毎日新聞 2022年7月27日付記事
「公共交通には公費を 関西大教授に聞く「ローカル鉄道の分岐点」」
https://mainichi.jp/articles/20220727/k00/00m/040/202000c?fbclid=IwAR2071SyhAVmZayUwH944phmSQHVwAAgJs_58Ztb1225Gt_u5DIBWlnWv5c
地方鉄道のあり方を巡る動きが加速しており、
国土交通省の有識者検討会は25日に提言を公表した。
JRに関し、
輸送密度(1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員数)が「1000人未満」などの区間について、
見直しに向けた協議の対象とした。
人口減社会において、地方鉄道はどうあるべきなのか。
国内や欧州の事情に詳しい関西大の宇都宮浄人(きよひと)教授(交通経済学)に聞いた。
【文章執筆:小坂剛志 氏】
(聞き手)――新型コロナウイルス禍でJR各社の経営は悪化しています。
JR西日本は4月、路線維持が困難なローカル線の収支を発表し、地域との話し合いを求めました。
「むしろ、もっと早く議論を始めるべき問題でした。
JR西やJR東日本は大都市圏の収益によってローカル線を維持する
『内部補助』という仕組みを使ってきましたが、
右肩上がりの時代のやり方を維持することは困難になっています。
今回のコロナ禍がきっかけになったのは事実ですが、
国鉄ができたのが1949年、民営化は1987年です。
そこから35年がたっており、時代は大きく変わりました。
時代に合った仕組みを考えなくてはなりません。」
(聞き手)――JR西が公表したのは、輸送密度2000人未満の区間でした。
「2000人未満でも、ピーク時には学生らで混雑している区間は少なくありません。
地方の県庁所在地や第2の都市、それに次ぐ規模の都市を走る路線は、
鉄道の特性を発揮することで公共交通の潜在需要を掘り起こし、
地域活性化につなげられる可能性があります。
一方で、輸送密度が200人に至らない過疎地のローカル線は、
鉄道にこだわるよりも、ほかの方法があるかもしれません。
ただし、鉄道の今後を議論する際にはコストを比較するだけではなく、
地域に住む人の生活の質(QOL)を考えることが重要です。
観光列車として活用する方法もあります。」
(聞き手)――国交省の有識者検討会が示した提言では、輸送密度が1000人未満などの区間について、
国と自治体、鉄道会社が、バスなどへの転換を議論する仕組みの創設を盛り込みました。
「これまでは廃線を警戒し、鉄道会社との協議に応じようとしない自治体もありました。
事態の深刻さを共有し、地域と鉄道会社が一緒に考える場が設けられることは評価できます。
一方で、協議会設置の基準以上なら『民間に丸投げ』でいいということではありません。
鉄道を地域のインフラと考え、地域のために生かしてほしいと考えます。」
(聞き手)――鉄道の特性を生かしたまちづくりを進めている自治体は。
「富山市の次世代型路面電車(LRT)は利便性を向上させることで、乗客数を伸ばしています。
2006年にJR富山港線を第三セクターが引き継ぎ、全国初の本格的なLRTとして開業しました。
前市長が『公共交通には公費を投じる』という方針を掲げ、
市が主体的に路線や運行本数を増やしたことが乗客増加につながっています。
LRTの普及によって高齢者が外出したり、
友人と会ったりする機会が増えたという調査データもあります。」
(聞き手)――どのように公共交通を維持すべきでしょうか。
「欧州は “鉄道はもうからないが、公共サービスとして自治体が支えよう” という考え方です。
線路などの維持管理は自治体が担い、運行を民間が担う『上下分離』を採用しているケースが多いのですが、
これは『運行を担う民間の力を活用する』という意味合いが強いのです。
日本では上下分離を進める際に
『経営が厳しくなってきたから、やむを得ず自治体が助ける』という姿勢になってはいけません。
そうなるとコスト削減ばかりが検討され、利益が出ないから列車の本数を減らし、
サービスが悪くなったら利用者が減るという悪循環に陥ります。
これを断ち切らなくてはなりません。
滋賀県では、鉄道事業の単独継続が困難になった近江鉄道が2024年に上下分離されますが、
公共交通を公的に支えるための『交通税』の検討が始まっています。
公共交通は社会のインフラであり、
地域で支えるという考え方は正論だと思います。
地方のバス路線の維持は、特別交付税の対象になっています。
地方自治体は鉄道に対しても交付税措置を国に求めるべきではないでしょうか。」
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やはり宇都宮浄人教授の提言は間違っていませんね。
さらに、自分なりの考えも述べたいと思います。
欧州の "鉄道はもうからないが、公共サービスとして自治体が支えよう" という考え方。
運行を担う民間の力を活用する "上下分離"。
国土交通省に欠けている視点はまさにそれであり、
