ある日の事でございます。
祝!ミッション完了!
御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
英陸は小学校・中学校と放送部でアナウンサーをしておりました。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は朗読の教材だったので、何回も練習しましたです。
リズミカルな言葉の並びが、ほわ~っとのどかな極楽の雰囲気をかもしだして、
とても好きな出だしです
この後御釈迦様は蓮池から地獄をご覧になって、犍陀多(かんだた)という罪人に気づきます。
犍陀多は人を殺したり家に火をつけたり悪事の限りを尽くした極悪人ですが、
生前ただ一つだけ善いことをしました。それが蜘蛛を殺さずに助けたということだったのですが、
それだけで御釈迦様は犍陀多を地獄から救ってやろうという慈悲の心を起こします
幸い、側を見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮(しらはす)の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。
たった一本の蜘蛛の糸。
天上から降りてきた蜘蛛の糸を見上げ、犍陀多は地獄での苦しみからこれで逃れられると、すがりつきます
なんでこんな話をしているかと申しますと、
あの落盤事故を起こしたチリ鉱山での救出劇を見ていて、
この『蜘蛛の糸』が思い出されたからでございます。
700mの地の底。
まるで地獄のようなその場所に、一本のケーブルにつながれたカプセルが下ろされていく光景は、
まさに「蜘蛛の糸」
33人の鉱夫たちはもちろん悪人ではなく、究極の状態を生き抜いたヒーローなのですが、
彼らにとっては、そのケーブルは犍陀多にとっての蜘蛛の糸に他ならなかったでしょう
ご存知のように犍陀多の方は、自分一人が助かりたいばかりに、
後から糸を上ってくる他の罪人に「下りろ、下りろ」と怒鳴ります。
結果、蜘蛛の糸はプツリと切れて犍陀多は再び地獄の底に落ちていくのです
今回のチリ鉱山の事故では、リーダーの規律の下、希望を失わずに協力し合って奇跡的に救出されました。
一時期は本当に地獄のようなパニック状態にもなったようですが
結果的に妥協しあい、忍耐しあうことを選んだことが全員の生還につながりました。
そう、争わないこと。個人が強力な主張を避けることが生き残る道
チリ人は基本的にインディオの子孫。
自然に逆らわず、集団の和を大事にするチリ人気質が幸いしたとも言われています
何か、宇宙船みたいよね 「任務完了!」救助員もヒーローです
英陸としては、犍陀多の気持ちはよくわかりますけどね。
犍陀多は「助かりたい」という欲があったのはもちろんですが、
「落ちるかもしれない」というとてつもない不安に襲われたんですよね。
不安っていうのはものすごく大きなマイナスのエネルギーとなります
不安を払拭するために、人間は有意義な努力をする代わりに、
浅はかで浅ましい行動をしちまうもんさ…
生きるって、たいへんよね…
しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足(おみあし)のまわりに、ゆらゆら萼(うてな)を動かして、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽ももう午(ひる)に近くなったのでございましょう。
『蜘蛛の糸』は、こう結んでいます。
何事もなかったように、何も変わりがなく、極楽の穏やかな光景が広がります。
毎日はそうやって過ぎていくのでしょうが、
それでも、ちょっと物悲しく最後を締めくくるのが、朗読のコツでございます…
ああ、仔に逢いたい…
大盜在地獄發現一條蜘蛛絲,他沿著那透著微小光芒的絲不斷往上往上爬,好不容易差一步就離開地獄時,那根蜘蛛絲就斷了。
陳在天從一個流浪漢到整形成為大帥哥,每月有數十萬收入,他從來不積極問『為什麼』,他害怕失去莫名其妙得來的美好一切,當有天他又可能失去一切,深植在心中的恐懼化成灰暗意識,那個轉換的力量是驚人的、也是一發不可收拾的。但,他心底還藏有一顆柔軟的心,說到底他就是需要『真實』,因此當劇中陳琳愛他時,那是真實的,這導致他內心的暗力量與他善良的本質不斷掙扎,那個掙扎投射到我的表演上就是一個磨練的進步過程。
對於拍戲,我覺得按部就班,認真努力是人生基本的態度。金鐘獎的入圍,對我來說,不僅在戲劇表演上給予肯定,更是肯定了我的人生基本態度。
ありがとうございます。仔も「蜘蛛の糸」の話をしてたんですね~
このときは陳在天をカンダタに喩えて話してますが、
今読んでみると別の読み方ができて辛い…
金鐘獎にノミネートされて、これまでの努力が認められた、と希望を見出した仔仔。
なのに、プッツリとその糸は断ち切られてしまった…
なんだか、予言をしていたような、意味深な談話ですね