あはざりしことの悔いをぞせおひつつけふゆく道の重き足かな

あはざりしことの悔いをぞせおひつつけふゆく道の重き足かな　　　　揺之

三日月のおのれのかげをすくひつつゆふぞらに澄むかなしかりけり

三日月のおのれのかげをすくひつつゆふぞらに澄むかなしかりけり　　　　揺之

ふたたびのあふせをこひて君のめのふかきうれひをとひにけるかな

ふたたびのあふせをこひて君のめのふかきうれひをとひにけるかな　　　　揺之

空蝉の身を切るほどの風にむかひひとり山路を越えにけるかな

空蝉の身を切るほどの風にむかひひとり山路を越えにけるかな　　　　揺之

冬さうび雨に打たれてくれなゐの色をたへつつかすかにふるふ

冬さうび雨に打たれてくれなゐの色をたへつつかすかにふるふ　　　　揺之

冬はきて林檎ひとつを口に寄せとほき君思ふ窓辺の光

冬はきて林檎ひとつを口に寄せとほき君思ふ窓辺の光　　　　揺之

信ずれどかたなしといふ君の手をとらむとはしてゆく聖夜かな

信ずれどかたなしといふ君の手をとらむとはしてゆく聖夜かな　　　　揺之

のぞみなきこひとしりつつ花を買ひひとりあふぎしイヴの雪空

のぞみなきこひとしりつつ花を買ひひとりあふぎしイヴの雪空　　　　揺之

おもへどもかひなきこひをあはれみてとけてきえよと雪をなげつる

おもへどもかひなきこひをあはれみてとけてきえよと雪をなげつる　　　　揺之

窓に寄る君のゑまひをとひぬればむかしのことは忘れぬといふ

窓に寄る君のゑまひをとひぬればむかしのことは忘れぬといふ　　　　揺之