Rising斬 the侍銃士

音楽のこと、時代小説、映画を中心にしていくと思います。タイトルは自分のHNの由来になったゲームから

新撰組の光と影

2012-05-31 01:02:20 | 本と雑誌
童門冬二先生が書いた新選組に関する本です。
近藤勇の悲哀や沖田総司の成長についての話もよかったけれど、俺的に忘れられないことが2点ありました。

その1。芹沢鴨について。
芹沢鴨は新撰組創設時の功労者の一人でしたが、彼は純粋すぎる近藤たちを引き立てるためにあえて汚れた役を引き受けたらしいです。
「新撰組が名をあげるのには、京都市民から愛されてはダメだ。怖がられなくてはダメだ」「そのためには、新撰組が嫌がられることであり、嫌われることだ」という哲学を打ち立て、その役目は近藤にも沖田にもできないことであるから自分が騒ぎを起こして新選組を恐怖の存在に仕立て上げようとしたそうです。
自分が泥をかぶれば近藤たちは綺麗な生き方を続けられると考えたらしい。結局それが行き過ぎて芹沢は愛する新撰組にとって邪魔者になってしまうのですが。
そしてそんな芹沢も唯一理解者の遊女からは見抜かれていたらしい。
「芹沢先生は、本当は優しいお人だという気がします」「その証拠に、先生はお酒を飲まないと何もできないじゃありませんか」
という辺りがなかなか泣かせます。
あくまで小説家が考えた話ですけどね。
俺もそういえばよく周りに嫌われ者が現れて、その人と対決するような構図になることがある。
結局それによって俺も味方を増やしているなと思うと、嫌われ者たちに感謝したい気持ちに若干なれました。

それともう一つ。
当時の維新志士たち、高杉晋作も坂本龍馬さんも、もちろん新選組の面々もだいたい有名な人物は遊郭に懇意な女性がいたし、彼らは非常にもてて、しかも女性が色々と協力をしたのですが、それについて童門先生がまとめている。
まず、遊郭の女性たちは金で売られて金で買われるとてもつらい立場にあり、いわゆる雲の上の偉い人たちには住む世界が違いすぎて自分たちの不幸など理解できない。
しかし維新の英雄たちはどちらかというと中間管理職的立場で、苦労していたから彼女たちの気持ちがわかる。
「同時にまた、世の中の弱いものや苦しむもののために、深い同情心を持っていた」「『どうすれば、この世の中から、そういう人間の悲しみや苦しみを追い払うことができるか』ということを真剣に考えていた」「そのことを実現するために命懸けで戦っていた」
のだそうで、そういうところに女性たちは心をうたれたらしいです。

こういう話を聞くとどっかのサイトで見れるような女性にモテるテクニックなんか汚らわしくて見る気になれなくなってしまいますね。
どうせならばこういうやり方でモテたいものですし、というかモテなくてもいいから英雄たちと同じ道を歩みたい。今の女に通じないならばそれは今の女が悪いと、そう言い切っていきたいものです。
当時の女性は幕末の英雄たちの心情を理解して彼らに尽くしていったわけですが、童門冬二先生いわく、時代の移り変わりで現代のプロフェッショナルな女性は指を3本握られたからといって天下に発表してしまうとありました。
それについては変わったのは女性じゃなくて結局現代の男に尽くすほどの価値がなくなってしまったんだろうなと思う。
というかそういう男女がもしいたら人に知られることはないんですよね。発表しないんですから。
むしろ暴露している女性は、実は他にいるもっと好きな男性を守るために暴露したのかもしれないなと思ったりする。
 
この本はもちろん近藤や沖田の話も面白かったです。土方はちょっと厳しかったが。
 
ちなみに新選組と新撰組どっちでもいいようです。

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