ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

春の光

2018-08-06 03:19:53 | 絵画


チャールズ・ハロルド・デイヴィス(1856-1933)、アメリカ。


春の淡く硬い光が描かれている。

静かな風景だ。

まばらに芽吹く樹木。

見える建物は教会だろう。


とほくきくたれの呼び声春の日のあはき光の降る丘の上    揺之






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聖母子

2018-07-28 03:26:50 | 絵画


エリオット・デインジャーフィールド(1859-1932)、アメリカ。



聖母の頭部には固い光輪が描いてある。

幼子イエスは、世界をあらわす球体をおもちゃのように持っている。

抑えた色調が悲哀をさそう。

すみに描かれた金魚鉢は何の隠喩だろう。

食えと言われても食えぬほど美しいものだという意味だろうか。



たらちねの母のこころはちひさくもまめにいきよとねがひしものを    揺之






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夜明け

2018-07-24 03:23:10 | 絵画


ラルフ・アルバート・ブレイクロック(1847-1919)、アメリカ。


夜明けというが、なにか悲しみが漂っている。
時代が暗い方向に傾いているからだろうか。
画家の生きていた時代は、人類の暗闇の時代だった。
ほとんどすべての人間が、エゴを実行するために生きていた。
そんな嵐のような時代では、夜明けを迎えることは、また今日もつらい日が始まるのだと、そういう悲しみに染まるのだろう。


あかつきはうれひに満ちて空は晴れけふ一日の重き荷を知る    揺之





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夕焼け

2018-06-30 03:24:19 | 絵画


グランヴィル・レッドモンド(1871-1935)、アメリカ。


また夕暮れをとりあげてみた。

金色の空が、暗い樹影に区切られている。

空のひとかけらが、水の上に落ちている。

静かな時間だ。眠りに傾いていく世界はゆっくりと今日を閉じていく。

よい一日もよくない一日も、静かに浄化されていく。


ゆふぐれてけふ一日のかなしみをちさくまろめてくはむともする    揺之






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夕映え

2018-06-24 03:27:34 | 絵画


チャールズ・ウォーレン・イートン(1857-1937)、アメリカ。


よく描かれるテーマだ。人は夕暮れに強く惹かれるのだろう。

夕映えを背にして影になった木々、その傍らにも小さな人影がある。

あのひとも、夕焼けを見ているのだろうか。

夕映えは人の心を、望郷に似たかすかな憂いの空に吸い込む。

これから帰らなければならない家とは別の故郷が、この空のどこかにありはしないかと。


ゆふばえの空にかなしき星を見てしばしこたえず母の呼ぶ声    揺之






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夕映え

2018-06-18 03:19:28 | 絵画


ジョージ・イネス(1825-1894)、アメリカ。


黒い立木の影の向こうに、空が燃えている。

実際はここまであざやかにはならないだろうが、人の心にはこう映るのだ。

永遠なるものへのあくなきあこがれが、そう感じさせるのである。

世界というものは、感じる者の中にある、という気がする。


空は燃えしづかに落つるあまつ日のことやはらかに三界を去る    揺之





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砂の道

2018-06-16 03:26:34 | 絵画


ジョン・ジョゼフ・エネキング(1841-1916)、アメリカ。


明るい日向の中を、ひとすじの道が通っている。

記憶の中にある光景だ。

遠い昔、こんなところを通ったことがある。

だれか、なつかしい人に会いに行ったのだ。

それはおそらく、もう二度と会えない人なのだ。


ひかり散る昼のしづけさひとすぢの砂の道ゆくきみにあふため    揺之






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パンドラ

2018-06-11 03:24:40 | 絵画


トーマス・ウィルマー・デューイング(1851-1938)、アメリカ。


テーブルの上に箱が置かれている。それでこの女性像をパンドラに見立てたものだろう。

箱と一緒にならんだ陶器の壺は子宮を隠喩しているかのようにも見える。

イヴとパンドラは冤罪だという説は正しい。

男が女性に自分の罪を押し付けてきたのである。女性が真っ白だと言うわけではないが、すべてが女性のせいだというのはおかしい。

戦争も殺戮も、男がやってきたことだからだ。

人物は背景の色と響きあい、壁に埋もれていくかのようである。

あるいは画家の罪の意識が、何かをもみ消そうとしているのかもしれない。


玉くしげあけて世に吹く風を聞き罪のありかを影に落としき    揺之






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木陰

2018-06-10 03:20:28 | 絵画


ベン・フォスター(1852-1926)、アメリカ。


荒いタッチで光と影を描き分けている。

どこかの庭の隅でもあろうか。光はどんな小さな場所にも届く。

遊ぶことや生きることにつかれた魂は、こんな小さな場所に憩うものだ。

だから画家も心惹かれ、それを描くのである。


陽だまりをちぎる木陰のすみにゐて罪をとはれしわれをいだけり    揺之






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丘の上の午後の光

2018-06-08 03:22:51 | 絵画


ジョン・フランシス・マーフィ(1853-1921)、アメリカ。


単純化された形の中に、丘を照らす光の印象を描こうとしたものだろう。

画家が見た風景の光は美しいものだったのだ。

絵は成功しているとは言えない。だが試みの中にも光は見える。

丘の向こうに見える世界の中に、画家自身の未来があるかのようだ。


かたをかを照らす日影のかすみつつおもひで起こるとほき青空    揺之





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