娘へのプレゼントに子猫が欲しいと頼まれた。
「サンタさんの袋に子猫は入れられないから頼まれたと言ってくだされば大丈夫ですから」とのこと。
元気な牡猫を母親は選んだ。
私はこの子と生きて行きます。
ちょっと意味がわからなかった。
子供はやがて自立してゆくからということだろうか?
どこの家庭でも同じだろうに?
お届け先は福生だった。
玄関を開けると甘いヴァニラの香りに包まれた。
幾つかの蝋燭がともっている。
部屋のなかはコストコで見るような大型の外国製の家具が備え付けられていた。
少女が母親の陰に隠れて恥ずかしそうに挨拶した。
そして私は一瞬、息を飲んだ。
私は優しくもないし公平でもないロクデナシだと思い知る。
少女の皮膚は黒かったのだ。
まだ七歳の少女は大柄で子猫にじゃれつかれて涙を流すような年齢には見えない。
だが目の前の少女は元気な子猫に引っ掻き傷をつけられ怯えて泣いている。
「この子はアメリカで暮らすのが幸せだと私は決めています。
だから子猫と私は二人で取り残される覚悟なんですよ」
やわらかな微笑みを浮かべながら子猫と少女を母親は見つめていた。
もうあの少女は母親から旅だったのだろうか。
なぜ共に行かないのか。
立ち入れるはずもない親子の問題である。
クリスマスが近くなると思い出す。
今年は私は私のためにヴァニラのアロマキャンドルを買ってみた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます