shining's ブログ 「音楽と旅と珈琲と」

音楽大好き男の徒然なる日記

東洋経済オンライン 「広島県知事が主張『国はJRのあり方を議論すべき』 赤字線区の収支だけ公開しても意味がない」

2022-10-05 | 鉄道
東洋経済新報社 2022年9月20日付記事
「広島県知事が主張 『国はJRのあり方を議論すべき』 ~赤字線区の収支だけ公開しても意味がない」
  https://toyokeizai.net/articles/-/617648



JR西日本の赤字ローカル線30線区の収支状況の発表に端を発し、
全国に危機感が広がっているローカル線の存続問題。

広島県では芸備線や福塩線の一部区間や木次線が対象となり、
しかし、広島県は鉄道路線維持の立場を表明。
湯崎英彦知事は、鳥取県の平井伸治知事らとともに28道府県知事の連名で
斉藤鉄夫国土交通大臣あてに鉄道を「ユニバーサルサービス」として位置づけることなどを求めて
「未来につながる鉄道ネットワークを創造する緊急提言」を行った。


広島県はなぜ輸送密度が極端に低い芸備線の末端区間も含めて鉄道路線維持の立場を取るのか、
話を聞いた。

「湯崎英彦(ゆざき・ひでひこ)」
●1965年生まれ。
東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省し、
国費留学でスタンフォード大学経営大学院(MBA)修了。
会社役員などを経て、
2009年に広島県知事選初当選。
現在4期目。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

 「芸備線の山間部は末端区間ではない」
――なぜ芸備線全線での鉄道としての存続をうったえているのですか。

湯崎知事芸備線は、地方創生や街づくりの点からも重要な交通ネットワークであると考えている。
 芸備線があることが観光の目的となって来訪利用する方がいることや、
 災害時における迂回ルートの確保等という点からも必要な路線である。

 利用者が少なかったとしても地域での生活を営むために
 そこにある公共交通機関に依存せざるをえない人は必ずいる。
 例えば通学や通勤、通院で利用している人がおり、
 鉄道網を維持することは交通弱者を支えるうえでも重要であると考えている。


 また、注目されている芸備線の山間部の区間については
 「末端区間」という意識は持っていない。
 広島駅を起点とするならば終点の備中神代駅では伯備線に接続しており、
 岡山県や鳥取・島根県側に抜けることができることから
 重要な「鉄道ネットワーク」の一部を形成していると考えている。
 鉄道はいったん廃止されてしまうと簡単には復活できないことから、
 鉄道をなくす議論については慎重に行うべきだ。


――広島県では可部線が廃線から復活しました。

湯崎知事「可部線の末端区間である可部~三段峡間46.2kmが廃止されたのは2003年のことで、
 1998年に前年の輸送密度が492人であったことから、
 JR西日本から沿線自治体で構成される「可部線対策協議会」に対してバス転換の申し入れがあり、
 その後、利用促進、第3セクター化の検討を行ったが、結果として廃止されることになった。

 廃止された可部~河戸間1.3kmの区間については、市街地の中にあることから
 鉄道としての復活を望む声が大きく、2017年に可部~あき亀山間1.6kmを復活開業させることになるが、
 短い区間であっても復活には相当な労力を要した。


――三江線のケースで感じた課題などはありますか。

湯崎知事「鉄道が廃止となってしまった場合の代替交通については、
 路線バスであれデマンド型交通であれ、
 地元自治体が補助金を出しながら地元の交通事業者で運営を行うことになる。
 JR西日本から自治体に対しての支援金もあったが、
 鉄道の代替交通をそんなに長く支えられる金額でもない。

 鉄道の存廃問題が表面化する地域は、県内でも人口減少が進んでいる
 中山間地域で財政力も脆弱な自治体が多い。
 そうした自治体が地方交通の維持のために補助金を出し続けることは、
 今の仕組みでは厳しい。


――現在の制度についてはどう考えますか。

湯崎知事「鉄道事業法では、事業者が届け出をすれば1年で鉄道路線を廃止できる。
 各地域で鉄道の活性化の取り組みを行っている中で、
 JRが “鉄道をやめたい” と言ったら
 地元が抵抗できずに廃止される、という仕組みは適切ではない。

 鉄道路線の廃止は地域に与える影響が大きいことから、
 その判断は多面的な評価により行われるべきで、
 そのためには地元も国も関わって考えられるような「プロセス」を経ることが必要だ。



 「市場原理になじまないものもある」
――知事は経営学修士(MBA)を取得し、
市場経済についての見識も深いと思います。
市場原理に基づけば、JR西日本は経営資源を都市部に集中させて
利潤を追求するほうが効率的です。


湯崎知事「そもそもの前提として、
 JRグループは “市場原理“ に基づいて経営がされている会社ではない。
 ローカル線の維持については内部補助を前提としており、
 運賃・料金の設定についても国による規制が入っていることから、
 一般的な民間企業とは性格の異なる会社である。


 ビジネスを考えるうえで、
 もちろん市場(マーケット)を考えることは大切であるし、
 市場の力に勝つこともできない。
 しかし、市場になじむものとなじまないものをしっかりと見極めたうえで、
 市場の力をうまく使っていくことが大切であると考えている。

 特に、防衛や福祉については市場になじまない「公共的な性格」の強いものであるが、
 鉄道についても地域住民の日常生活を支える重要な基盤であることから、
 公共的な性格の強いものであると認識している。


