車掌さんはこう言いました。「乗車券をお見せ下さい。」何度も何度もこうおっしゃるので私も、次第に平静を取り戻して、落ち着いて話ができるようになりました。そこでこう言いました。「その乗車券っていうのは、このチケットのことですか」とポケットにしまった『大河ドラマフリーパス』を差し出しました。車掌さんはそのチケットを見ながら、さらにこう聞きました。「どちらに行かれますか?行き先を行って下さい。」私は何のことかわからず、聞き直しました。「この大河ドラマっていうのは、大河ドラマのロケ地に行けるということでしょうか?」さらに「それでは質問を変えましょう。あなたの好きな大河ドラマは何ですか?」「好きなっていわれたらみんな好きだし、あえていうならば最初に見た『国盗り物語』だけど他の大河ドラマもいいし、一つに決められないな。ここに大河ドラマフリーパスって書いてあるのだけれど、それってどこでもいけるって意味じゃないのですか。」「いいえそれはどこにでも好きな所に何度でもいけますが、とりあえず最初に行く場所を指定してもらっているのです。」「そういう意味だったの。じゃあ最初だったらやっぱり『国盗り物語』かな若い高橋英樹さんに会いたいし、でもそれって昔の大河ドラマをいつも放映しているテーマパークかなんかができたってことじゃないのですか?最近そんな記事も見ていないけど。」「実はその『大河ドラマフリーパス』は、選ばれた人だけに差し上げた招待状で、今まで放送した大河ドラマだったらどれでも体感できるというものなのです」「うん、それじゃゲームのようなものなんだなあ。それじゃ最初に今、龍馬ブームだし、坂本龍馬の大ファンだし、福山雅治さんにもお会いしたいし、『龍馬伝』に決めます。」
(ところで、当初私の計画では、『国盗り物語』でストーリーも決めていましたが、昨今の龍馬ブームでもあるので、予定を変更して、『龍馬伝』をお送りします。ストーリーも今から少しずつ考えて掲載していきますので、あらかじめご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。)
そう言うと、今度は慎重に言葉を選びながらこのように言われました。
「今からすぐ出発しますが、一つだけ約束事があります。その約束事を破った場合には、二度とここへは戻れないという事です。」ふたたび私の体に緊張が走りました。さらに続きます。「それは、そこでは誰とも話をしないという事です。もし、一言でも話をしたらあなたはそこから帰ることができなくなります。いいですね、くれぐれも話をしないようにお願いします。」「そうだよね撮影の邪魔になるし、途中で話しかけたりしたら、NGだし、それって大河ファンの常識だしね。」「さようでございます。」「それではしっかりとシートベルトをしてお待ち下さい。」車掌さんの言葉が終わるか終わらないかのうちに私は急に気分が悪くなり、その場で意識を失ってしまいました。気がついた時は、私はどこかの山の中におきざりになっていました。もちろんその乗っていたバスも車掌さんも、運転手さんも誰一人いません。私はあたりを見回しました。獣道のような所で、人間も動物も誰一人いません。
私は夢をみているのだと思い、思いっきり頬をひねってみましたが、どうやら夢ではないようです。しかも、ここがどこなのかまったく手がかりがありません。そうこうしているうちに、遠くから人が二人走ってきます。私は見つからないようにその様子を見ていると
それはなんと、福山雅治さんではありませんか。今まさに、撮影の真っ最中って感じでした。しかし、まわりを見渡してもスタッフやカメラ何一つありません。その時、私の胸にあの車掌さんが言った言葉が蘇りました。。「それは、そこでは誰とも話をしないという事です。もし、一言でも話をしたらあなたはそこから帰ることができなくなります。いいですね、くれぐれも話をしないようにお願いします。」私は、思わず体の震えがとまらなくなってしまいました。その時です、その福山龍馬が声をかけてきました。「おぬしはここで何をやっちょるんじゃ!」 つつ゛く