2018年のドイツの映画です。
現代美術界の巨匠とされる芸術家ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、ドイツの「歴史の闇」と「芸術の光」を描いています。
なお、映画化の条件は、人物の名前を変えて、何が事実か事実でないかは互いに絶対に明かさないこととなっているそうです。
ですから観ていて、暗黒の歴史の裏側を覗く重苦しさと緊張感に圧倒されました。
当然ナチ党政権下のドイツが舞台です。
少年クルトは、叔母の影響で芸術に親しみながら育ちますが、叔母は精神の均衡を失い、強制入院の果てに安楽死させられてしまいます。
終戦後、東ドイツの美術学校に進学したクルトは、エリーという女性に出会って結婚しますが、その父がナチ党の元高官で、叔母を死に追いやった張本人だとは知らずにいました。
やがて東ドイツのアート界に疑問を抱いたクルトは、エリーを連れてベルリンの壁崩壊前に西側に逃亡し、美術学校の教授から酷評されつつも、叔母の遺した言葉を胸に刻み、創作に没頭し、徐々に評価を高めていきます。
そして、ついに叔母の死に関する事実を知ることになり・・・、という非常に興味深く緊張感がある話です。
しかもこの物語の主人公であるゲルハルト・リヒターの個展が今年日本の美術館で開かれるというのもタイムリーです。
抽象的な絵画ですが、ぜひ私も観にいきたいと思っています。