(月の巻)
父大和守時用。匡衡の
赤染衛門 妻也。袋草紙時用
依右衛門尉号
衞門云
やすらはで
ねなまし
物
を
小夜更
て
かたぶく
かたぶく
までの
月をみし哉
(花の巻)
赤染衛門
やすらはでねなましものを
さよ更てかたぶく迄の
月をみし哉
後拾遺集に中関白
少将に侍りける時
はらからなる人
に物いひわたり
たのめてちぎる也こざ
りけるつとめて翌朝なり
女に代わりてとあり。
○うたのこゝろははじめ
より人のちぎりをいつ
はりとしらば猶豫せず
してねぬべきもの
をとひもやすると
つきのかたぶく
までみあかしつる
ことよ也。
このうたある人有明の月を
まちいでつるかなといふ哥
の意に似たりといへり。まゝ
にさること也。