現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

日本の再生のために-政治家やマスコミの主張と庶民の生活実態-

2025-03-08 17:29:20 | 政治
 2025年になり2ヶ月が過ぎたが、米や野菜などの生活必需品の高騰は止まっていない。特に米については政府が備蓄米を放出すると決めているが価格が下がるどころか、さらに上昇している。庶民の生活にとって食料品はなくてはならない生活必需品だが、「エンゲル係数、42年ぶりの高水準 家計支出の28%に」(2024年10月18日日経新聞電子版)という日経新聞の記事にあるように、「2024年1~8月のエンゲル係数(2人以上世帯)は28.0%と、年平均と比較すると1982年以来の高い水準」となっている。まさに、「日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によると現在を1年前と比べ、物価に対する実感が「上がった」と答えた人の割合は直近9月の調査では9割台半ばと高い水準が続いている。」という状況であるにも関わらず、日本銀行は未だに異次元緩和からの脱却が出来ず、つまり金利の引き上げができず、そのため1ドル=147円台(一時は1ドル=160円台)という超円安を招き、この超円安が輸入物価を異常に上昇させ、国内の物価を引き上げているのである。

 さて、2011年の民主党政権時代、マスメディアは「企業が抱える六重苦、円高の負担が最も重く」(2011年8月23日日経新聞電子版)というような記事を掲載し、円高が日本経済にとっての最悪の重荷になっていると繰り返して報道していた。
 この記事の中で、「日本企業にとっての「六重苦」ともいわれる「円高」など6つの問題の中から、負担が重いと感じる順に上位3つを選んでもらったところ、最多は「円高」の155ポイント。2位は「高い法人税率」の146ポイントとなり、この2つが他の項目を大きく引き離した。」と書かれている。
 この記事が掲載されたときの円相場は1ドル80円超、法人税率は30%だが、2025年現在の法人税率は23.2%と大きく引き下げられている。
 企業が6重苦と大きな声を上げ、マスコミも大きく報じていた円高や法人税率については、1ドル80円から1ドル156円まで大きく円安に進み、法人税率は30%から23.2%と大きく引き下げられているが、日本国民の平均賃金は過去30年間ほぼ増えていない。そのため、食料品などの上昇によりエンゲル係数が増えているのである。法人税率は引き下げられたものの、消費税率は当時の5%から10%にまで引き上げられており、庶民の生活は以前よりも苦しくなっているのである。
 6重苦に対応したにもかかわらず、庶民にとっては全く状況が改善されていないどころか悪化している(企業にとっては利益が増え、株主にとっても配当が増えた)点を考えれば、この6重苦は企業にとってのものであり、庶民にとってのものではなかったことが明確になっている。

 日本は民主主義国家だとマスメディアは報道している。民主主義社会では、国民の意見が国政に反映されるはずである。ところが、過去の状況を踏まえると、国政に反映されるのは企業と富裕層(企業からの大きな配当収入がある)の意見であり、国民の意見は反映されていないように見える。
 さらに、安倍政権時代に策定されたコーポレートガバナンスコードに従って、企業利益については株主や経営層への配分が増えるものの、労働者への配分、すなわち労働分配率は逆に低下し、労働者の賃金はほとんど上昇していないのである。
 企業経営者や富裕層の意見が政策に反映される一方で、庶民の意見は政策に反映されない国のどこが民主主義なのだろうか。民主主義ではなく、寡頭制政治でしかない(寡頭制=少数者が国の権力を握って政治を独占する政治体制。企業経営者や富裕層が政党への影響力を行使し、自分達に都合のいい政策を実行させる。オリガーキー)

 次に、日本のマスメディアの状況について検討してみよう。先ほど引用したのは日本経済新聞であるが、日経新聞が経済新聞である以上、庶民ではなく経済界の代弁が大きくなるのは仕方が無いだろう。それでは他の、例えば朝日新聞や読売新聞はどのような報道なのだろうか。
 簡単に言えば、日本は民主主義国家であって、日本の民主主義を守る必要があるというような論調に終始しているのである。日本の民主主義が、民衆の意見を代表せず、企業や一部富裕層の意見を代表しているという現実を指摘することなく、脳天気に日本は民主主義であると繰り返しているだけである。

 結局、政治家もマスコミも自分達が実際に行っていることやその結果がどのようになるのかも理解することなく、政治家は自分の選挙のために政治を行い、マスコミは民主主義を連呼し、お花畑で生きているような、大学で学んだ民主主義やその価値観を絶対的な価値観として報道を繰り返すだけなのである。
 その結果、政治家もマスコミも信頼を失い、ポピュリストのフェイクに満ちた主張が大衆に支持されるのである。

 このような状況にある日本がどこに向かうのか、少子高齢化の影響を深く考えることもなく、目先の利益、固定化された価値観に頼った誤ったエリート層が何を主張するのか、非常に興味深いが、彼らが船頭となる泥船に同乗させられる大衆には悲劇しか待っていないだろう。
 10年後、20年後を想像しながら、固定化された価値観に捕らわれることなく、柔軟に、そして過去の歴史を踏まえて各自が行動する必要があるだろう。
 昭和は繁栄をもたらし、平成は衰退をもたらしたが、令和が滅亡をもたらすのではなく、令和を再生に向かう時代にするよう、自分達自身が考え、行動する必要がある。
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