シカゴハウス黎明期の知られざる話がてんこ盛り!
ただかなり”盛る”人だとお見受けするので鵜呑みにすると見失うものがあるだろうなぁ。以前にみた同テーマのドキュメントはこの本でかるく牽制されているChip E監修だったこともあり、その内容とところどころ齟齬があるけれど、これはどちらがウソをついているとかではなくて立場や世代の違いなのかなとは思う。
1979年には後のシカゴハウスにつながる下地が出来ていたという。「Rapper's Delight」が出た年だ。クール・ハークがブロックパーティをはじめたのが1973年だけれど、70年代半ばから世界的なディスコ・ブームと両輪で新しいダンス・ミュージックを媒介としたムーブメントが蠢いていたのだろうなぁ。
デリック・メイがTR-909をフランキー・ナックルズに譲るまえからシカゴとデトロイトの交流が生まれていたというのは自分のようなデトオタには興味深い逸話だ。安価に手に入るようになったシンセサイザーやリズムマシンを用いて自らの音楽を生み出すという動きがアメリカ中西部のブラック・アメリカンの中で同時に生まれたということなのだろう。そのホアンとの交流話は驚いたけれど、ジェシー・サンダースもホアンも裕福な家庭に育って、音楽的教育(といってもそこまでアカデミックなものではないけれど)を受けているという点でも相通じるものがあったのだろうな。
本書はジェシー・サンダースというオリジネーターの自伝・半世紀なので彼の視線からの風景が綴られている。研究者、歴史家による評伝ではないからフランキー・ナックルズやロン・ハーディーについては最小限な記述しかない。商業的に成功したフランキー・ナックルズは他の資料があるけれど、商業的成功を収めたとは言い難く、早逝しインタビューなども残っていないロン・ハーディについて詳しく知りたいというのが率直なところ。
ジェシー・サンダースがいうところの「TR-808とカセットテープだけで作れる」という勘違いからシカゴハウスの層は厚くなっていったのだろう。一旦勢いを失ってしまったのはマフィア映画さながらの騙しあいなどシーンに対する還元がなくなったことに起因するように思える。
それを盛り立てたたのが次世代のカジミアことグリーン・ヴェルヴェットだと思うのだけれど、彼の評伝とか読みたいなぁ。
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