あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

べーすぼーるしましょ

2016-05-01 | 本(文庫本)
伊集院静さんの『ノボさん』を読みました。
ノボさん――。明治期に日本の近代文芸に大きな影響を与えた正岡子規のことです。さらに言うなら、子規はアメリカから来たばかりの「べーすぼーる」をこよなく愛した人でした。まだ「べーすぼーる」が「野球」とは呼ばれていなかったときに、幼名である「升(のぼる)」にちなんで「野球(のぼーる)」という雅号を使っていました。現在、上野には「正岡子規記念球場」があります。
常に友人や家族に囲まれて愛されたノボさんは、同時に慕ってくる人たちすべてを愛しました。そのイメージは、教科書に載っている正岡子規の写真から受けるものとはちょっと違っています。

明治二十年。ノボさんは東京大学予備門で運命的な出会いを果たす。子規と同じく日本の文学界を代表する作家となる夏目金之助、のちの夏目漱石だ。志を同じくする子規と漱石の友情は、明治三十五年に子規が亡くなるまで続いた。東大一の秀才と呼ばれた漱石と、文学的才能と人間的な魅力にあふれた子規。森鴎外や高浜虚子らともつながりながら夢をかなえていく人たち、挫折する人たちの姿を、ノボさんの生涯から描いた作品。

正岡子規は、結局は壮絶な闘病生活の末に亡くなるのだけど、この作品を読むと、亡くなるまでキラッキラの青春時代を過ごしたんだなぁ~、って思えます。あんな辛い闘病生活は送りたくはないけれど、あんなに一人の人としての素敵な人生なら、むしろ羨ましい。
もし同じ時代に男子として生まれてノボさんと知り合うことができていたら、絶対に一緒にキャッチボールをした! 文学での弟子にはなれなかったかもしれないけど、野球の弟子にはなりたい!

より一層日本語が好きになれて、子規や漱石が好きになれて、べーすぼーるも明治の時代も好きになれる、そんな作品でした。子規が亡くなってから母親の八重さんがつぶやく「さあ、もういっぺん痛いと言うておみ」で盛大に涙腺崩壊します。
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