あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

言葉の海を渡る舟

2016-04-27 | 本(文庫本)
三浦しをんさんの『舟を編む』を読みました。
2012年の本屋大賞受賞作品だし、映画化されて話題にもなった作品ですが、文庫化された「今更」の読書でした。

玄武書房に勤める馬締光也は、言葉に対する造詣は深いが、コミュニケーション能力には「?」がつく、オタクっぽい人物。その「まじめ」が、新しい辞書『大渡海』の編纂メンバーとして辞書編集部に異動してきた。辞書の編纂なんて、まじめにとってこれ以上ない異動先だった。しかし辞書編集部には問題が山積み。仕事だけでも大変な状況であるのに、まじめは月の美しい夜に出会った女性に恋をする……。何年もの月日をかけてコツコツと編まれる辞書を作る作業だが、果たして『大渡海』は完成する日を迎えられるのか?

何だろう。とてつもなく尊い話を読んだ気持ちになりました。
随所に「言葉の力」を感じさせる言葉への深い敬意があって、ひとつの大きな目的に向かって地道な日々を送る人たちの絆。穏やかな大海に浮かぶ舟のように優しく包まれながら過ぎていくそれぞれの人生……。
良いです! 凄く良いです! この作家さんは作品を読むたびに新しい感動をくれます。
それに、主役のまじめを取り巻く人たちが良い。年長者としてまじめを見守りつつ支える荒木と松本先生。チャラ男・西岡、目立たないけど存在感はメッチャあった佐々木さん。そしてまじめが恋して生涯のパートナーとなる香具矢さんは、その中では描き方に「残念」な感じがあったキャラクターだったかも。あと、女性誌の編集部から移動してきた岸辺とか……。テーマが「辞書の編纂」だからなのか、やはりここは「硬派」で通してほしかった。お姉ちゃんたちはそれほど重要ではなかった(真面目の恋も描かれるのだから、香具矢さんはいるのか……)のかもね。そういうのが書ける作家さんだと思うのです。

※おまけ…巻末に「おまけ」で付いている馬締の恋文全文もかなり良かった。ただ文庫本をつくる、というのではなく、最後の最後まで読者を楽しませるように考えてくれた担当編集さんの心遣いも嬉しかったです。
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