 そもそも、国鉄改革によって誕生したJRグループは、
 不採算路線も含めて維持ができるように「制度設計」されたものである。
 そうしたスキームが維持できなくなった以上は、
 国も政策の根幹として鉄道をどうするべきかの考え方を示すべきであり、
 新たな枠組みを作らなくてはいけない。


 JR西日本については、会社が安定した収益を確保できることを担保として、
 内部補助によって全路線の維持を図ることを前提に発足した会社である。
 しかしその一方で、株式の上場により同時に株主利益の追求も行わなくてはならないという
 相反する役割を背負わされている。

 鉄道というインフラについては、その地域にとって自然独占的な性格のあるもので、
 同じ地域に何本もの線路が通っているわけではない。
 こういう話をすると、関西ではJRも阪急も阪神も
  “大阪~神戸間” で競合をしているではないかという指摘を受けるが、
 阪急沿線に住む人がわざわざ阪神に乗ることは少なく、
 客層の住み分けができていることから
 狭い範囲の地域であっても、鉄道が「自然独占的」な性格があることに変わりはない。

 電力自由化にしても、自由化を行い市場競争を導入する部分は小売りの部分であって、
 送電の部分に関しては市場原理で競争をしようという話にはならない。
 通信業界においても同じようなことが言える。



 「JR会社法に強制力はない」
――通信業界においてもNTT東西では自然独占的な性格のある光回線を活用して、
小売業者に対する卸売サービスを行っており、
光回線インフラを活用して、民間事業者が市場競争のもとで多様なサービスを展開できる環境が整っています。

湯崎知事「電力会社では電気事業法、通信会社では電気通信事業法という
 法律の枠組みがしっかり整備されており、
 業界内において「公正な競争の促進」
 「円滑なサービスの提供」
 「利用者の利益を保護」するための仕組みが整っている。
 鉄道もそうしたインフラに近似する性格を持つが、
 JRグループについては、「JR会社法」という法律はあるものの
 こういった枠組みの整備は十分ではない。


 「JR会社法」については、
 すでに株式上場を果たした本州3社とJR九州は「JR会社法」の改正により適用除外となっているものの、
 同法の附則によって国交大臣は上場会社を含めたJR7社のすべてに対して
 「利用者の利便の確保」
 「適切な利用条件の維持」
 「地域経済や社会の健全な発展の基盤の確保」のために
 事業経営に対して勧告や命令を発することもできることにはなっている。

 しかし強制力はない。」

――携帯電話でもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社により、
市場競争で切磋琢磨をしているように感じます。
一方のJRグループは地域ごとに独占的な事業エリアを与えられている点は
通信業界とは異なります。

湯崎知事「鉄道も公共性が高いものであるので、
 競争の枠組みをどこまでどういう風にやるのかという考え方を作る必要がある。
 鉄道業界の「競争の枠組みのあり方」そのものを問うような話をする人は、今までいなかった。」



――地方創生とローカル線のあり方についてはどのように考えますか。

湯崎知事地方創生は住民の基本的なニーズを満たすことをベースに、
 地域をどう維持発展させていくのかということになる。
 もちろん、公共交通についても持続可能性も含めて
 どのように確保していくのかが重要だ。
 JRの鉄道路線があって一定の役割を担っている地域については、
 すでにある鉄道路線を生かすことを考えるほうが持続可能性が高い。
 あえて持続可能性の低いものにモード転換する必要はない。


――国鉄改革時に第3セクター鉄道に移管した路線のほうが、
同程度の輸送密度のJR路線と比較して赤字額が少なく、乗客の減り幅が少ないという指摘があります。

湯崎知事「JRが運営することで持続可能性がないのであればやめたほうがよいのかもしれないが、
 それが本当なのかしっかり検証をするべきではないか。」


 「赤字路線の収支だけ開示しても意味がない」
――JR西日本の赤字30線区の収支状況の公開についてはどのように考えますか。

湯崎知事JR西日本の赤字30線区の合計額は約250億円であるが、
 一部の赤字路線の数字だけを開示しても意味がない。

 コロナ前の2020年3月期決算では鉄道事業を中核とする運輸部門では「1053億円の営業利益」を計上しており、
 内部補助も含めてローカル線の維持を本当にやれないのかという点については、議論の余地はあるのではないか。」


――今後の国に対してのアクションはどのように行いますか。

湯崎知事「国土交通省の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」では、
 ある程度地域の要望はくんでいただいているとは感じている。
 一方で、JRグループのあり方については議論されていないので、
 引き続き、要望、問題提起を続けていく。」


-------------------------------------------------------------------------------------------------

たいへん力強いお言葉だ。

湯崎広島県知事の「地元地域への高い愛情度」に比べると、
東京もんで、市場原理だけでオリンピック・整備新幹線ばかりあおって
地元在来線は「自社維持困難、うち5路線はバス転換一択」で思考停止に陥ってる
高橋はるみ前知事と鈴木直道現北海道知事の「無責任」な態度は
「雲泥の差」と言っても良いだろう。

高橋はるみも鈴木直道にとっての北海道は、
所詮は東京と繋がってる「札幌圏だけ新幹線だけ」じゃないのか。

高橋はるみがそうだったように、
鈴木直道も知事職を辞職したらさっさと東京へ帰ってゆくのだろう。

そんな人物が、北海道を本気で救おうと思ってるだろうか?
―――自分は、そうは思えない。



2022年10月5日付訪問者数:186名様
お付き合いいただき、ありがとうございました。

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 脳裏にグルグル廻るキスシー... | TOP | 「雨を告げる漂流団地」を観... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 鉄道