あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

報われる

2022-05-27 | 本(文庫本)
早見和真さんの『イノセント・デイズ』を読みました。
これも知人からおすすめされた作品なのですが、前に読んだ『ひかりの魔女』とはまったく違うテイストのもので、その高低差に耳はキーンとならずに心に重いものがドスンときました。読後、しばらく引きずります。

元恋人の家に放火して妻と1歳の双子の娘を殺害した罪で死刑判決を受けた田中幸乃。しかし、判決文で読み上げられた幸乃の「過去」とはまったく違う、それぞれの「当事者」しか知らない真実がある。幸乃はなぜ真実とは違う判決によって極刑を言い渡されてもそれを受け入れてしまうのか? 再審を求めて奔走する幼馴染たちの思いは届くのか?

田中幸乃の30年の人生は、読み上げられた判決文とはまったく違う「イノセント・デイズ」でした。幼いころから(ある意味、生まれる前から)彼女を必要としてきた人たちは、やがて彼女のことを忘れ、当たり前のことだけど、それぞれが自分の人生を紡ぐ。そして彼女は「純粋に」絶望してしまうのです。
しかし彼女は自死することを選びません。選ばなかったけど「死刑」を受け入れます。この時点で「死」が彼女の唯一の「希望」になってしまいます。こんな割り切れない話があるでしょうか!
読み進めていくうちに「何とかならんのか」と不安な気持ちになっていき、かなりかき乱されました。そしてこんなに「あと少し」が重く感じられる作品を読んだのは初めてのことだと思います。
非常に読み応えのある作品でした。


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