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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

はらぺこあおむし が来院しました。

【申告】

 高いドの音が出ません。

【初診】

 フィルムに導電インクで配線を印刷されているものと思われます。液体をこぼしたとのこと。おそらく配線がいずれかで切れたのでしょう。

 内部を確認します。

 

 導電インクで印刷されている配線に付着物がついています。外観的には印刷配線も消えて見えます。

 

 よく観察すると、印刷配線に色が変わったあやしげな箇所が見つかりました。Φ0.1mmのポリウレタン銅線を導電塗料でフィルムに密着させ、接着剤でその上から剥がれないように接着します。

 

 理想的にはフィルム内部で他端の接続をすれば良いのですが、繋ぎたい配線が保護印刷がされており接続できないので制御基板に直接接続しました。

 さてこれで発音するかな?と思いきや、あれ?発音しない!

 ポリウレタン線でスイッチの配線の導通は確認出来ているので、別の原因が?

 制御基板をしみじみと眺めます。基板には鍵盤毎にチェックパターンがあり、順次疑似的に鍵盤の押下信号を入れて発音を確認をしましたがやはりドの発音がありません。まだ、切れているところがある?

 さらにチェックパターンからCOBの封入樹脂入口を削り確認しましたが、断線はありませんでした。

 残念ながら、封入樹脂内部に原発巣があり、わたしの技術力ではこれ以上の治療が出来ませんでした。

 単純にそれぞれの鍵盤からマイコンに繋がる配線があります。今回は、ドの鍵盤の信号を受ける回路が破損していると考えられます。

 

【治療後記】

 珍しい破損でした。

【おまけ】

 フィルムに導電性インクの印刷配線の他に、水色の箇所があります。さて、これは何のためにあるのでしょう?

 

 おもちゃの多く(少なくともわたしが診察している患者さんでは)は、導電性の印刷配線が下層にあり、導電性の印刷配線を短絡させるラバー接点を上部から押し込んでスイッチの働きをさせています。ラバー接点は、押し込んだ場合だけ導電性の印刷配線を短絡させます。押し込みを止めるとラバー接点は、導電性の印刷配線と離れます。押し込みを止める、押し返すようにする働きはラバー接点が付いている乳白色のシリコンのドーム形状により実現しています。

 

 

 今回のはらぺこあおむしのピアノは、上下逆さまの構造です。導電性ラバー接点の働きを、カーボン印刷が行います。鍵盤を押すと導電性の配線がカーボン印刷面に押し付けられ短絡します。

 他方、シリコンラバーの反発の働きがないので、鍵盤を押されていない時、カーボン印刷に触れないように離す必要があります。この水色の部分は高さが0.3mm程でしょうか?凸になっていて離す働きをしているのです。

 今回のスイッチ構造もコスト低減によるものと推測します。

 

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