【申告要望内容】
パトライトが点灯しなくなったので治療して欲しい。
【初診】
おもちゃの名前もわかりませんので仮称です。
1987年販売のTOMYのドライブゲームです。シフトレバーで速度が3段階に変化してスクリーンに投映され像の速さが変化します。
ハンドルを回すとスクリーンを投映する照明が左右に動き、あたかも車が左右に動いているような錯覚に陥ります。
方向指示器やクラクションも鳴ります。マイクは、張りぼてです。サイレンは鳴りません。
速度に応じてタコメータ、スピードメータも変わります。
単一電池を5本も使用します。
パトライトは、点灯しません。
道路の像は動きますが、スクリーンが暗く見えづらいです。
シフトレバーは動きますが、動きが悪く、雑音?が大きいです。何か、音が鳴るようになっていたかも不明です。
本来の動作がどのようになっているかわからないので、まずは内部の確認から始めます。
このおもちゃには、制御基板、スピーカはありません。すべて、モータとスイッチと電球と機械的しくみだけで動いています。
①内部をみると、パトライトが点灯しないのは配線が半田づけ部で外れていましたので、接続で解決しました。
②次にシフトレバーの軸受部が破損しています。
0.3mmの燐青銅板で軸受を作成取り付けました。
③シフトレバーとつながっているリンクのトルクリミッタのバネを押さえている部品に割れが見られましたので縛りました。
④騒音原因の検査です。
騒音の発生箇所を追いかけてゆくと、モータと次の平ギヤが騒音の発生源でした。
モータを分解してブラシの汚れを除去しました。
モータのピニオンギヤを交換しました。
観察すると平ギヤの軸受が広がっているように思えたので、新たに新しい軸受を取り付けました。
合わせて平ギヤとギヤBOXとの間に樹脂のスペーサを追加して、平ギヤとギヤBOXが接した際の摩擦音を低減しました。
⑤シフトレバーの切替によるしくみを確認しました。
トランスミッションギヤは、回転軸と連結していないニュートラルギヤと軸に連結しているLOWからTURBOギヤに分かれています。
シフトレバーに連結しているリンクにつながっているシフトフォークにより、可動ギヤが動かされ軸の回転数が変化します。
シフトレバーは、シフトレバー固定板によりバネで上方に押し上げられており、シフトレバーのギヤと勘合してシフトレバーの角度が決められます。これにより可動ギヤが中途半端な位置になることを防いでいます。
⑥エンジンの擬音について
エンジン音は、トランスミッションギヤの側面に付いているツメにより、共鳴筒のステンレス板を弾き音を出しています。共鳴筒にかぶせられたラバーが太鼓の皮になっています。回転数により共鳴筒のステンレス板を弾く速さが変わります。
⑦パトライトの点滅方法について
ギヤBOXからの軸回転でパトライトの回路接点を開閉して点滅させています。
⑧道路フィルムの映像が暗く見にくいので、LEDライトに変更することの承諾を得てから改造をしてみました。手元にLEDライトの基板がありこれを使ってみました。
当初ランプで道路フィルム投映するために、単一電池を3本も使い550mAも消費していました。これを単一電池を1本にして省エネと照度を上げようとの試みです。
手元に手頃な廃材があり、これにLEDを貼付して当映像を確認しながらLEDの付け方を試行錯誤しました。
結果的には、LEDを3個付けた形にしました。電球の光の拡散とEDの光の拡散では異なるので投映像も若干変わりましたが、楽しむには影響のない範囲です。
昇圧基板の消費電流は、60mAでした。
ここで、もう一つなるほどと思ったことがありました。それは、スクリーンと道路フィルム面との角度にあります。
角度があることにより、スクリーンと道路フィルムが近い部分は拡大率が低く、遠い部分は拡大率が高くなります。これを利用してスクリーンを見ると下部は大きく上部は小さく見える様になり道路に遠近感が生まれるというものです。良く考えられています。
同じ道路幅が、スクリーンには手前は広く遠くは狭くみえます。
LEDの昇圧基板は、電池ボックスの裏面に両面テープで固定しました。
明るくはしたいのですが、しすぎると投映像が飛んでしまします。この辺で良しとしました。
最後に、このおもちゃの全体構成比較です。
投映用の電池は、1本だけになり省エネになりました。
【治療後記】
マイコンを使用しないなかなか現在では見られないおもちゃです。このようなおもちゃは、全てが見られるのでとても楽しいものです。