では肉食動物の新生児は、親と同じ肉食が可能でしょうか。まず、肉食水生動物の子ども(新生児)の場合には、肉食が可能です。水中にはプランクトンが豊富にいるからです。
プランクトンは移動能力が高くないため、新生児が口を開けて水を飲み込めば水と一緒に入ってくるのです。あとは鰓などでプランクトンと水を分離すればいいでしょう。
だから、1mm程度の卵から孵化したばかりの稚魚でもカニの幼生でも、とりあえずは何かを食べられ、肉食動物として生きていけるのです。
では、陸生動物ではどうでしょうか。水中のプランクトンに相当するものといえば、陸上では、土壌中の細菌や原生動物、地表面の昆虫などが候補です。しかし、これらをエサにするのはかなり大変です。
まず、土壌中の微生物や原生動物は、数も種類も豊富だが、土と微生物をより分けることは不可能です。水中の稚魚のように「とりあえず口を開けておけばプランクトンが入ってくるということはないし、第一、土を掘るなどの作業は新生児には不可能でしょう。
もう1つのエサの候補である昆虫も、新生児が常食とするのは困難です。たいていの昆虫は運動能力が高く、生まれたばかりの動物(=たいてい運動能力が低い)に捕まるほどノロマではないからです。
しかも、昆虫の体は硬いキチンの外骨格で守られているため、これを食べるには強敵な顎関節と筋肉と歯が必要です。つまり、陸生の肉食動物の新生児が、はじめから肉食で生きることは不可能に近いのです。もちろん、陸生で卵生の肉食爬虫類のように、ある程度の体のサイズで孵化し、しかもエサを丸飲みできるなら生きていけるでしょう。
爬虫類の場合には、ほ乳類よりも基礎代謝が低く、ほ乳類よりも少量の食物で生きていけることも、生まれたばかりの子どもの生存に有利に作用しているかもしれません。
しかし、爬虫類は一般に卵をたくさん産むことから考えると、膵化後の爬虫類の子どもが肉食で生きのびるのはけつして容易なことでありません。
以上から、陸生動物の場合、草食動物にしても肉食動物にしても、生まれたばかりの子どもが親と同じものを食べて成長するのは不可能か、困難であることがわかる。その結果、まったく新しい育児システムが必要になるのです。
水イコール命