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アルト・フルートwithアルト・ギターの魅力(1)/ジョー・ベック&アリ・ライヤーソン

2017-03-28 23:35:25 | 地球おんがく一期一会


クラシック音楽やラテン音楽では花形楽器の地位を確立しているフルート。サックスやトランペットが主流のジャズでも数多のフルート奏者が活躍している。しかし、ことアルト・フルートとなるとジャンルを問わずピンと来る曲も演奏者も少ないのが現状。

マイナーな木管楽器にイングリッシュ・ホルン(コールアングレ)がある。しかし、ドヴォルザークの新世界交響曲の第2楽章、というよりも「家路」で名高い有名なソロがある。ジャズではオレゴンで活躍したポール・マッキャンドレスの超絶ソロ(例えば、デビッド・フリーゼンの『スター・ダンス』のオープニングの曲)があったりする。

アルト・フルートでもクラシックならラヴェルの『ダフニスとクロエ』やストラヴィンスキーの『春の祭典』があるが、ちょっとマニアックかな。ジャズならハービー・ハンコックの『スラスト』に入っている「バタフライ」でベニー・モウピンの美しいソロが聴けるが、アルト・フルートだと気づくかどうかといった感じ。

確かにアルト・フルートは(普通の)フルートに比べたら煌びやかさに欠けるし、サックスに比べたらパワー不足の感は否めない。しかし、アルト・フルートにはアルト・フルートでしか表現出来ない魅力がある。この楽器のスペシャリストのひとり、アリ・ライヤーソンとギタリスト、ジョー・ベックによる珠玉の「アルト・デュオ」が残した2枚のCDを聴く度にそんな想いに駆られる。

Joe Beck & Ali Ryerson “Alto” (1997)

1) Ode To Billy Joe (B.Gentry)
2) 'Round Midnight (T.Monk & C.Williams)
3) Joy Spring (C.Brown)
4) Mother's Day (J.Beck)
5) Willow Weep For Me (A.Ronell)
6) Waiting Is The Hardest Part (J.Beck)
7) Summertime (G.Gershwin)
8) Scaborough Fair / Noweigian Wood (Lennon & McCartney)
9) Autumn Leaves (J.Mercer)
10) Cuidado (J.Beck)
11) Song For My Father (H.Silver)
12) What Would I Do Without You (J.Beck)
13) Billie’s Bounce (C.Parker)
14) We Will Meet Again (B.Evans)

Joe Beck : Alto Guitar
Ali Ryerson : Alto Flute
Steve Davis : Percussion (1, 4, 5, 8, 10, 11, 13)

優しく囁くようなアルト・フルートの深い音色、それをベースラインとコードワークに徹した暖かみのあるサウンドで包み込むジョー・ベック考案のアルト・ギター。まるで2人が合体してひとつの楽器を奏でているかのようだ。また、ジョー・ベックがメロディアスな部分を切り捨てて変則チューニングのギターを創り上げた意図もそこにある。CDのジャケットに描かれているように、ギターのネックがアルトフルートの吹き口になっているのが象徴的。

アリ・ライヤーソンとジョー・ベックがスティーブ・デイヴィス(パーカッション)のサポートを得て1997年にリリースした『アルト』のラインアップには、ジャズファンにお馴染みの定番がズラリと並ぶ。一際魅力的なソロが聴けるのはクリフォード・ブラウンの「ジョイ・スプリング」。アルト・フルートのサウンドが(ハイノートのヒットではなく)中低域で朗々と吹いたブラウンの演奏と見事にオーバーラップする。パーカーナンバーの「ビリーズ・バウンス」ではジョー・ベックのベースプレーヤーとしてのはしゃぎっぷりが楽しい。

有名なナンバーに混じって4曲演奏されるジョー・ベックのオリジナルも魅力たっぷり。白眉はアリ・ライアーそんお得意のフレーズが満載の6)。そして、このアルバムは作編曲家としてのジョー・ベックを聴く作品でもあるのだ。かと思えば、ビートルズナンバーのスカボロウ・フェアーとノルウェイの森が英国民謡風に繋がった遊び心たっぷりの演奏も楽しめる。

残念ながらジョー・ベックが2008年に亡くなってしまったため、この2人によるライブ演奏を聴くことはできない。だが、幸いなことに、ユーチューブで「アルト・デュオ」が残した名演を映像とともに楽しむことができる。しかし、何故にギターがアルト・ギターで、しかも開発者のジョー・ベックがアリをパートナーに選んだのか?

その謎に対する答えは、2001年にリリースされた『ジャンゴ』で明らかになる。


Alto
クリエーター情報なし
Digital Music Prod

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