【申告】
片側の車輪が動きません。
【診察】
隣の国のスタントラジコンカーです。
2.4GHzのラジコンで、リチウム電池で動きます。また、左右の車が開くことができますのでアクロバットな動きを楽しめます。
リチウム電池を充電して、ラジコンを動かしてみると右側の車が回りません。
病巣は、ドライバー?、配線?、ギヤ?、モータ?でしょうか。
内部を開いていきます。
ここまで開くと右側の車のギヤ部が分離されます。
この段階でモータの配線を切り離し、ユニバーサル電源を接続してモータが回るか確認しましたが回りませんでした。
さらに内部を確認します。
内部のギヤには、破損は見受けられませんのでどうやらモータに病巣が有りそうです。
モータは、よく見かける130型です。モータ内部を見るとブラシが摩耗して無くなっていました。そのためモータは回転できなかったのでしょう。
保守にとってあるモータのエンドキャップと交換すると、元気に回転を始めました。
組み戻し左右の車輪が回転をすることが確認できました。
【治療後記】
かなり荒い使われ方をされると想像できるラジコンカーのためか、ギヤボックス内のギヤはかなり強固なモノづくりでした。車体のABS樹脂が黄変していましたので、購入してからそれなりの時間が経過しているものと想像できます。モータにもそれなりの電流も流れていたのでしょう。左側のモータまでは、点検しませんでしたが、左側が動かなくなったら診察しましょう。元気に退院です。
【おまけ】
モータが病巣で来院する患者さんは、比較的負荷の大きなモータです。今回のモータは130型という子供達が最初に巡り合うことが多いものです。ところが外見は同じでも中身が異なるモータが有ることを、ドクターは当然知らなければなりません。軽い負荷であって単独で動く個所であれば、モータが違ってもわからないことも有るかも知れません。ところが今回の様に、負荷が大きいと動きに影響がでたり左右ペアで動くような場合は単純比較されるので注意が必要です。
保守用にあったモータの電機子と今回のモータの電機子を見比べると明らかに違いがあることがわかります。
電機子の長さが異なります。測定はしていませんが巻き線の径も違うかもわかりません。モータのトルクは電機子の長さだけでなく、磁場の強さ、巻線の数、電流の大きさなどにも依存します。モータの寸法だけで交換してはいけません。隣の国のおもちゃのモータです。極論するとおもちゃメーカ毎にモータを作っていて、標準といえるものはないと思ってもいいでしょう。どうしても交換が必要な場合は、印加電圧に合ったモータかだけでも確認をする必要があります。今回は、このような理由からエンドキャップを交換して、回転に直接影響する部品はそのまま使用することにしました。