石ころ

彼女の分


老人車を押しながら彼女はいつものようにやってきた。次の瞬間、素早く誰の畑にでも入って行って、気に入った物を車に放り込んで去って行く。栗でも、柿でも、野菜でも、花でも・・。
「買って来たばかりの鉢植えが無くなったと思ってたら、彼女の庭で咲いていた」なんて苦笑いをしていた人がいた。

「あーあ、またやってる」
「ほんまに、しょうがないなあ」
見てみない振りをしながら、誰も言葉ほどには怒っていない。彼らは彼女の盗癖を知っている。現場も見ている。でも、彼女の不遇な事情も知っているから目くじらを立てる人も、訴える人も居ないようだ。

「老人会の旅行に行った時は、ほんまに困るでぇ。何か盗らへんか思うてこわい・・」
それでも彼らは彼女をのけ者にはしない。道で出会ったら気さくに話もする。そんな鷹揚さに私もやっと慣れてきた。

私は彼女を受け入れるのにかなり抵抗があった。けれども、老人の多い片田舎では、誰もが「彼女の分」を「お取り置き」しているみたい・・。罪は罪だけれど許されたら罪にならない。私はイエス様に、十字架で罪の代価を支払われ赦された者。同じなんだ彼女と。でも、彼女は、いっぱい許されていることを知らないのが悲しい。

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