう一段下がった所にあるのかはわからないが、これ以上下る体力はもう残っていない。先ほど出た所まで戻るとその先はやや急な傾斜をジグザグに道が付けられている。自分が上がった所はちょうど尾根が平坦な所だったのだ。山頂までの標高差は120m弱で道も良く整備されているのだが、ここからが地獄の苦しさだった。谷を登っている時は必死だった分、嘔吐感を抑えられていたが、尾根に出ると安心感から嘔吐感がぶり返してしまったのだ。少し登っては立ち止まりを繰り返し、20分ほど登ると上から声が聞こえてくる。頭上が明るくなってきたのを感じると天覚山(445.4)の頂上に出た。山頂にはオバチャングループが賑やかに談笑していて、ほかはソロの男性が数名いる程度だ。ベンチが一つ空いていたので腰を下ろす。

(この辺りが足沢山だろうか これより先は急斜面になっている)


(天覚山へ向かって急坂が続くが、踏み跡はジグザグに付けられて歩きやすい)


(上から声がする 頂上が見えてきたようだ)


(天覚山頂上 久しぶりの山頂だ)


(東側の眺め 西武ドームなんかが見える)


(南側の眺め 中央奥に見えるのが御前山辺りだろうか)

5分だけ休憩を取って下山に取り掛かる。疲労から足がふらつくがこのくらいの体調の悪さなら下れないことはない。一旦大高山方面へ下り、山頂の北にある両峯神社跡に出る。ちょうど高校の山岳部なのか若者が10名ほど神社の基礎の上で屯っていた。色々思うことはあるが、山頂を占拠するよりはマシだ。天覚山は6年半前にも訪れているが、東吾野駅から登ったのは10年近く前のことだ。その時は地形図にも描かれている沢コースを使った。今日はもう一つ地形図に描かれている尾根コースを使う。神社跡の広場から尾根を下る。流石に一般コースだけあって歩きやすい。ただ標高差300m以上を下らなければならないため、傾斜の急な所も多い。行動時間も5時間を超え、疲労から勢いのままに下るのは難しい。それにしてももう13時を過ぎようという頃なのだが、次々と山頂を目指す登山者がやって来る。奥武蔵の主要ピークの中ではマイナーなほうだと思っていたが、意外と人気があるらしい。

(両峯神社跡 若者で賑やか)


(尾根コースを下る よく整備されているが傾斜はきつい)


(分岐には道標が完備)


(送電線の位置を考えると白子地区の辺りか)


(道は急坂…)

送電線が通る草地を過ぎると尾根が分かれる。北東に延びる尾根を下ることもできるようだが、踏み跡が明瞭な地形図の道をそのまま行く。良い道だが、終始杉檜の植林地の中なので少々飽きてきた頃、突如南側が開ける。目の前の尾根には杉の木が整然と植えられ、葉が動物の毛並みを思わせる。このちょっとした展望地を過ぎると道は大きくジグザグに下り、林道のような広い道に出る。その広い道を下れば林道長尾坂・野口入線にぶつかる。ただその手前に土の道が一本通っている。これは10年ほど前に天覚山を登った際に使った道だ。歩きやすかった記憶の通り、麓の集落まで良い道が続く。のんびりと歩きたい道だが5分で平戸集落に出る。駅舎は線路の向こうにあるのでどこからか線路を渡らなければならない。地形図では駅を北側から回り込まなければならないように描かれているが、実際には南側にも踏切がある。踏切を渡ろうとするとちょうど飯能行きの電車がやって来る。あと少しのところで間に合わなかった。それでも14時までには無事駅に着けたので良しとしよう。ホームで電車を待つ間、今日の山歩きの反省をする。久しぶりの山歩きで長い車道歩きの後に行程中最高峰の山に挑むのはちょっと無謀だった。天覚山の表参道は十分に辿れたとは言い難く、いずれここは再挑戦しなければならないと思うのだった。

(送電線が頭上を通る)


(手前の尾根にはびっしりと杉が植えられている)


(ここまで来ると駅のほうが近い)


(林業用の道を登山道に流用しているかもしれない)


(ここから平戸地区に続く道に入る)


(距離は短いけど良い道)


(無事平戸地区に出た 前の道を道なりに行っても駅に出る)

DATA:
飯能駅→(国際興業バス)→尾長入口バス停7:33→7:39曲竹口→8:10堂西山→8:25山王坂峠→8:38天神山南峰→8:46天神山北峰→8:50三ッ窪峠→8:57金亀石→9:03高山→9:08根花山→9:20中藤中郷口→9:32御嶽神社→10:07藤光寺山→10:33栃沢峠→11:03中郷バス停→11:19種木橋バス停(林道種木入線入口)→11:55種木入線二又→12:20天覚山表参道(足沢山付近)→12:41天覚山→12:52両峯神社跡→13:32林道長尾坂・野口入線出合→13:42東吾野駅

地形図 原市場 飯能

トイレ 御嶽神社

交通機関 
西武池袋・秩父線 小手指~飯能 242円 東吾野~小手指 346円
国際興業バス 飯能駅~尾長入口 356円

中藤尾根は本文中にもあるようにファミリー向けです。中藤中郷口へ下りた場合は中沢~飯能駅間を結ぶバスもありますが、本数は少なめです(土休日は一日4本)。倉掛峠を越えて原市場中学校に出れば飯能駅行きのバスが毎時あります。
藤光寺山周辺は純然たるバリエーションルートです。地形図・コンパス必須。個人的には藤光寺山自体よりも御嶽神社と栃沢峠のほうが見所は多く感じるので、両所を結ぶ尾根という意味のほうが大きいかもしれません。栃沢峠は峠道が荒れ気味ではあるものの、十分に使えます。飛村集落・前坂経由で吾野駅を利用するのが一番経済的といえるでしょう。
天覚山の(両峯神社)表参道については今回の記事を参考にしないでください。

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