高齢化社会だからこそ、気を付けておきたい事がある。
日本経済新聞 2021年5月8日付記事
「バス・タクシー運転手、体調急変で死傷事故急増」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG072YV0X00C21A3000000/?unlock=1
バスやタクシーの運転手の高齢化を背景に、運転中の体調急変に伴う事故が急増している。
2019年の統計で運転者の疾病が原因で運転を取りやめたケースは6年間で2.4倍に増えた。
国土交通省は4月、事業者側に従業員の健康管理を徹底させる仕組みを導入したが、
運転手が体調不良を自己申告しやすい環境づくりも不可欠だ。
今年1月、東京都渋谷区の横断歩道でタクシーが歩行者をはね、
1人が死亡、5人が重軽傷を負った。
警視庁によると、タクシーの男性運転手(73)が事故の直前にうつむき、
意識が混濁している様子がドライブレコーダーに映っていた。
くも膜下出血を起こしたとみられ、事故後に入院したが3月に死亡した。
国交省によると、
運転者の疾病が原因でバスやタクシーなどの運転を続けられなくなった事案は2019年の統計で327件で、
2013年(135件)の2.4倍に増えた。
うち23件は死傷者が出る事故で、2013年(12件)からほぼ倍増した。
背景には運転手の高齢化がある。
全国ハイヤー・タクシー連合会(東京)によると、
タクシー運転手の平均年齢は男性で60.0歳。
全産業(同43.8歳)や営業用バス(同50.8歳)と比べ高齢化が進む。
2020年3月末時点で全国のタクシー運転手約28万人の46%を65歳以上が占める。
同連合会の担当者は「安定して稼ぎたい高齢ドライバーの受け皿になっている」という。
国交省は事業者側に従業員の健康管理を徹底させる対策を強化した。
2021年4月、健康診断を受けていない運転手が病気で重大な人身事故を起こした場合、
車両を延べ40日間使用停止にする行政処分を新たに設けた。
ただ体調急変リスクを事前に把握することは難しい。
同省によると、過去7年間で健康起因事故を起こした運転手1891人のうち、
約3割が心筋梗塞などの心疾患やくも膜下出血などの「脳疾患」で、事前に兆候をつかむのが難しいケースも目立つ。
渋谷区で事故を起こした運転手も直近の健康診断で大きな病気は確認されず、
乗務前も体調に異変はみられなかった。
期待されるのは先進技術だ。
運転手の体調が急変した際に、乗客がボタンを押したり、異常を自動検知したりすることで車両を停止する
「ドライバー異常時対応システム」は2018~2019年に日野自動車が実用化。
商用車として初めて観光バスに装備した。
国交省によると、搭載の大型車は2019年に約2880台製造され、
2018年と比べて5.5倍に伸びた。
運転手の健康増進を支援するサービスもある。
SOMPOリスクマネジメント(東京・新宿)は運転手の疲労や睡眠状態を示すバイタルデータを蓄積・分析し、
生活習慣の改善や運行管理に関して助言するサービスを事業者に提供している。
ただ、こうした仕組みも「切り札」にはならず、
事業者側には運転手が体調不良を申告しやすい環境づくりへの配慮も欠かせない。
2018年10月に横浜市で7人が死傷したバス衝突事故では、運転手は勤務時間外に複数回意識を失った経験があったが、
会社に申告はなかった。
事故当日も体調異変に気づいた後も運転を続け、運転中に意識を失った。
運転手には健康状態の報告義務があるが、
仕事を減らされたり不採用になったりすることを恐れて正直に言いにくい場合がある。
関西大の安部誠治教授(交通政策論)は
「事業者は先進技術の導入や運転手の安全教育に加え、
運転手が健康状態や勤務状況を相談しやすい環境をつくる必要がある」 と指摘。
事故の重大性を周知したうえで
「事業者側は『勤務体制を一緒に考えましょう』といった姿勢を示すべきだ」 と話している。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
運転においてもっとも重要なのは、「集中力」ではないだろうか。
例えば、レコードやCDを「休憩なしに何もせず」に
どれくらい聴き続けられるだろうか。
レコード(アナログ盤)の収録時間は、おおよそ18分から23分くらい。
片面聴いてこのくらいで裏面にひっくり返して、次を聴く前に用を足したりするのが
丁度いい筈だ。
片やCDは最大80分まで収録が可能になった。
これを何もせずに聴き続けられるだろうか。
おおかたの方は、たぶんできないのではないか。
新聞読んだり別のネットを見たりしてでないと手持ち無沙汰になるのではないか。
やっぱり集中力には限界がある。
で、それは時代の変化によって、かなり短くなったのではないかと思う。
別のメディアで読んだが、最近はネットの普及で