同時に今までの「整備新幹線&高速道路優先」できた同省の方針も転換すべき時が来た、と自分は思います。
現在まで高速道路は山奥の観光地にまで開通するようになりましたが、
「片側1車線」の路線を走って思ったのは法定速度で走っていると
"高速道路=時速100㎞"という固定観念のドライバーから速く走れと背突かれて、
それがかえって事故の原因になるという事であり、
今後は高速道路も採算性を鑑み、「片側1車線」運用を前提の路線の工事や計画は白紙化すべきだと思いますし、
現在「無料路線」も今後は有料化すべきでしょう。
また、新幹線も東京~福岡間の鉄道vs航空路の利用率が「10:90」の現状を考えても、
東京~札幌間も伸び悩む旅客のために所要時間4時間半に血眼になるよりも
運行形態を「新青森」で完全分断して、
青函トンネルは新幹線と在来線路線をそれぞれ単線化して運行し、
五稜郭~東室蘭間の電化など、物流の強化とスピードアップに尽力されるべきでしょう。
そして在来線ですが、今までの「路線別輸送密度」だけを存廃のハカリにするのでなく、
地方都市間の路線は宅配便会社をクライアントに迎えて「貨客混載速達ライナー列車」を共同運行する事で
「所要時間の短縮」と「観光・ビジネス目的の乗客の活性化」を目指すべきであり、
その一環として旭川~帯広間・山形~酒田間・広島~松江間等にもその列車を走らせる意味が充分にあり得ます。
また札幌圏以外のJR北海道路線の駅舎と駅前の寂れぶりは「鉄道法」などが束縛の面も考えられるので、
地域コミュニティや鉄道利用者の活性化と利便性向上のためにも
「上下分離方式」を前提化してカフェやイートインコーナー付コンビニエンスストア・書店・図書館など
「商業施設の出店自由化」を目指すべきかと思います。
そして、今後も大震災時の復旧やモーダルシフトの観点や物流のためにも、
臨時便を含む貨物列車の営業路線・運行可能路線は
大人料金の鉄道利用者から「最低1回10円、1,000円以上は1%」を前提として
「徴収基金化」して維持強化する発想があってもいいのではないでしょうか。
鉄道利用者の激減は決して鉄道の役割が終わったわけでなく、
国土交通省の「道路整備の最優先」の結果だとも思われます。
また、人間は必ず老いるものであり、マイカーを降りなければならない時が来ます。
その時に公共交通が寂れてしまっては
かえって人は大都会しか頼らざるを得なくなってしまいますし、
運転免許証のない観光客は鉄道がなければ行動範囲が大幅に制限されて、
観光業も伸び悩む事でしょう。
今後も地方の鉄道が元気でありますよう、国土交通省や都道府県・鉄道会社の英知を
求めたいと思います。
「公共交通には公費を 関西大教授に聞く「ローカル鉄道の分岐点」」
https://mainichi.jp/articles/20220727/k00/00m/040/202000c?fbclid=IwAR2071SyhAVmZayUwH944phmSQHVwAAgJs_58Ztb1225Gt_u5DIBWlnWv5c
地方鉄道のあり方を巡る動きが加速しており、
国土交通省の有識者検討会は25日に提言を公表した。
JRに関し、
輸送密度(1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員数)が「1000人未満」などの区間について、
見直しに向けた協議の対象とした。
人口減社会において、地方鉄道はどうあるべきなのか。
国内や欧州の事情に詳しい関西大の宇都宮浄人(きよひと)教授(交通経済学)に聞いた。
【文章執筆:小坂剛志 氏】
(聞き手)――新型コロナウイルス禍でJR各社の経営は悪化しています。
JR西日本は4月、路線維持が困難なローカル線の収支を発表し、地域との話し合いを求めました。
「むしろ、もっと早く議論を始めるべき問題でした。
JR西やJR東日本は大都市圏の収益によってローカル線を維持する
『内部補助』という仕組みを使ってきましたが、
右肩上がりの時代のやり方を維持することは困難になっています。
今回のコロナ禍がきっかけになったのは事実ですが、
国鉄ができたのが1949年、民営化は1987年です。
そこから35年がたっており、時代は大きく変わりました。
時代に合った仕組みを考えなくてはなりません。」
(聞き手)――JR西が公表したのは、輸送密度2000人未満の区間でした。
「2000人未満でも、ピーク時には学生らで混雑している区間は少なくありません。
地方の県庁所在地や第2の都市、それに次ぐ規模の都市を走る路線は、
鉄道の特性を発揮することで公共交通の潜在需要を掘り起こし、
地域活性化につなげられる可能性があります。
一方で、輸送密度が200人に至らない過疎地のローカル線は、
鉄道にこだわるよりも、ほかの方法があるかもしれません。
ただし、鉄道の今後を議論する際にはコストを比較するだけではなく、
地域に住む人の生活の質(QOL)を考えることが重要です。
観光列車として活用する方法もあります。」
(聞き手)――国交省の有識者検討会が示した提言では、輸送密度が1000人未満などの区間について、
国と自治体、鉄道会社が、バスなどへの転換を議論する仕組みの創設を盛り込みました。
