おやじ達の青春夏

団塊世代のおやじ達が過ごした楽しかった青春時代の想い出の数々。

#20★★ジャケットが・・・

2013-09-17 | おやじ達の青春夏・エピソード
新橋、虎ノ門会館でダンスパーティが有るからパー券買ってと言われた。
大学生のグループがエレキギターで演奏するので凄い迫力だそうだ。
パーティの事は何回か話には聞いていたけれど実際に行った事が有る友達は居無かった。
話では「おばけ」と呼ばれる偽のパーティ券が有って開催されないのに
券だけを売って儲ける奴等がいるらしい・・・。
ただ、今回のは学校の先輩から回って来たので大丈夫だと言う事だったので友達数人で行く事になった。
親にはタカハシの家に遊びに行ってそのまま泊って来ると言った。
パーティ当日、この日の為に買ったVANのシァサッカーの三つボタンジャケット、
色はブルーとシロのストライプ、シャツはボタンダウンに紺色のニットタイにコットンパンツ
、靴はペニーローファーできめた。
待ち合わせの銀座に着いた。
8人全員が集まり「みゆき道り」をぶらぶらしてからパーティ会場へ・・・。
入り口は人で溢れてた。
中からはドラムとエレキの音が・・・,ビートルズのシー ラブズ ユーだ。
わくわくしてきた。
中に入ると暗く目が慣れてこないと見えない状態だ。
天井には球体がライトを反射してキラキラと回転している。
熱気でムンムン。
バンドの音が物凄いので話をするにも耳元で怒鳴らないと聞こえないくらいだ。
これがゴーゴーダンスにモンキーダンスか・・・ツイストを踊っている人もいる。
みんな汗を掻いて踊って楽しそうだ。
仲間は初めての光景にみんな無口になっている。
会場の端、壁側に移動しじっと観察を・・・。
見ていると何曲かは早いテンポの曲で、その後にはスローな曲に替る。
男同志で踊っていた連中はパートナーを探したり壁際に下がってテンポの速い曲に変わるのを待っている。
男女が抱き合って踊っている。
そのパターンを繰り返しているようだ。
後で聞いた話ではスローな曲で踊るのは「チークダンス」と言うらしく
頬と頬を付けて踊るからだそうだが、そんな踊り方をしている人はあまりいない。
殆どの人は、向かい合いお互いの片方の手を繋ぎもう一方の手を男性は腰に廻し女性は肩に掛けている。
凄い踊り方をする人もいた。
男は片方の手を相手の腰に回しもう片方を背中に回し頬ではなく耳を付ける位抱き合っている。
女性は両手を相手の腰に回し顔を相手の肩にもたれ掛っている。
暫くすると誰かが言いだした「俺達も踊ろうよ」と・・・。
他の人が踊っているのを見よう見真似で・・・なんとか。
どんな踊りをしようがそんな事を見ている奴も気にする人も居ない。
自分達の好きなように踊っている。
何かぎこち無いがそれでも楽しい。
そしてチークタイムに・・・
それじゃ俺達もと夏に磨いた軟派の腕で「
ツボイ、一緒にあの二人連れ行かない?」
「おう、良いけどさ、あの二人さっきから声掛けられているけど乗ってこないぜ・・・大丈夫?」
「まぁ当たって砕けろで行こうよ」
「OK!お前に任せるよ」
「コンバンワ、踊り上手いですね、
俺達パーティ初めてなんだけど、
もし良かったら踊り教えてくれないかな」
二人連れの女の子はお互いに顔を見合わせただけで、何も答えてくれない・・・無視。
ツボイはやっぱりと言う顔をしている。
それではと二人の踊りを真似てわざとテンポを外して踊ると、二人は笑いだした。
更に踊ると・・・。
「腕の位置が違うのと首の振り方が反対だよね~」と言いながらユックリと自分の踊りを見せてくれた。
「先生、こうですか?」
再び笑顔、上手くいった。
暫く踊っていると暑くなって来た。
汗を拭きながらジャケットを脱ぎ壁側で踊らずに椅子に座っている友達の隣の椅子に掛けながら
「悪いけど見ててくれる?」
「ああぁ良いよ」
そしてフロァに戻ろうとすると更に照明が暗くなって
スローテンポの曲が「アンチェインド メロディ」だ・・・チークタイムになった。
うゎ~どうしょう。
心臓がドキドキして来た。
上手く誘えない。
どうしょう・・・。
女の子の前で立ちすくんでしまった。
すでにツボイは踊っていて此方を見てニヤニヤしている。
やるな、あいつ。
すると女の子から「踊らないの・・・」と言いながら手を差し出された。
「いいや・・・」と手を出した。
もう片方の手を腰のあたりに恐る々当てユックリと腰を振った。
聞くと女の子は高3でイケダさん、イケと呼ばれているそうだ。
踊りが好きでパーティには良く行くらしい。
名前を聞かれたのでヤスノリと言うとジャー「ヤッチン」だねと言われた。
それから最後まで「ヤッチン」と呼ばれていたので友達までが「ヤッチン」と呼ぶようになった。
ツボイは「カズオ」
タカハシは「ケンジ」
ニシドは「マコト」と皆、下の名で呼ぶようになった。
どうも腰と足の動きがぎこちないがそれでもイケさんから言わせると上手いらしい。
「初めてなんて嘘でしょう」と耳元で囁かれた。
くすぐったい。
そして腰のあたりをギュと握られた。
「うっうっ・・・」と・・・どうもこの辺を触られるのは弱いらしい。
アッと言う間に2時間位が過ぎた。
3度目のチークタイムが・・・。
一曲目が終わり二曲目「ミスター ロンリー」が・・・。
しばらく踊っていると握っていた手を自分の腰にいや背中に回させ自分の両手は首に巻きつけた。
うわ~~と心の中で叫んだ。
彼女の顔はちょうど首のあたりで顔をうずめている。
心臓の音、ドキ、ドキが聞こえているかも・・・。
癖になりそう。
たまらない。
やわらかい髪の良い香り。
どうしょう。
世の中の楽しい事をまた一つ知ってしまった。
そしてバンドが終り照明が明るくなった。終わりだ。
2時間半のパーティは終わった。
イケさんの電話番号を聞き次回会う約束をして別れた。
そして帰る時、椅子に掛けたシァサッカーのジャケットの事を思い出した。
戻って見るとジャケットは無くなっていた。
「ねぇ、ここに置いた俺の上着知らない?」
「あれ、さっきまであったのに・・・」
一回しか着ていないのに・・・。
そして帰りの電車の中で友達に「ミナミハラ!左胸の所に何か痕が付いてるよ」
言われて見てみると肩のあたりに化粧と口紅の痕が付いていた。
翌日、友達の家から一人で帰る電車の中・・・
染み痕を隠す為にず~っと左手で吊革につかまって右手で左肩を揉むふりをしていた。

そして後日、
渋谷リキパレスにて開催されたベンチャーズ来日公演のダンスパーティに行った、
もの凄いもりあがりで特に印象的だった曲が「レッツ・ゴー」だ。
タン、タン、タタタ、タタタ、レッツ ゴー
タン、タン、タタタ、タタタ、レッツ ゴー、
会場の全員で「レッツ ゴー」と
今の俺達見たいな曲だ。
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