映画1本を観続けることさえ出来なくなった人が増えた、と聞く。
一つの事に集中するからには、何かの情報や視点をシャットアウトしないと続かないものだ。
安全運転をするからには四方八方の視点と耳からの情報がないとならない。
おのずから一定の時間で休憩が不可欠になる。
例えば、歩行者や二輪車がいない高速道路でも、集中力はせいぜい2時間しか持たないし、
歩行者や二輪車の存在、右折左折のタイミングを見極めなければならない一般公道ならその半分だろうか。
しかし、都内などの道は障害の数はべらぼうに多く、休憩できる場所は極めて限られる。
しかも、勤務時間には治安の悪い深夜帯も不可欠だ。
自分には絶対に無理だ。
だが、この業界で働く人のほとんどの理由は、
「年齢面でほかに選択肢がない」からじゃないから、だろうか。
「年金だけでは生きて行けない」というのもうなずけるが。
こういう事故が起こるたびに、常々思う。
人を乗せる公共交通や公的建造物のための「インフラ運転手」やハードワークこそ
高待遇で若手を採用して育てることが大事で、
人間ができてカスタマーサポートができる中高年の人こそ
営業やコールセンター業務に採用すべきだと。
身体の機能が衰えた人をライン業務やドライバーに配置するほうが、どれだけリスクが高いか。
営業やオフィスワークで若手ばかり採用して、
管理職の自分より高齢の人間に関わりたくない、と思うのは
それはズバリ、ただの「エゴ」だと思います。
別に中高年すべてが高給を欲しているわけでもあるまいに。
要は「適材適所」の発想が、
まだまだ日本社会には不足しているし、
海外では年齢で差別をすることが「禁止項目」だという事を
知らない経営者&リーダーがまだまだ多いのだ。
誰だって苦しい仕事は嫌だ。
24時間拘束の警備員や
入居者の容態が急変しやすい深夜帯を含む
夕方から翌朝10時くらいまでの「夜勤介護職員」の時間帯と待遇が変わらないと
新規従業員は定着しない。
それから、地方は個人店舗の「駅前商店街」が廃れ、
大規模なショッピングセンターがやたらと増えた。
そのためマイカーによるお客と渋滞が増え、公共の路線バスの定時運行が出来なくなり、
利用者が減ってゆく。
バスの便が削減・廃止されるなど不便になり、
よけいにマイカーが増えて渋滞も伸びてゆく。
高齢者が免許とマイカーを手放せないのは、これが最大の原因だ。
徒歩圏に商店街があれば、この依存症は違うだろう。
もっと変われ、日本社会。
日本経済新聞 2021年5月8日付記事
「バス・タクシー運転手、体調急変で死傷事故急増」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG072YV0X00C21A3000000/?unlock=1
バスやタクシーの運転手の高齢化を背景に、運転中の体調急変に伴う事故が急増している。
2019年の統計で運転者の疾病が原因で運転を取りやめたケースは6年間で2.4倍に増えた。
国土交通省は4月、事業者側に従業員の健康管理を徹底させる仕組みを導入したが、
運転手が体調不良を自己申告しやすい環境づくりも不可欠だ。
今年1月、東京都渋谷区の横断歩道でタクシーが歩行者をはね、
1人が死亡、5人が重軽傷を負った。
警視庁によると、タクシーの男性運転手(73)が事故の直前にうつむき、
意識が混濁している様子がドライブレコーダーに映っていた。
くも膜下出血を起こしたとみられ、事故後に入院したが3月に死亡した。
国交省によると、
運転者の疾病が原因でバスやタクシーなどの運転を続けられなくなった事案は2019年の統計で327件で、
2013年(135件)の2.4倍に増えた。
うち23件は死傷者が出る事故で、2013年(12件)からほぼ倍増した。
背景には運転手の高齢化がある。
全国ハイヤー・タクシー連合会(東京)によると、
タクシー運転手の平均年齢は男性で60.0歳。
全産業(同43.8歳)や営業用バス(同50.8歳)と比べ高齢化が進む。
2020年3月末時点で全国のタクシー運転手約28万人の46%を65歳以上が占める。
同連合会の担当者は「安定して稼ぎたい高齢ドライバーの受け皿になっている」という。
国交省は事業者側に従業員の健康管理を徹底させる対策を強化した。
2021年4月、健康診断を受けていない運転手が病気で重大な人身事故を起こした場合、
車両を延べ40日間使用停止にする行政処分を新たに設けた。
ただ体調急変リスクを事前に把握することは難しい。
同省によると、過去7年間で健康起因事故を起こした運転手1891人のうち、
約3割が心筋梗塞などの心疾患やくも膜下出血などの「脳疾患」で、事前に兆候をつかむのが難しいケースも目立つ。
渋谷区で事故を起こした運転手も直近の健康診断で大きな病気は確認されず、
乗務前も体調に異変はみられなかった。
期待されるのは先進技術だ。
