それは私の部屋のクロ−ゼツトの天井裏にあった。天井裏なのて、最初は気付かなかったが、夜中にブンブンと音のするクロ−ゼツトを空けて見ると、小さな虫の卵が沢山落ちていた。そして、吊るしてあった一張羅の背広や他の背広など、よく見ると虫に食われて、まさしく虫食い状態。何分にも背広は年に数回しか着なかったので気が付くのが遅れた。
階下の部屋の壁には蜜が垂れて汚れている。
ある時、大きなスズメ蜂の群れが、屋根下から天井裏に出入りして居るのを見た。スズメ蜂は蜜蜂の天敵、蜜蜂をやっつけに来ているらしい。
一番怖いのは、蜜蜂の匂いを嗅いで熊がやって来る事である。
熊が蜜蜂の蜜を求めて民家の屋根裏に入ったと聞いたことがある。
ここ迄来ては放っておけないと、蜜蜂の巣を退治する決心をした。
ある晩、私は頭に笠を被りその上から草刈用のネットを被りその上から合羽を被り、厚手のゴム手袋をはめて、クロ−ゼツトの天井の板を剥がした。
なんと大きい物で50~60cm程の丸い板状の巣が4~5枚 むき出しの状態でぶら下がっている。
部屋の蛍光灯1つだけ灯し、巣の周りを棒で叩いて蜂を巣から追い出す。
案の定、暴れだした蜂が蛍光灯の回りをブンブンブンブンブンブンと飛び回っている。
そこへ蜂スプレーを吹き掛けた。一網打尽である。可哀想とは思ったが仕方ない。
2~3分もするとあら不思議。先程まで元気に飛び回っていた何千匹もあろうかと思われるミツバチ達。一匹残らず床に落ちている。ほうきで履いて窓の外に捨てた。
主の居なくなった蜜蜂の巣を取る。
やや腐り気味の甘酸っぱい匂いがした。
巣はバケツに一杯程になる。
蝋を手で絞り蜂蜜をとる。1l程ある。
舐めてみると当然甘い。ラッキー。
後で調べてみて分かった事だが、家屋に作る天然の蜜蜂は日本蜜蜂で、一般に養蜂家が扱う西洋蜜蜂とは違い貴重との事。
駆除せずに養う事を検討すべきだったが時既に遅し。