かくして、太古のほ乳類の祖先は、「体の小さな子どもを産み、親と違う食物で新生児期を乗り切る」という戟略を模索しました。
問題は、親と同じものが食べられるようになるまで、何を栄養源として生きていくかです。必要な のは、 タンパク質と脂質と 必須ビタミン、 微量元素 などです。
それさえあれば 、あとは新生児が体内で必要な物を合成できるし、いずれ腸内常在菌も助けてくれるはずです。また食物の形状には固形のものと液状のものがあるが、新生児の阻噛機能は十分でないから、与える栄養物は固体ではなく、液体か半流動体のほうが適しているのです。
さらに新生児の場合には、保温にも注意を払う必要があります。動物は体が小さいほど体表面横の割合が大きくなり、体表面からの熟放散が大きくなってすぐに冷えてしまうからです。
生まれたばかりの新生児の体表からの熱拡散を防ぐ唯一の手段は、新生児の周囲を体温まで温めることです。外部の温度を体温と同じに保つことができれば、熱エネルギーの拡散は起こらないからです。
そのためには熱源が必要になる。その熱源は太陽光以外には、親の体温しかないのです。つまり、親はなるべく子どものそばを離れずに温めるという工夫も必要となります。
以上の条件から、「親の体から分泌され、新生児の成長に必要な栄養素を含む液状のもので育てる」のがベストの選択となるでしょう。しかし、そんな都合のよい分泌物があるのだろうか?
ひとつだけあるのです。皮膚腺分泌物です。偶然にも皮膚腺分泌物は、すべての条件を満たしているのです。