今から6年程前にスウェーデン王国ストックホルムから一枚のコインと賞証が届けられました。
今、私の掌にそのコインが載っています。スウェーデンから送られてきた銀色の小さなコインです。おそらく日本円にして100円程度だと思います。コインには人物の浮き彫りが施されていますが磨り減っていて分かりません。この何の変哲もない小さな一枚のコインが私を変えてくれたのです。
ストックホルムにバーサハンレンという平和の殿堂があります。
そこに作品を展示させていただいた或る日のことです。
一点の作品を身動き一つせず、いつまでも見入っている幼い子供が見受けられたそうです。殿堂特有の空間で何かを感じたかのように時を忘れてたたずんでいたそうです。
突然、子供は周りを見渡し、係りの人にそそくさと近づき、絵を指差し握り締めていた一枚のコインを差し出したそうです。
係りの方は一瞬言葉もなく戸惑われたそうです。
しばらくして理由を尋ねたところ、
「絵に描かれた自然の美しさにすごく感動したよ。 お礼に、絵を描いた人にこのコインを届けてほしい。 ありがとうと言ってほしい」と幼い子供は何度も頼み込んだそうです。
その事を聞かれ、子供の想い、その熱心さに感動された代表の方が私宛に送り届けて下さいました。それがこの掌のコインです。
今、子供のコインに託した想いは、私の環境活動の新たな起源の一つとなり、ルーヴル、エルミタージュへと繋がり北欧から欧州全域へ、そしてアフリカ、アジア、アメリカへと通じ、ひとつの輪に繋がる道を導いてくれているようです。
なお、このことがきっかけとなりスウェーデン王国側よりバーサハンレンストックホルム平和貢献賞を設けていただき授与させていただきました。同時に幾人かの作家にも授与させていただくことになりました。スウェーデンでは余程の事がない限り平和と名の付く賞は許可されません。そのことを御存知なだけに皆さん大変喜んでおられたそうです。(スウェーデン側のお気遣いが痛切に感じられました。)
また数年後、国王陛下在位30周年を記念して作品をご覧いただけなかったシルビア皇后陛下のたっての願いにより改めて美術展が開催されました。その会場には国際機関、各国大使、ノーベル財団を始め多くのご来賓の方々にご臨席賜ったと伺いました。(私のせめてもの感謝の気持ちとして各地から招待された子供達全員にディスクをプレゼントさせていただきました。)
私は欧州の芸術に対する見識の高さ、想いが日本など足元にも及ばない事を痛切に感じ始めています。日本人の常識ではとても考えられない事が実際起こり実現されてしまうことです。
スウェーデン王国で起こった話だけではありません。
たった一人の一作品を飾りたいがためフランスとイタリアが協力してフランスの国立美術館で展覧会を企画開催してしまう。しかもプレスリリースの後、多くの作家の作品を公募、その美術展には初日に8万人が訪れることになったそうです。残念な事に大統領はストの影響で来れなかったとの事。
もちろん、ロシア、中国なども例外ではありません。
ロシアでは衛星放送をしてくれたそうです。
放送を傍受された中国(新華社等)でも関心を持ち始められたと伺いました。(追伸、2009年3月の最新情報として・・・人民政府と芸術協会が協力して幾つかの都市で環境活動を始められるそうです。今後どのように展開して行くのか分かりませんが、少しでもより良き未来に繋がるのなら、子供達が幸せに暮らせるのなら、持続可能な形で推し進めさせていただければと願っています。)
芸術とは何であろうかと考えさせられます。芸術の凄さ、そして怖さを。