7月28日 木曜日
今から10年ほど前、SCの企画総務部にいた頃の話。
そこに配属されてひと月ほど経ったある日、事務所に保安係から万引きを捕まえたという連絡が入った。
上司が「ちょうどいいから付いてこい」というので、2人で保安の事務所に向かった。
そこにいたのは、小さな子供を連れた中年といった感じのおばさんだった。
女性保安員(いわゆる万引きGメン)が女性に声をかける。
※以下、ややうろ覚え、不確かな点もあるけれど。
「未精算の品物が有るよね?それを机の上に出して」
おばさんが手に持っていたバッグから箱入りのミニカーを出した。その数、7つ。
(7つも盗ったのか。1つあたり500円くらいかな…)と思っていたら、
「まだ有るよね?全部出して」と、保安員が続きを促した。
すると、出るわ出るわ。ベビーカーの中、手持ちのバッグ、ポケットの中などから次々とミニカーの箱が出てくる、出てくる。正確な数は忘れたが、その数、30個以上!
(大胆だなぁ、棚にあったのほとんど持ち出したのかな)などと思っていたら、
「じゃあ今度はこっち。カートの商品も未精算だよね」と保安員の声。
驚くなかれ、このおばさんときたら、2階の玩具売り場で万引きをしたあと、さらに1階の食料品売り場でも万引きをしていたのだ。
(すげぇな、オイ)と思っていたら、おばさんが僕に話しかけてきた。
「私、これからどうなるんですかね…?」
万引きをしたことに対しての反省よりも、どういう処分がされるのかが大事な様子に無表情を貫きつつも驚き呆れた。
そんなやり取りをしているうちに、食料品売り場の責任者、次いで通報を受けた警察官がやって来た。
盗ったものは全て代金を支払わせたのち、警察官に引き渡された。
このうち、食料品売り場での弁済?の様子を少し離れたところから見させてもらった。その額、一万数千円。そのとき、おばさんの財布に多くの一万円札が入っているのが見えた。
じゅうぶんなお金があるのに、万引きを働いていたのだ。
これが、僕が初めて間近で目にした万引き犯の姿だった。