その子の恋人は俺様系だった。
東大生の俺様がおまえのような三流女子短大の女と付き合ってやってるんだと露骨にいい放つ。
彼女は俺様彼氏の部屋に通い掃除、洗濯、作りおきの惣菜まで冷蔵庫に入れていた。
威張り散らされても流せたし料理作りは大好きだった。
周りの友人たちは騙されてる、利用されてる、就職したら捨てられると忠告の嵐であった。
たまたま東大生だっただけあんなに威張る男なんて東大生だってモテないよと笑っていた。
忍耐強い女の子でもあったのだ。
ある日俺様彼氏がいつもの論理で容赦なく彼女を攻撃してきた。
毎度の止めは「鍵を置いて出ていけ」であった。
いつもならここで彼女がご機嫌とりをしてくれる。
が、この日は違った。
テーブルに鍵を置くと「わかった」と一言。
彼女は玄関に向かった。
俺様彼氏は呆然自失。
やっと絞り出した言葉は「ま、まて。まて、まて、まて」であった。
言葉巧みな理論派がである。
俺様彼氏の幸運は冬であったこと。
ブーツをはくのに彼女が手間取ってたのだ。
俺様彼氏は恋人を愛していたらしい。
利用なんてしていなかったらしい。
不器用な愛しかたしかできないだけらしい。
就職が決まったときプロポーズされた。
「入籍して家族手当てと住居手当てをもらった方が独身でいるより得だからな。結婚しよう」
独身寮に入るより結婚したほうが楽だからだよと周りは囁きあったけれどもしかしたらあの俺様彼氏は心底、惚れているのかもしれない。
彼女無しでは生きていかれないと心の何処かで知ってる。
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