あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

犬の力

2023-04-27 | 本(文庫本)
馳星周さんの『少年と犬』を読みました。
基本、犬好きなもので。書店で平積みになっていた本作が気にならないわけがありません。でも、動物物は最後に泣かされるに決まってます。危険だ! 電車での移動中に読書することが多いからこれは危険な香りしかしない!
しかし結局、買っちゃったし読んじゃった。

なぜかいつも南の方角に顔を向けている一匹の犬。何を求めどこへ行こうとしているのか。
家族のために犯罪に手を染めた男が拾った犬は、彼の守り神になった。「男と犬」
海外から日本に来た窃盗団の男。守り神の犬を連れて故郷を目指す。「泥棒と犬」
気持ちが通わなくなった夫婦は、それぞれ別の名前を犬につけていた。「夫婦と犬」
片足と両親を喪い、すべてに絶望して自殺を試みる少女の前に犬が現れた。「少女と犬」
体を売って男に貢ぐ女。最低な人生に唯一の希望になったのが犬だった。「娼婦と犬」
がんに侵された老猟師の死期を察したかのように犬がやってきた。「老人と犬」
震災のショックで心を閉ざした少年と犬の不思議な縁。そしてまた……。「少年と犬」


元は「多聞」呼ばれていた犬の、岩手から熊本までの5年にわたる「旅」の途中で出会った人たちとのお話。人と犬がこれほどまでに深い絆を結べるのだと、改めて思わされた感動作でした。
とにかく独語の私は感動しています。「わ~、凄く面白い!」的な感動ではなく、静かで穏やかで、言葉に表すことが躊躇われるような感動。「馳星周って作家さんはこんな物語も書くんだ」っていう驚きとともにある静かな感動。とりあえず「危険だ」と避けることなく読んだ自分を褒めます。しかも泣きませんでした。

遠い昔、私も犬と暮らしていたことがあります。力の強い大きな犬で、近所の子どもたちからは怖がられていたけど、無駄吠えすることもなくて、優しくて可愛くて、大好きな犬でした。
あの円らな目で見つめられると、本当に癒された。抱きしめると寄り添ってくれて、いやなこと全部忘れてしまうくらい慰めてくれた。
そんな昔々のことを、多聞が思い出させてくれました。

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