石ころ

48年間とお別れの旅(2023.06.30)

 

 転出届けなどのために電車で3時間のひとり旅をした。諸々の用事があり、二泊三日の予定で宿を取ってあった。

到着してまず一番の心配事、壊れた部分入れ歯のことで歯科医院に駆け込む。
「まだ使えます。今出来ることをしますが、入れ歯はいずれ駄目になります。それよりも、健康な歯をケアしてくれる歯科医に、今直ぐとは言いませんが行ってください。」

先生は時間をかけて納得できるように話してくださった。確かにまだ困ってはいない。支える針金が折れたけれども、ピッタリと合っているので不自由なく食べられている。もう、先のことを心配しないと思った。

 

次は美容院、私の髪質を知って時間をかけてしっかりとパーマをあててくださる貴重な存在、でもこれが最後となる。予約時間はとってなかったのにすぐにしてくださって、引っ越し先のことなどおしゃべりしながら・・少し旅の疲れを取る時となった。

 

爽やかになって、いつもの医院を尋ねて四十肩の痛みを訴え、先生や看護婦さんとまたまたおしゃべり・・、奥さんはご自身が四十肩の経験があり、痛みを理解してくださりリハビリの方法を教えてくださった。

 

日も暮れてから汗にまみれて宿に戻り、優しい応対とゆったりと流れる吉野川にほっと.一息ついた。
簡単な食事の後住んでいた家に行き、買い取ってくださったお隣さんとまたまたおしゃべり・・そうして48年間住んだ家を笑顔で後にした。二度と入ることはない門を閉じて・・。

 

宿では、景色の綺麗な二階を希望したので階段の上り下りがあった。応対してくださった女性が「今夜は此処に泊まりますから、用事があったら何時でも言ってください」と階段の下の部屋を示された。ご迷惑をかけているな・・と思ったけれど、心強くて安心して眠りについた。

 

 翌日は司法書士さんに寄ってから役場に転出手続きに行く。これで計画していたすべてが終わった。宿泊を一泊にして戻ることにする。

一番の楽しみは手続きが終わってから、電車の時間まで友人と積もる話をすることだった。彼女にはいつもお世話になっている。今、彼女はとっても大変な所を通られ少し細くなっておられた。二人になると、どんな時でもまるで何ごともなかったかのように楽しい時となる。

 

時間ぎりぎりまでおしゃべりをして、車に乗せて駅まで送ってくださった。当日発売の特急券を買う事が此処では初めてで不安だったが、一緒に居て助言してもらって無事に買うことが出来た。

 

電車が来る迄も話し続け再会を約束した。「元気になったら行く」と言われたことも嬉しかったが、お互いに歳を取っている身では、再会の約束は若い人には思いもよらないほどに重いのだ。

 

ホームでカートを持ってくださる方があったり、エレベーターに案内しくれる人があったあり、沢山の親切をいただいて、予定通りにもより駅に帰り着いた時「ああ。私の住まう所に帰って来た」と心からほっとしていた。

 

去る家は子育て刻む柱疵夫(つま)看取りて役を終えたり

 

 今日は転入手続きをした。健康保険証のことを尋ねたら「後ほど送りますが、今日からこちらで権利があります」と教えてくださった。まだ使わないとは思うけれど、その言葉に安心していた。もう、此処の住人なのだ。すべてはイエスさまが準備してくださったことである。

 

汗拭い終の棲家に転入の坂を登りて手続き終えぬ


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コメント一覧

ムベ
デ某さんコメントをありがとうございます。

友は不幸事の折でも、幸せの真ん中にいるときでも、言葉を選ぶ心配もなくすっと心に飛び込んで行くことができます。

私は両親を子どものときに亡くして、家族には恵まれませんでしたが、これまで良い友に恵まれて、多くの助けを頂いて来ました。イエスさまの憐みだと思っています。

はい。デ某さん、おくさまのことは安心してください。ふふ・・
でもね、友は先日、私は主人を看取って9年になろうとしています。聖書に夫婦は一心同体とありますが、半身を削り取られたような身の置き所のなさや、急激な環境の変化には少し頭が変になるほどでした。やはり夫婦は一日でも長く一緒がいいです。

老いにある脆さを、元気にしているようでも一年毎に切実に感じます。互いにその弱さを感じていて先の計画を語りつつも、心のうちに祈る思いがあります。

子育てをした家というのは格別です。新築の塗り壁に4bの鉛筆で一面の落書きを見て動転したこと・・、九九の歌を繰り返し歌っていた二階の勉強部屋・・、振り返らずに進まないと動けなくなります。

梅雨はまだ明けないですね。こちらは先ほど、ブラインド越しに見た宵の月がとても綺麗でした。
デ某
妻には 学生時代に同じ家に下宿していた友人がいます。
以来 ほぼ半世紀のおつきあい…何かにつけ励ましあっています。
ですから ムベさんが
> 二人になると、どんな時でもまるで何ごともなかったかのように楽しい時となる。
と記していらっしゃること、よくわかります。
しばしば会食し おしゃべりし 毎日のようにラインでも…。
私が先に旅立っても 彼女がいると思うと安心です(笑)

> お互いに歳を取っている身では、再会の約束は若い人には思いもよらないほどに重いのだ。

どこまでが若く どこから歳をとっている身となりますか…
たぶん 妻と彼女に その切れ目 別れ目はなさそうに思います。
そのことを 私はとても嬉しく思い 羨ましくも思います。

> 去る家は子育て刻む柱疵 夫を看取りて役を終えたり

柱にも… 壁にも… 机にも… 本棚にも…
至るところに生きてきた証の如く 家族の人生の節目が刻まれ
ムベさんの「おつとめ」は 記憶とともにいつまでもつづきましょう。

> 汗拭い終の棲家に転入の坂を登りて手続き終えぬ

諸々のお手続き…おつかれさまでした。
しみじみ感とともに ムベさんの心身のお元気を感じられたブログ記でした。

梅雨はまだしばらく明けそうになく 明ければ明けたで猛暑が待ち構えます。
くれぐれもお躰おいといくださいますようお願い申し上げます。

♪森麻季さんの「夏の思い出」ほか
 https://www.youtube.com/watch?v=vQ6VayrsICU
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