ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

春日野は

2018-02-28 03:06:22 | 資料

Kasuga Plain:
O, this day burn it not!
Young grass,
My wife is hidden there,
As, too, am I.

春日野はけふはな燒きそわか草のつまもこもれり我もこもれり    よみ人しらず


相変わらず枕詞をそのまま訳してある。

英語ではどのように感じるものか知りたいものだ。

BurnとMy wifeの間をつなげているような気がしないでもない。

それなりの詩的効果はあるのだろう。


若草の妹がためにと野に立ちて花選るわれに鳥はさへづる    揺之






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明日知らぬ我が身と思へど暮れぬ間のけふは人こそ悲しかりけれ

2018-02-27 03:05:55 | 古今抜粋

明日知らぬ我が身と思へど暮れぬ間のけふは人こそ悲しかりけれ    紀貫之


哀傷歌である。紀友則みまかりにけるときによめる、とある。

たんたんとした描写に返って友を悼む心が見える。

美しい心を読むときには、修辞を衒うのは逆効果だ。

ただ内から生まれてくる静かな感情のままに詠めばよい。


ゆくひとのにほひのこりしかたいほのひなたのまどにそよ風ぞ吹く    揺之





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夏、豊かなる牧場

2018-02-26 03:09:32 | 絵画


アルバート・ピンカム・ライダー(1847-1917)、アメリカ。


豊なる牧場というタイトルだが、風景は寂しそうだ。

荒れ地のような風景に、ただ一頭の牛が描かれている。

画面の外にほかの牛がいるのかもしれないが、画家はなぜただ一頭しか描かないのか。

迷いゆく時代のきざしを感じているのか。

それとも、豊かに見えて本当は激しく貧しいこの世界の寂しさを、感じているのか。


あめつちのはてにかすかになりわたる時のうれひを聞くか人の世    揺之





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我が庵は

2018-02-25 03:06:17 | 資料

今日は英訳古今である。

My hut is
South east of the Capital
And so I dwell
In this world of sorrows around Mt Uji
Or so folk say…

我が庵は都の辰巳しかぞ棲む世を宇治山と人はいふなり    喜撰


「憂し」と[宇治」の掛詞は、難しかったようだ。

意味は通るが、英訳ではまた違う印象があるだろう。

翻訳の難しさというものだが、その中に現れる変容に楽しみを見たい。


すみかへて憂きをのがれて宿結びひとり見る世のうはべかなしき    揺之






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くるしみといふあまき玉さぐりつつ夢をなでては見る昼の月

2018-02-24 03:05:38 | 

くるしみといふあまき玉さぐりつつ夢をなでては見る昼の月    揺之






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きさらぎのあはきひかりのにはにゐてかなしみおぼゆ春のおもひで

2018-02-23 03:05:37 | 

きさらぎのあはきひかりのにはにゐてかなしみおぼゆ春のおもひで    揺之






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雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける

2018-02-22 03:05:48 | 古今抜粋

雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける    紀貫之


冬の歌を入れたいと思い、これを出してみた。

雪を花と見るような歌はたくさんあるが、これはかなりよい。

春に知られぬ花というところに、あわい春の夢を見ている。

厳しい冬の中に、雪がかえって春の夢を見させてくれる。

人生で時に味わう厳しいことも、すべてはよきことなのだと、彼は知ったのだろう。


降る雪にとほきおもひでおぼえつついはぬ心の春の夢かな    揺之






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夏長けて

2018-02-21 03:05:45 | 添削

夏長けてわれには生きたと言える時間どれくらいある黄の菜の花    江戸雪


不器用にやるのが常によいのではない。

啄木のような生き方ができるものならばそれも生きるが、発展的な人生を長々と生きている人間には、もっと自分を磨く時間がある。

この逆風のすさぶ世の中で、自分を裏切ることができずに不器用にしかやれなかった人間の真似を、器用に生きることができる者がすると、こういうものができる。


菜の花はすぎてみどりの夏栄えわれはまことをいかに生きしか    揺之





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核弾頭

2018-02-20 03:05:40 | 添削

核弾頭あまた存在する不安を薄めゆく草色のテロリズム    大口玲子


語が句間で分断される歌は好きではない。

ことばのリズムが激しく傷む。

作者が歌の意味を解しているかどうかは不明だが、これは気に入らないものはみんなで殺せという意味になる。

本霊が影響してこうなったのだろうが、作歌自体はほかの霊がやっているとみる。


億人を殺す巨神の男根の狼藉許す草の根の民    揺之






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かはきゆく

2018-02-19 03:05:40 | 添削

かはきゆくみづのかたちを見てゐれば敷石の上ひかりうしなふ    澤村斉美


「川」は「かは」だが、「乾く」は「かわく」である。

初歩的な間違いをしている作を、だれも指摘することなく、評論家が堂々と佳作としてあげている。

これは非常におかしい。


かはぞこの玉をひろひてかわきゆく色を知りつつあをぞらにつく    揺之






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