おはようのキッスはいつもマスクごし
ゴールデンウイークですと言われても
母の日の母は朝からお忙し
コロナ禍の市中構わずツバメ飛ぶ
ポケットに五月の空を持ち歩く
カーネーション墓前に並ぶ白マスク
母の日の母は朝からお忙し
コロナ禍の市中構わずツバメ飛ぶ
ポケットに五月の空を持ち歩く
カーネーション墓前に並ぶ白マスク
電話口暮らしの匂い消して出る (鈴木青古
一日をきれいに消して行く時間 (大家北汀
くだらないテレビを猫が消して行く (丸山進
申し訳なくて被災のテレビ消す (田中山海
当てられぬように気配を消す生徒 (橋倉久美子
シュプレヒコール爆音で消すオスプレイ (棧 舜吉
罪一つ許して悔を一つ消す (沢田清敏
ラジオ消す夜が分厚くなってくる (笠川嘉一
つまらないジョークで消した導火線 (川辺 大柳
勝った負けたと所詮は風が消して行く (西川国治
風が吹く前に火種は消しておく (彦翁
ころころと笑って女過去を消し (早川双鳥
傘の中から核廃絶を訴える
グランドの桜は汗を知っている
生きている証なのかなこの痛み
知らぬ顔しても冷や汗見えてます
前方の車は右か真っ直ぐか
グランドの桜は汗を知っている
生きている証なのかなこの痛み
知らぬ顔しても冷や汗見えてます
前方の車は右か真っ直ぐか
ポケットの隅で口笛吹いてます(ポケット)
反対をするに勇気が足りません(反対)
反対を唱えぽつねん針の山(反対)
目の前の蜜に両の手縛られる(目)
目ざめたらカボチャになっていた私(目)
献立を公開している換気扇 (小野中泊子)
オープンな性格だから憎めない (柳歩)
鍵穴から私の秘密漏れている (佐藤健次郎)
空き家から大きな心音が漏れる (倉本朝世)
縫い目からかすかに漏れる朝ぼらけ (石部 明)
安楽死の話が漏れてくる廊下 (北野岸柳)
卵から可愛い声が洩れて春 (栃尾 奏子)
包装がへたね 秘密が洩れている (沼尾美智子)
湯どうふがゆらり秘密がこぼれそう (沼尾美智子)
どの継目からも水洩れする身体 (石部 明)