クルシャ君、今日も講義をしますから、聴いていきなさい。
なんだ横着だな。飼主より高いところから見下ろして聴くのか。
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なんでこう伝えることを急いでいるかというと
飼主があまり長くはいないからだよ。
今日のお話は、「最もすぐれた猫をどうやって見つけるか」だよ。
タイトルとちょっと違うね。でも同じ事だから。後で分かるよ。
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クルシャ君がこの世界で埋もれないことを考えないといけないよ。
まず、それが一番大切。
無数の猫たちがいるこの世界で、君の幸せが君から奪われるようなこと
があってはならないんだよ。飼主は側に居て、クルシャ君が埋もれてしま
わないように気を付けるけど、君はいずれ自分で自分のことを守らないと
いけない。でも、自分一人では先ず無理だろう。だから、最初に一人きり
になったときに、何をすべきか教えておくよ。
世界を変える猫を見つけなさい。
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世界を変える猫は、ごくまれに猫たちの中にいるよ。ただし、自分が世界を
変える猫であることを彼等のほとんどが知らないんだよ。
なぜ、飼主は君に「世界を変える猫」探しをすすめるか、よく分かって欲しい。
一人では君は埋没してしまう。ところがこの世に決して埋没しない猫がいる。
そんな猫と一緒にいることで、いずれ君自身も「世界を変える猫」になって
もらいたいからだよ。
彼等は確実にいる。
探し方を教えよう。
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猫集会にこっそりノートを持って行きなさい。
ノートの表紙に「美しい猫になれるノート」と書きなさい。
「強い猫になれるノート」でも「ともだちがたくさんできるノート」でもいい。
そして、ノートに書き込む猫たちの様子を観察しなさい。彼等に分からないように
いつもノートを監視しなさい。そして、誰も居ないときにそのノートに自分の名前
と希望とを書き込む猫をみつけなさい。
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いいですね。「美しい猫になれるノート」に書き込むのは、美しくない猫のはず
だと誰もが思うよね。だから「まとも」な猫は決して書かないし、書かれている
ところを見られたくないと思う。みんなの見ているところで書き込む猫は無視し
ていい。彼等は遊んでいるか、本当に何も出来なくなっているかどちらかだ。
ところが、こっそり書くのは違う。強い気持ちを持っていて、美しくなることを
いつも考えている賢い猫である可能性がある。そんな猫を見つけたら、こっそり
着けていって、考えや暮らしをよく観察しなさい。
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その猫が、いつも自分以上の何かになろうとしている、と君が感じたならば、クルシャ君
その猫こそが「世界を変える猫」だよ。すぐに話しかけて、ともだちになってくれるように
頼み込みなさい。きっと迎えてくれる。君の策略も、すべて話しなさい。受け入れて笑って
くれるだろう。そして、君自身もやがて「世界を変える猫」となりなさい。
決して、よくいる「まともな」猫になってはいけません。君の幸せのためだよ。
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