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石ころ

旅立ち

 息子のトワイライト・エクスプレス個室ロイヤルによる北海道旅行は、一日有給をとって金、土、日という強行軍、しかも釧路まで行って丹頂を撮るという。
しかし、天気予報は大雪を告げていて、雪に弱いトワイライト・エクスプレスが運行できるとは思えず最悪だった。
せっかくすべての日程を組んで切符も購入してあるのにと、出発の前夜は旅の準備をするべきか中止をするべきか・・暗い顔で悩んでいた。

 私は終始「イエスさまが備えてくださったチケットだから進め!」と言い続けていた。そう言いつつも、彼の悩みがピークに達した時、そっと彼を導いてくださいますようにと主に祈った。
そもそもこの切符が手に入ったのも、主のお導きではないかと私は信じていたから・・。しかし、それには疑問がたくさんあるけれど・・後にそのことに気づくことになったけれど・・。

そんな時、彼に尋ねて「仮にどんなことがあっても、イエスさまは共にいて下さることを信じるか。」「分かっている」その言葉にほっとしていた。
私は「進め!」という言葉とどこかがちょっと矛盾しているなぁ・・と、なぜこんな事を聞いているのだろうとも思っていた。

 その直後「行くことに決めた。」とカメラを持ち出してきて飛行機の中に手持ちで持ち込める鞄の準備などを猛然と始めた。何を置いてもカメラは離せないらしい。一々測り限りあるサイズに苦労をしている。
そんなバタバタとした荷造りの後あまり眠る間もなく、まだ明けやらず真っ暗な凍てつく道に旅発って行った。

携帯電話のメールで札幌空港から快晴だと知らせてきた。釧路からは「丹頂鶴、オオワシ、オジロワシ、キタキツネの写真が撮れた。神に感謝」と知らせて来た。
しかし、その夜「明日のトワイライト・エクスプレスは運行中止が決定。これからどうするか考えないといけなくなった。」というメールが来た。

 私は自分の信仰を息子に押しつけたことをやっと認識した。主にひれ伏す思いで祈り、初めから落ち着いて思い返した。すべてのことがはたして神より発したのかと・・そのことを。
そして「イエスさま。もう二度とあなたと息子の間に割って入って、あなたのお邪魔をしないようにします。自分の信仰を押しつけて、あなたから息子を守ろうなどとはしません。」と悔い改めた。

息子にはメールで謝った。
「私の信仰を押しつけてしまって、申し訳ありません。
イエスさまとあなたの間に割って入ってしまったのだと反省しています。
主にも謝りました。迷惑を掛けてしまったと思っています。」

その後は、不思議な平安を主に頂いて眠ってしまった。その後PCのディスプレーが映らなくなって、携帯を持っていない私は彼と連絡がとれなくなってしまった。
翌日の午後、「明日の飛行機のチケットは取れないので今日帰る。」という一方的に話す彼の電話を受けたあと遅くに元気な笑顔で戻ってきた。

 彼は着替えもそこそこに、千歳空港に向かう電車のトラブルで搭乗がとてもきわどい状態であったことなどを興奮して話してくれた。
貴重な写真を沢山撮ることが出来て満足そうであり、「スリルの無い旅なんて、スパイスのない料理のようなものだよね。」なんて無責任な私の言葉にも笑っていた。

 主はいつもすべてを益としてくださる。憐れんでいてくださる。味方である。どんなことがあっても私はそのことを疑わない。事が成らないのには、必ずそこにも主のご愛があるからだと知っている。
一日早く戻れたことですっかり疲れを癒し少しは写真の整理も出来た。トワイライト・エクスプレスにはまた乗れるだろう。
本当は、妻を得てカップルで乗れることを願うけれど・・。その前に私は息子から旅立たなければ・・彼は自由に妻を決められないね。

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