はぐれけんきゅういん♀リターンズ

マニアックな研究(?)に明け暮れる毎日……

柿とミーム

2024年10月31日 | 環境
食後のデザートに柿。
この柿はおそらく在来種甘柿「江戸一」或いは「三国一」。熊が里に下りて来る事を懸念して家の近くの柿の木を伐採する人が増えており、減少を懸念している。

この柿の良さを伝えたところ、同僚が興味を持ち、更にその採り方(竹の棒を作り、先を少し割り、そこに枝を挟んで捻る、という採り方)を父親から学んで自分で採った、と話していた。
リチャード・ドーキンスが提唱した「ミーム」が、親から子に伝わった事になる。
滑稽に思う人もいるかもしれないが、ネットショッピングの高枝切りばさみ等々にその座を奪われ、ともすれば消えかけている地元の「そこにあるもの」で柿の実を採取する方法がこうして残されたとも言える。

ミームと言えば思い出す事がある。
この流域の中流域の地域では、地域絶滅危惧種のササユリを保存する為、自生ササユリを神社に集めて育てていた。実はササユリは移植が上手く行かないタイプの植物で、地元民は徐々に数を減らしている事を危惧していた。
現地を見ると数百の花が咲き乱れていた。
移植された事で絶滅しかけていた集団の花粉の授受が容易になっており、かつ、神社内という侵入しにくい場所への移植の結果、盗掘を防止出来ていた。
私はそれを褒めた。

だが、3年後には交流が途絶えてしまった。
私の方はPCが壊れて連絡先を消失してしまい、更に厄介な事にその地域の人々は皆姓が同じで屋号で呼び合っており、誰が地区長かどうかも外部からは分かり難い……。
向こうも遠慮してなのか、連絡を入れて来る事は無かった。

数年後、下流域の僧侶からこの件で話しかけられた。
その中流域の住人が、褒められた事を嬉しく思い、僧侶に伝えていたのである。
私は地域住人の活動を評価しただけだったのだが、住人は覚えていた。そして保存を続けていた。
これも、ミームが引き継がれた事例である。

ミームは引き継がれたが、この中流域のササユリにはまだ減少の懸念があった。
10年前のその時点で既に近親交配の傾向があり、自然の状態ではゆっくりと消失に向かってしまう状況だったのである。
私は当時採種したササユリのこぼれ種を無菌播種し、培養し増殖している。その約10年前の状態のまま、球根にして増やし、植え継ぎ、残してある。受け身の姿勢ではあるが、万が一あの神社の植物体が消失してしまっても、10年前の状態に巻き戻せるよう、維持している。

連絡があれば提供したいと思っているが、出しゃばるのもあれだし恥ずかしいので声を掛けにくい……。
培養の植え替え時期になると毎回、何とも言えない少し苦い気持ちになっている。

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