運転手の体調が急変した際に、乗客がボタンを押したり、異常を自動検知したりすることで車両を停止する
「ドライバー異常時対応システム」は2018~2019年に日野自動車が実用化。
商用車として初めて観光バスに装備した。
国交省によると、搭載の大型車は2019年に約2880台製造され、
2018年と比べて5.5倍に伸びた。
運転手の健康増進を支援するサービスもある。
SOMPOリスクマネジメント(東京・新宿)は運転手の疲労や睡眠状態を示すバイタルデータを蓄積・分析し、
生活習慣の改善や運行管理に関して助言するサービスを事業者に提供している。
ただ、こうした仕組みも「切り札」にはならず、
事業者側には運転手が体調不良を申告しやすい環境づくりへの配慮も欠かせない。
2018年10月に横浜市で7人が死傷したバス衝突事故では、運転手は勤務時間外に複数回意識を失った経験があったが、
会社に申告はなかった。
事故当日も体調異変に気づいた後も運転を続け、運転中に意識を失った。
運転手には健康状態の報告義務があるが、
仕事を減らされたり不採用になったりすることを恐れて正直に言いにくい場合がある。
関西大の安部誠治教授(交通政策論)は
「事業者は先進技術の導入や運転手の安全教育に加え、
運転手が健康状態や勤務状況を相談しやすい環境をつくる必要がある」 と指摘。
事故の重大性を周知したうえで
「事業者側は『勤務体制を一緒に考えましょう』といった姿勢を示すべきだ」 と話している。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
運転においてもっとも重要なのは、「集中力」ではないだろうか。
例えば、レコードやCDを「休憩なしに何もせず」に
どれくらい聴き続けられるだろうか。
レコード(アナログ盤)の収録時間は、おおよそ18分から23分くらい。
片面聴いてこのくらいで裏面にひっくり返して、次を聴く前に用を足したりするのが
丁度いい筈だ。
片やCDは最大80分まで収録が可能になった。
これを何もせずに聴き続けられるだろうか。
おおかたの方は、たぶんできないのではないか。
新聞読んだり別のネットを見たりしてでないと手持ち無沙汰になるのではないか。
やっぱり集中力には限界がある。
で、それは時代の変化によって、かなり短くなったのではないかと思う。
別のメディアで読んだが、最近はネットの普及で
映画1本を観続けることさえ出来なくなった人が増えた、と聞く。
一つの事に集中するからには、何かの情報や視点をシャットアウトしないと続かないものだ。
安全運転をするからには四方八方の視点と耳からの情報がないとならない。
おのずから一定の時間で休憩が不可欠になる。
例えば、歩行者や二輪車がいない高速道路でも、集中力はせいぜい2時間しか持たないし、
歩行者や二輪車の存在、右折左折のタイミングを見極めなければならない一般公道ならその半分だろうか。
しかし、都内などの道は障害の数はべらぼうに多く、休憩できる場所は極めて限られる。
しかも、勤務時間には治安の悪い深夜帯も不可欠だ。
自分には絶対に無理だ。
だが、この業界で働く人のほとんどの理由は、
「年齢面でほかに選択肢がない」からじゃないから、だろうか。
「年金だけでは生きて行けない」というのもうなずけるが。
こういう事故が起こるたびに、常々思う。
人を乗せる公共交通や公的建造物のための「インフラ運転手」やハードワークこそ
高待遇で若手を採用して育てることが大事で、
人間ができてカスタマーサポートができる中高年の人こそ
営業やコールセンター業務に採用すべきだと。
身体の機能が衰えた人をライン業務やドライバーに配置するほうが、どれだけリスクが高いか。
営業やオフィスワークで若手ばかり採用して、
管理職の自分より高齢の人間に関わりたくない、と思うのは
それはズバリ、ただの「エゴ」だと思います。
別に中高年すべてが高給を欲しているわけでもあるまいに。
要は「適材適所」の発想が、
まだまだ日本社会には不足しているし、
海外では年齢で差別をすることが「禁止項目」だという事を
知らない経営者&リーダーがまだまだ多いのだ。
誰だって苦しい仕事は嫌だ。
24時間拘束の警備員や
入居者の容態が急変しやすい深夜帯を含む
夕方から翌朝10時くらいまでの「夜勤介護職員」の時間帯と待遇が変わらないと
新規従業員は定着しない。
それから、地方は個人店舗の「駅前商店街」が廃れ、
大規模なショッピングセンターがやたらと増えた。
そのためマイカーによるお客と渋滞が増え、公共の路線バスの定時運行が出来なくなり、
利用者が減ってゆく。
バスの便が削減・廃止されるなど不便になり、
よけいにマイカーが増えて渋滞も伸びてゆく。
高齢者が免許とマイカーを手放せないのは、これが最大の原因だ。
徒歩圏に商店街があれば、この依存症は違うだろう。
もっと変われ、日本社会。