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浦松
沖つ風いさごをあぐる濱のいしにそなれてふるき松の聲かな (出典未詳)
の哥を讀み侍りし時、家隆の、
濱松の梢の風に年ふりて月にさびたる鶴の一聲 (壬二集)
の哥の面影が心にうかび侍りし也。此哥の躰をいはゞ、厳に苔むして、星霜なん千年なども見えぬ躰を見る心地し侍る。仙郷を見る心地する哥也。ふとうたくましき哥の躰也。但、幽玄躰にはさらに無き哥也。
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宇治の行幸有りしに、清輔一人久しく案じて遅く出されけり。清輔なれば人もゆるし中/\遅かりしも苦しからざりき。其哥に、
年へぬる宇治の橋守事とはむいく世になりぬ水のみなかみ (賀歌 743 藤原清輔朝臣)
此哥が、宇治の橋もりより、末は皆出來て五もじがいかに案ぜられけれども、なかりし程に、久しく案ぜられける也。あまり久しかりし間力無くて年へぬる五もじを注にちいさく書きて出だされける也。是はげに不足なる五もじにて侍る也。
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