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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

変身スカイミラージュが来院しました。

【申告】

 球体の中が回らなくなりました。

 

【初診】

 スカイトーンをスカイミラージュ本体にセットすると球体内で光のアニメーションがスタート。付属のスカイトーンを付け替えることで、キュアスカイ、キュアプリズムのそれぞれの変身遊び、2人の浄化技遊びが出来ます。他に3種類のミニゲームを搭載されています。

 内部を開けて行きます。

 

 

 透明の球体は接着固定されていますので、薄刃のこぎり(0.2mm)で切断して開かないと治療ができません。治療をしやすくするため球体部を切り離します。

 球体の勘合部は0.5mm程の溝になっていますので、ここを切断します。薄刃のこぎりが逸れて球体にキズを付けないように絶縁用のビニールテープを溝に沿って貼ります。このテープは伸縮性があり球体に沿って貼ることができ、適度に厚みがあるので最適です。

 

 

 コイルが出てきました。回転しているので直接配線を繋ぐわけにはいきません。

 

 回転する部分をあけると二次側のコイルが現れました。電磁誘導というちょっと(?)前に学んだ憎いやつですね。(^_^;)。回転時のバランスを取るために、ナットでバランサーにしてありました。

 一次側のコイルに電流を流すと磁界ができます。ただ、これだけでは二次側コイルには電流は流れませんが、一次側コイルの電流の向きが変わると磁界の向きも変わり二次側コイルに電流が流れます。この電磁誘導の現象を利用しています。身近なところでは、交通機関などで利用されるカードも同じしくみです。

 さて、分解はできたので病気の原因を調べます。

 

 回転出来ないのは、物理的にモータフランジ(A部)と回転部カバー(B部)が干渉しているためでした。六角穴つき止めねじを緩めてフランジの位置をずらすことで回転はできる様になりました。細いモータ軸に六角穴つき止めねじで締め付けているのですが、回転による振動や、落下した時の衝撃でずれてしまったり、締め付けが緩んで回転部が軸から外れてしまうのでしょう。モータ軸が太くできれば、ゆるみ止めもより良い方法で対応出来たとは想像しますが、細いので厳しいものがあるのだと思います。

 とりあえずこれで良いのかもわかりませんが、回転部カバーにわずかな段差があります。モータを固定するだけであれば、無くて良いものです。段差がある目的を考えると、回転が止まる位置を決めているのでしょうか。このわずかな段差で止まったり、この段差を乗り越えて動き出すのでしょうか?成型樹脂型のコマの段差ではないと思うのですが。よくわかりませんでした。

 今回は、停止位置が定まらなくても表示に問題は生じてないように思えるので、干渉しないことを優先してフランジ位置をずらしました。

 

 

 回転基板には、汎用の1チップマイコンが実装されています。制御基板から電源と信号がコイルを介して送られているようです。

 

 これで治療は終わりましたが、球体を元の状態に戻さなければなりません。しかし、単純に切断面に接着剤を付けて終わりと言うわけにはいきません。

 ・切断面は、紙ヤスリを平面に敷き仕上げます。

 ・切断した半球体は、勘合部がないのでズレてしまう可能性があります。

   その打開策として

   半球の根元を新たにネジで結合します。

   球体頂点部に3mm程度のピンを挿入します。

 

 ・のこぎりの刃厚分の半球体の隙間を少なくします。

   半球体と勘合する回転体カバーのつば部を削り、隙間が少なくなるようにしました。

 ・切断面は、薄く、透明で見えてしまうため、接着剤の塗布方法に工夫が必要です。

   メンディングテープを半球体の切断面に沿って貼り、少し半球体の貼り合わせ面を開いて接着剤を塗り込みました。そのあと、クランプで締め付け接着養生をしました。

   接着剤が乾燥してからメンディングテープを剥がし、はみ出した接着剤を除去しました。接着剤は、エポキシのような硬質型より柔軟性のあるタイプの方が、はみ出し部の除去に刃物ややすりを使用しなくて良いので、球体表面にキズをつけずに済みます。

 

 

【治療後記】

 外科治療より整形手術に時間がかかった患者さんでした。

 ちょっとLEDの輝度が高く、暗い所では長く見ていられないくらいです。注意が必要と思われます。

 

【おまけ】

 回転しているLEDが模様になったり文字になって見える仕掛けは、どのようになっているでしょうか?

 回転軸には細かな位置を検出するエンコーダは付いていません。ただ、回転基板の裏側には赤外線LEDと、受光素子が回転部カバーにあり受光素子を横切る度に検出することが出来ます。1回転した事は検出できるのです。

 

 簡単な表示例で示します。つぎのような位置に円弧にLEDが点灯して見えるとします。

  

 受光センサーを回転基板が通過した時をスタート点として、回転基板のLEDを点灯、消灯する時間を管理していると思います。これに加えて回転基板の回転速度は、人の目の残像現象を利用しているため1秒間に20から40回転しているものと考えられます。残像現象を利用すれば、模様や文字の重ね合わせもできます。

 一方乾電池の電圧が低下するとモータ回転数も落ちるではLEDの動作位置が変化してしまうので、予め低めの電圧で駆動して乾電池の電圧が低下してもモータは一定速度で回転させていると思います。

 あるいは、1回転する時間を計測して点灯、消灯する時間を調整することまではしていないと思いますが、わかりません。

 

 このおもちゃは、駆動部である回転部の故障が多いようです。カタカタ音がする、回転しなくなる、回転部が脱落すなどの病状が現れます。細いモータ軸に回転部をネジで締め付けているため、落下したり回転する振動などでゆるみが出てしまいます。まずは、メーカのサービス窓口に問い合わせましょう。

 対応が出来ない場合は、お近くのおもちゃ病院をお訪ねください。透明ドームをうまく開閉できれば完治する患者さんも多いと思います。

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