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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

ディズニー やわらかガラガラデラックス プラス が来院しました。

【申告】

 ・メロディは鳴って、メリーが回転しないことがあります。

 ・メリーは回転しますが、メロディが鳴らないことがあります。

 ・メリーもメロディが動かないことがあります。

 購入して6年ほど経過しています。

【診察】

 この患者さんは、1か月ほど前にもメリーが回転しないと来院されましたが受付時には症状を確認できず、ご相談の上経過観察をしてもらうことになりました。今回再び来院され受付時にはやはり症状が確認できませんでしたが、入院してもらい検査することにしました。

 タカラトミーから2015年に発売されているこのシリーズの2代目のメリーです。

 入院してもらい症状の確認をしようと何度も動作確認をしましたが、申告の症状は確認できず順次病巣の可能性を追いかけることにしました。

 一般的に申告症状から推測すると電池の消耗が考えられるのですが、申告内容からしても固定している症状ではなく、不安定な原発巣があるというドクター泣かせの病状です。

 

①まずは、視診、触診からです。

 ・メリーの操作ボタンは、

   電源スイッチは、スライドスイッチ

   回転とメロディのON/OFFは、押しボタンスイッチ

   ライト、メロディ選択、すやすやメロディ切り換えは押しボタンスイッチ

   メロディ音量の調整は、ON/OFFスイッチ付き回転式のボリューム

  であり、操作感などに違和感はありません。ただ、音量調整のボリュームつまみには回転位置を示す目印などないため、180度回転していても見た目は同じつまみ

外観になります。

 ・電池ボックス端子には、さびや電池を押し付ける電極の力不足による接触不良となる様子もありません。

 回転部の構造確認です。

 本体と支柱の結合部です。8角形の軸で結合され角が摩耗して空転するような様子も見られません。

 

 ・モータの回転をラトルに伝える支柱の回転負荷具合を手で回してみました。軽く回るといった感じではなく、指で回した分だけ回るといった感じです。支柱両端の軸受け部がグリスなどで封止されているのか、内部を確認しようと支柱の両端のねじを外してみましたが外すことはできませんでした。

 

 ・電池は、単2電池3本で4.3Vありますので問題ありません。

 ・お預かり状態はラトルが付いていませんでしたが、メリーが回転している時の電池を流れる電流値を測定しました。

    支柱なしの状態:60~80mA

    支柱ありの状態:70~90mA

  この値であれば、モータの異常による電圧降下が起きていそうにありません。

 

②内診を始めます。

 部品配置です。

・モータギヤボックスの内部です。モータギヤボックスは、上下からシリコンラバーで挟み込まれて固定されています。これは、モータの振動が筐体に伝わって拡大されノイズにならないように設置されています。このあたりのものづくりへの気づかいは、さすがタカラトミーさんと言ったところです。

 

  

 モータは、プーリーを介してラトルの回転軸のギヤにつながっています。ベルト伝達を使用することで、支柱の回転に過負荷が加わった時にベルトが空転してギヤの破損を防ぐことができます。ただ、ベルトが伸びてしまうとモータの回転を十分に伝えられなくなるという欠点もあります。あかちゃんが使用するおもちゃですから、おとなが頭で考えないような行動をとりますので必要な対応です。

 モータのブラシとコミテータの状態を確認しました。きれいな状態でした。

 

 ・電源スイッチの確認です。

  半田付けも不具合なくテスタにて導通チェックをし異常は確認されず、スイッチの動きもスムーズです。予防保全として接点復活剤を塗布しました。

 ・ヒューズの半田付け具合がやや怪しげで、不良にはなっていませんが半田付けをし直しました。

  ヒューズの外観も、破損などの異常は見受けられません。

 ・制御基板に半田飛びの付着があったので、除去しました。内部配線の半田付けを手早くするために半田こての温度が高く設定しているために、半田が急膨張して飛んでしまいます。飛んだ半田が基板上に付着したものです。この半田が動き出すと回路をショートさせたり、再現性のない症状を起こすなど厄介な不具合につながることがあります。

③電子回路を検査します。

 内部の配線接続です。

 制御基板裏面の黄色のLEDです。

 ・ボタン接点を確認しました。

  やや汚れのある串歯パターンがありましたが、ON/OFFボタンではなくライトボタンの接点でした。ライトボタンについては不具合の申告はありません。すべての串歯パターンとラバー接点を清掃し組み戻しました。

 

 ・スピーカ抵抗値、はんだ付け状態を確認をしましたが、異常はありませんでした。別の音源でスピーカを鳴らしましたが、異常はありませんでした。

 ・制御基板の回路を探ります。

 

 

 

 

 

 ・COBの電源ラインの変動を確認しました。

  メロディの種類や音量により変動しますが、最大でも50mVの低下でしたのでマイコンを誤動作させるとは思えません。

 ・制御基板の電解コンデンサの容量を確認しました。どれも容量に不具合はありません。

   C1:100μF → 104μF , C3:10μF → 9.5μF , C4:100μF → 112μF 

   C6:47μF → 43μF , C7:47μF → 45μF

 ・スイッチ付き可変抵抗器の接点の摩耗による抵抗体の断線なども、抵抗値の変化具合からはありませんでした。

 ・正常動作をしている状態なので波形も問題ないのですが、オーディオアンプICの出力波形も確認しました。

  

 ここまで、検査を進めましたが申告症状につながる現象を検出できませんでした。最後に今一度内部の様子を見まわすと何か怪しげなはんだ付けが散見されました。はんだ付けをし直しました。これが、不安定な症状になったのかは時間をかけて観察しなければわかりません。

 完全に半田がはがれてはいませんが、半田が濡れていません。半田付け品質が悪いです。作業効率優先で半田づけ品質が二の次になったのか、作業者の習熟度が低かったのかわかりません。制御基板にあった半田飛びも裏付けています。

 

【治療後記】

 なぜか、病院へ来ると良い子になると持ち主様が言われていましたが、症状を確認できないまま可能性追求治療になりました。申告症状から病巣が1つでなさそうなので、絞り込みができませんでした。

 これといった病巣を確認できず、散見された半田付け品質の改善で元気になってくれれば良いのですが。

 持ち主様にボタンの押し方やボリュームつまみの位置の説明と、治療の妥当性確認のため経過観察結果の連絡お願いしました。

 

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