先日、予告した「咸臨丸、宇宙に行く」ですが、突然ですが作者の都合により来月になります。代わりに「ロボットになった坂本龍馬」を掲載します。ぜひご覧下さい。
「ロボットになった坂本龍馬」
坂本博士はロボット工学の第一人者である。彼が作ったロボットは坂本龍馬そっくりだった。坂本博士が子供の頃、父親は坂本龍馬の大ファンだった。同じ坂本でも龍馬とはまったく関係がなく、でも同じ高知の出身だったためその子供である坂本博士にも、龍馬という名前をつけてしまった。子供の頃は自分の名前が大嫌いだった。しかし、父親が熱く坂本龍馬のことを何度も何度も語るために博士はだんだんにその龍馬が好きになり、研究をするようになった。大学でロボットの研究をして博士号を取って最初に作ったロボットが
坂本龍馬だった。博士はなぜこのロボットにこだわったのでしょうか。その理由は定かではありませんがきっと龍馬のことをもっと知りたかったのではないでしょうか。博士はそのためにあらゆるデータをかき集めました。その情報は龍馬の脳であるコンピュータの中にすべて投入されました。その上で博士は
あろうことか、この龍馬ロボットと一緒に坂本龍馬のゆかりの地を廻りました。そのデータも龍馬ロボットの中にしっかりと入れられたのは言うまでもありません。そのうちこのロボットは人間の感情に似たようなものを持つようになりました。龍馬の気持ちがわかるようになったのです。そんなある日のことでした。博士は龍馬ロボットに話しかけました。
その頃龍馬ロボットは「龍馬くん」と言われていました。
「もし今龍馬が生きていたら何が一番したいかな?」龍馬くんはしばらく考えましたがこう答えました。「おりょうに会いたい。」しかし博士にも龍馬くんにもそれは決してかなわない夢だということをわかっていました。それでも口に出して言わなければならなかったのです。それから博士はこの龍馬くんの夢を実現するために奔走するようになりました。「人間であるおりょうさんはいないが、ロボットだったら作れるかもしれない。」しかし、博士にはもう一度ロボットを作ることは現実的には不可能でした。
龍馬くんを作るために全財産を使いはたしてしまったのです。やむなく、博士は龍馬くんを連れてテレビに出たり、本や雑誌の取材などに積極的に出かけていきました。しかし、お金ができても、博士にはもう一度ロボットを作る気力、体力がなかったのです。
そんなある日のことでした。何気なくテレビを見ていると、あるロボットが出演していました。それは…なんとおりょうそっくりのロボットが写っているではありませんか。思わず目を疑った博士ですが、そのテレビをくいいるように見入った博士はさっそくテレビ局に問い合わせをしました。実はそのロボットは北海道にいる女性の教授が自身があこがれるというおりょうさんのロボットを作ったというのです。わらをもすがる思いで、博士はその教授に連絡をしました。そして、すべての事情を話し、会いにいこうとしますがきっぱりと断られてしまいます。彼女によると坂本龍馬は大嫌いだというのです。おりょうさんを一人にして、たしかに日本のために大きな仕事をしたかもしれないが、おりょうさんにとってはたった一人の男性だったのに…
しかも、最後は暗殺されてしまって…。その後のおりょうの人生を考えるといっそ龍馬に出会わなかったほうが幸せだったというのです。だから会いたくないというのです。何度か話をするうちに博士にも不思議な感情がわいてきました。そしてとうとう強引に龍馬くんを連れて教授の研究所へ訪ねていきます。彼女の心はかたくなでした。しかし、その時です。龍馬くんはおりょうの姿を見つけ、駆け寄りました。もちろんおりょう本人ではなったのだけれど、二人はまるで本当の龍馬とおりょうが再会したように抱き合いました。それを見ていて最も驚いたのはその教授でした。
感情をもつことなどあろうはずもないロボット同士の抱擁の姿を見せつけられた教授はその時に自身の人生観さえも変えてしまうショックを受けてしまいます。ところが、このできごとがきっかけになってなんと博士と教授は親しくなって、ついには結婚をしてしまいます。もちろん龍馬くんとおりょうさんもいつまでも仲良く一緒に暮らしたのは言うまでもありません。そして博士は、玉のようなかわいい女の子を授かるようになります。その子供の名前は「坂本りょう」と名付けられました。