「これまでは廃線を警戒し、鉄道会社との協議に応じようとしない自治体もありました。
事態の深刻さを共有し、地域と鉄道会社が一緒に考える場が設けられることは評価できます。
一方で、協議会設置の基準以上なら『民間に丸投げ』でいいということではありません。
鉄道を地域のインフラと考え、地域のために生かしてほしいと考えます。」
(聞き手)――鉄道の特性を生かしたまちづくりを進めている自治体は。
「富山市の次世代型路面電車(LRT)は利便性を向上させることで、乗客数を伸ばしています。
2006年にJR富山港線を第三セクターが引き継ぎ、全国初の本格的なLRTとして開業しました。
前市長が『公共交通には公費を投じる』という方針を掲げ、
市が主体的に路線や運行本数を増やしたことが乗客増加につながっています。
LRTの普及によって高齢者が外出したり、
友人と会ったりする機会が増えたという調査データもあります。」
(聞き手)――どのように公共交通を維持すべきでしょうか。
「欧州は “鉄道はもうからないが、公共サービスとして自治体が支えよう” という考え方です。
線路などの維持管理は自治体が担い、運行を民間が担う『上下分離』を採用しているケースが多いのですが、
これは『運行を担う民間の力を活用する』という意味合いが強いのです。
日本では上下分離を進める際に
『経営が厳しくなってきたから、やむを得ず自治体が助ける』という姿勢になってはいけません。
そうなるとコスト削減ばかりが検討され、利益が出ないから列車の本数を減らし、
サービスが悪くなったら利用者が減るという悪循環に陥ります。
これを断ち切らなくてはなりません。
滋賀県では、鉄道事業の単独継続が困難になった近江鉄道が2024年に上下分離されますが、
公共交通を公的に支えるための『交通税』の検討が始まっています。
公共交通は社会のインフラであり、
地域で支えるという考え方は正論だと思います。
地方のバス路線の維持は、特別交付税の対象になっています。
地方自治体は鉄道に対しても交付税措置を国に求めるべきではないでしょうか。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------
やはり宇都宮浄人教授の提言は間違っていませんね。
さらに、自分なりの考えも述べたいと思います。
欧州の "鉄道はもうからないが、公共サービスとして自治体が支えよう" という考え方。
運行を担う民間の力を活用する "上下分離"。
国土交通省に欠けている視点はまさにそれであり、
同時に今までの「整備新幹線&高速道路優先」できた同省の方針も転換すべき時が来た、と自分は思います。
現在まで高速道路は山奥の観光地にまで開通するようになりましたが、
「片側1車線」の路線を走って思ったのは法定速度で走っていると
"高速道路=時速100㎞"という固定観念のドライバーから速く走れと背突かれて、
それがかえって事故の原因になるという事であり、
今後は高速道路も採算性を鑑み、「片側1車線」運用を前提の路線の工事や計画は白紙化すべきだと思いますし、
現在「無料路線」も今後は有料化すべきでしょう。
また、新幹線も東京~福岡間の鉄道vs航空路の利用率が「10:90」の現状を考えても、
東京~札幌間も伸び悩む旅客のために所要時間4時間半に血眼になるよりも
運行形態を「新青森」で完全分断して、
青函トンネルは新幹線と在来線路線をそれぞれ単線化して運行し、
五稜郭~東室蘭間の電化など、物流の強化とスピードアップに尽力されるべきでしょう。
そして在来線ですが、今までの「路線別輸送密度」だけを存廃のハカリにするのでなく、
地方都市間の路線は宅配便会社をクライアントに迎えて「貨客混載速達ライナー列車」を共同運行する事で
「所要時間の短縮」と「観光・ビジネス目的の乗客の活性化」を目指すべきであり、
その一環として旭川~帯広間・山形~酒田間・広島~松江間等にもその列車を走らせる意味が充分にあり得ます。
また札幌圏以外のJR北海道路線の駅舎と駅前の寂れぶりは「鉄道法」などが束縛の面も考えられるので、
地域コミュニティや鉄道利用者の活性化と利便性向上のためにも
「上下分離方式」を前提化してカフェやイートインコーナー付コンビニエンスストア・書店・図書館など
「商業施設の出店自由化」を目指すべきかと思います。
そして、今後も大震災時の復旧やモーダルシフトの観点や物流のためにも、
臨時便を含む貨物列車の営業路線・運行可能路線は
大人料金の鉄道利用者から「最低1回10円、1,000円以上は1%」を前提として
「徴収基金化」して維持強化する発想があってもいいのではないでしょうか。
鉄道利用者の激減は決して鉄道の役割が終わったわけでなく、
国土交通省の「道路整備の最優先」の結果だとも思われます。
また、人間は必ず老いるものであり、マイカーを降りなければならない時が来ます。
その時に公共交通が寂れてしまっては
かえって人は大都会しか頼らざるを得なくなってしまいますし、
運転免許証のない観光客は鉄道がなければ行動範囲が大幅に制限されて、
観光業も伸び悩む事でしょう。
今後も地方の鉄道が元気でありますよう、国土交通省や都道府県・鉄道会社の英知を
求めたいと思います。