先に、「アルツハイマー病治療薬」の失敗について書かれた記事を紹介します。
(少し長いですが、お付き合いください。)
市川衛さん(医療の「翻訳家」/医療ジャーナリスト/メディカルジャーナリズム勉強会代表/京都大学医学部非常勤講師。)の記事から
《有力とされた「アルツハイマー病治療薬」の失敗 苦戦が続く認知症薬の開発》
2019年3月21日、大手製薬企業「バイオジェン」と「エーザイ」は、開発中のアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」の臨床試験を中止すると発表しました。
認知症の最大の原因となっているアルツハイマー病には、現在のところ、病気の進行そのものを抑える「根本治療薬」は開発されていません。
アデュカヌマブは「こんどこそ第1号になる」と世界中で注目されていたものでした。
というのも、世界で最も権威のある専門誌のひとつ「Nature」に、効果を期待できるデータが報告されていたからです。
アルツハイマー病の原因として疑われているのがアミロイドベータ(Aβ)という物質です。この物質が脳にたまると、神経が傷つき、脳の働きを衰えさせるのではないか?と考えられています(アミロイドベータ仮説)。
2016年にNatureに報告された研究では、アデュカヌマブを使うと、脳にたまったアミロイドベータが減り、しかも、薬の量を増やせば増やすほど減り方が大きいことが示されました。
さらに投与を受けた人の中には、アルツハイマー病によるものと思われる症状(認知機能テストの点数の低下など)の進行が抑えられた人がいました。
この結果を受けてバイオジェン社は、治療薬としての承認を目指し、多くの人に使って効果を検証する試験を行っていたのですが、そのデータは予想に反して「十分な効果は見込めそうにない」ことを示しており、試験の中止を決めたのです。
「アミロイドベータ仮説」は誤りなのか?深まる疑い
実はここ5年ほど、アルツハイマー病治療薬の開発を目指した試みは「連戦連敗」を続けています。
世界の大手製薬企業が巨額の予算をかけて薬剤を開発し、動物や少人数の試験で期待できるような結果が表れ、「こんどこそ」とチャレンジした臨床試験で「効果なし」という結果に終わる。そんなことが相次いでいるのです。
今回のアデュカヌマブの試験中止は「もうひとつ敗戦が加わっただけ」ともいえるかもしれません。しかし、製薬業界に与えるショックは大きいものがあるだろうと想像できます。
これまで繰り返された失敗に関しては、様々な理由が提唱されています。有力なものとして「薬は早めに投与しなければ効果が出ないのでは?」というものがあります。
そこでアデュカヌマブの臨床試験は、早期の人や、まだアルツハイマー病とは診断されていないMCI(軽度認知障害)の人を対象として選んでおり、効果を示しやすいと考えられていました。
さらに2017年には、日本に本社を置く製薬企業「エーザイ」が、開発費用をバイオジェン社と分担することを発表していました。エーザイといえば世界初の抗認知症薬「アリセプト」を開発し、現在もアルツハイマー病の根本治療薬の研究を積極的に進めていることで知られます。
そのエーザイが、わざわざ開発費を分担するリスクをとったわけですから、これは成功を確信するようなデータをつかんだのではないか?と期待が高まっていました。実際、エーザイの内藤晴夫CEOは2017年のプレスリリースの中で「Aβ仮説に基づく創薬への確信を深めています」と自信を示していました。
成功を期待できる状況が積み重なっていたなかでの「失敗」のニュース。驚きと失望の思いが広がり、開発を進めていたバイオジェンとエーザイの株価は大幅に下落しました。
認知症の根本治療薬 今後の開発の見込みは
実はエーザイは、アデュカヌマブの試験中止の発表の翌日、「BAN2401」という別のアルツハイマー病薬の臨床試験の開始を発表しており、積極的な開発を続ける方針を明確にしています。アデュカヌマブの試験中止は、もっと有望な薬候補に予算を集中するためなのかもしれません。
しかしここ5年ほどだけを見ても、ファイザーやメルク、イーライリリーなど世界の名だたる製薬企業が、根本治療薬の臨床試験に失敗しています。今度こそ、今度こそと繰り返される臨床試験が失敗するたびに、「有望株」の数が減ってきています。
アミロイドベータがアルツハイマー病の原因であるとする「アミロイドベータ仮説」が提唱されたのは、2000年代初頭のことです。そこから20年近く、この仮説に基づいて根本治療薬を開発しようとする試みは世界各国で行われ、そして残念なことに、ことごとく失敗に終わってきました。
いま世界中で、「アミロイドベータ仮説」が間違っていたのではないか?という疑いが広がりつつあります。そもそもアミロイドベータが「主要な原因ではなかった」とすれば、薬の失敗が相次ぐことの説明がつくからです。
しかしアミロイドベータ仮説の否定は、長年の研究の蓄積を根底から覆すものになりかねず、簡単に議論できるものではありません。現在もアミロイドベータ仮説に基づく研究は世界中で行われ、多額の研究費が投じられています。
いわば「なかなか先の見えない森の中を、もはや引き返すに引き返せず、ただ前に向かって進むしかない」状況といえるかもしれません。
以下略
《小生の先日のブログ記事の経過報告》
小生の治療している86歳のおばあさん(3/20付けブログ:認知症の程度分類で中等度)の治療経過です。
顕著な症状改善はありませんが、処方箋を渡してからの変化ですが
ご家族によると
1、ぐっすり寝るようになった。
2、目つきが明らかに変わっている。(認知症になる以前の目になっている。)
3、話の内容を理解し、次の日にもそのことを覚えている。
等です。
治療を始めてから、今日で10日余りです。
3/20付けブログにも書きましたが、理想的な数字を家族の方がお持ちです。
時間はかかりますが、確実に良い方向に向かうでしょう。
末尾に
認知症の治療薬が開発できないのには理由があります。
一番は、原因がお解りでないということです。
探っている個所が違うのです。
さらには、認知症の多くは、高齢者であり寿命も短い方が対象となります。
認知症を良くすることは、その寿命を長らえようとすることになります。
小生の理論以外に寿命を延ばすことなどできるはずがありません。
医学の進歩だけではありませんが、協力いたします。
お気軽に利用してください。
田舎のおじさんでした。