これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

キーはキーでも

2020年10月04日 20時36分16秒 | エッセイ
 ピアノを習い始めたのは小学3年生だったろうか。リズミカルに鍵盤を叩き、美麗な曲を奏でるピアニストのようになりたくて、母に頼み、家から歩いて5分ほどの教室に通うことになった。
「じゃあ、最初はこの本からね」
 基礎練習ばかりでも、最初は楽しい。キーが指に吸いついてきて、弱く押せば小さな音が、強く押せば大きな音が出る。60分のレッスンがあっという間に終わった。
「また来週の4時に来てください」
「はい」
 問題はこの後である。レッスンは好きだったけれど、家ではろくに練習しなかった。怠け者というより、どのくらい練習するのが普通なのか、わからなかったのだ。30分から1時間は練習したが、毎日ではない。つっかかるところがあっても、飽きたらやめて他のことを始めた。これで上達したら、世の中はピアニストだらけになるだろう。
 星一徹(ほしいってつ)をご存じか。昭和生まれであれば、たいていの方には通じると思う。平成生まれの方には、かつて『巨人の星』という漫画があり、そこに登場するスパルタ親父が星一徹であることをお知らせしたい。もし、私の父が星一徹だったら、ピアニスト養成ギプスなるものを作り出し、過酷な練習を課したに違いない。
 残念ながら、父も母も娘に大きな期待をしていなかったから、何ら干渉されることもなく、短時間で完結するプチ練習が身についてしまった。次第に、ピアノの先生の態度も変わってきたことを思い出す。
「今日はこのページを弾きましょう。こういう風にやります」
 先生がお手本を見せて、私もそれにならう。
「じゃあ、しばらく練習していてください」
 先生はやり方だけ教えて、部屋からいなくなった。同じようなことが何回もあった。今にして思えば、キッチンで夕食の準備をしていたのではないか。ほとんど練習せずに来る生徒には、教える側もやる気にならなかったようだ。
 発表会には2回出たけれど、結局、3年ほどでピアノをやめた。今でも、ジョージ・ウィンストンの「カラーズ/ダンス」などを聴くと、「自分で弾いてみたい」と思うのだから、身の程知らずとしか言いようがない。ピアノは聴くだけにしておこう。


(某美術館で撮影した、スタインウェイ社製の年代物ピアノ)

 他方で、私向きのキーもある。パソコンのキーボードだ。ピアノの練習が奏功したのか、そろばんの経験が生きているのか、入力は速い。キーを見ずに、10本の指を駆使したタッチメソッドで、バカバカ打つことができる。
「うわ、速ッ」
 職場では、こう言われることも多い。
 たくさんエッセイを書いているから、いい練習ができて、速くなったのかも?


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする