北海道新聞 2022年4月3日付記事
「“並行在来線 函館~長万部間”存廃 まず貨物の議論を全道で」米林千晴(江差支局長)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/664828?rct=n_jrhokkaido
北海道新幹線の札幌延伸後、経営分離される
並行在来線の「函館~長万部間(147.6キロ)」の存廃論議が進んでいない。
同区間は1日最大51本の貨物列車が往来し、全道物流の屋台骨を支える大幹線だが、
新函館北斗駅以北では経営分離後の輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)予測が、
JR北海道の鉄道廃止・バス転換基準「200人未満」を下回る。
道と沿線自治体との協議はなお時間を要する見通しで、
道は地域交通としての鉄路存廃論議よりも、
全道的に重要度が高い貨物列車の存続に向けた検討を優先すべきだ。
2030年度:195人、
2060年度: 81人。
道庁は昨年4月下旬に函館市内で開いた協議会で、
新函館北斗~長万部(129.7キロ、支線含む)の将来の輸送密度の予測を示した。
函館市内と新幹線とのアクセス輸送を担う函館~新函館北斗(17.9キロ)が2030年度5,592人、
2060年度2,963人となったのとは対照的だった。
さらに道庁は第三セクターが全区間の鉄路を維持した場合の収支予想も提示。
運賃収入の5倍以上の貨物列車線路使用料が得られると試算したが、
出席者からの「貨物列車の運行本数は将来も維持されるか」との質問に対し、
道側は「ここは旅客鉄道をどうするかを議論する場」と回答を拒んだ。
沿線自治体が「バス転換」を選択した場合、
道は改めて、JR貨物、荷主などと協議の場を持つ考えという。
新函館北斗~長万部間の鉄路は地域旅客交通としての利用度は低いものの、
貨物輸送の面で見ると道内から本州へ農産物を、本州から道内へ書籍や生活物資を運ぶ
重要な「大動脈」だ。
北見のタマネギや十勝、富良野のジャガイモなどの出荷に加え、
宅配便やネット通販など道民の多くが利用するサービスは、鉄道輸送が多くを担っている。
北海道運輸局のまとめによると、2017年の道内~道外間の物流のうち
鉄道貨物は453万4,000トン(7.5%)を占め、比率は全国物流の鉄道貨物(5.3%)より高い。
ホクレン(札幌)が、2016年3月の北海道新幹線開業に伴い旧江差線を引き継いだ
第三セクターの「道南いさりび鉄道(五稜郭~木古内間、37.8キロ)」に出資したのも、
鉄道輸送の重要性を鑑みたからだ。
また、函館線本線を迂回(うかい)する支線の砂原線(大沼~渡島砂原~森)や
藤城線(七飯~大沼、途中駅なし)は、
地域交通の利便性ではなく、急カーブや急勾配を避けるため、
主に貨物の広域輸送増強用に整備された区間だ。
貨物の運行本数確保など複線の役割も果たしている。
貨物列車が線路にかける重量の負担は旅客列車に比べ圧倒的に大きく、
支線内では最大88倍にもなると試算される区間もあり、線路維持のコストも大きい。
函館~長万部間が一部を除いてほぼ複線が維持されているのは、
頻繁に走る貨物列車のためとも言えるのではないか。
これについて、沿線自治体からも
「全道レベルの貨物輸送にかかるコストをなぜ、
旅客利用が少ない小さな地元沿線自治体が背負わなければならないのか」 との声が出始めている。
渡島管内長万部町は昨年2021年の町広報誌10月号で、町の考えとして
「北海道物流の確保は国や北海道庁が担うべきだ。
旅客需要がほとんど見込めない区間の場合、鉄道施設を沿線自治体が管理する仕組み自体に無理がある」
との主張を表明。
現在の枠組みによる鉄路の存続論議に疑問を投げかけた。
新幹線の札幌延伸後、在来線の「函館~長万部間」では特急列車の運行は想定されていない。
同区間の鉄道輸送は、旅客より貨物の重要度が高いのが、より明白になる。
そうであれば、鉄路をどうするかは旅客輸送の協議の結論を待つことなく、
国全体の物流を左右する貨物輸送の問題を先行して
国や道庁が協議、検討するのが筋だ。
需要が低い沿線自治体の旅客輸送の議論にこだわり、
道内全体に波及する物流に関わる問題を後回しにしてはならない。
<ことば> 「函館~長万部間を除く並行在来線の存廃協議」
北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線のうち、
特急や貨物が走らない「長万部~小樽間(140.2キロ)」については、道庁と沿線9市町の協議会が2月上旬、
「長万部~余市間(120.3キロ)」の廃止・バス転換を決定。
残る「余市~小樽間」も3月下旬、廃止・バス転換が決まった。
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自分としてもこれ以上付け足す必要がない程
まったく同感です。
とにかく北海道庁の「逃げ腰ぶり」に憤りを感じずにいられません。
新函館北斗駅開業からの6年間、何も学ばなかったのでしょうか。
北海道新幹線の「新青森~新函館北斗間」ももちろん、
残る「新函館北斗~札幌間」もコロナ禍が明けたとしても
採算性は確実に想定を下回るだろう。
いいかげん、北海道新幹線への甘い幻想を捨てるべきです。
それよりも東京~札幌間の大物流を絶対に絶やすことのないよう
少しでも所要時間を短縮できるよう
整備強化する環境(JR貨物の営業路線は国有化するなど)を
造るべきです。
さらに言うには、函館は今もなお北海道の重要な観光拠点であり、
ならば札幌・新千歳方面からの洞爺・登別経由の観光客の路線である現行特急「北斗」も
新幹線開業後も1日2往復は守るべきではないのか。
万が一「北斗」全廃となってしまったら、全国や道東からの観光客の大幅な減少も
覚悟しなければならない。
「“並行在来線 函館~長万部間”存廃 まず貨物の議論を全道で」米林千晴(江差支局長)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/664828?rct=n_jrhokkaido
北海道新幹線の札幌延伸後、経営分離される
並行在来線の「函館~長万部間(147.6キロ)」の存廃論議が進んでいない。
同区間は1日最大51本の貨物列車が往来し、全道物流の屋台骨を支える大幹線だが、
新函館北斗駅以北では経営分離後の輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)予測が、
JR北海道の鉄道廃止・バス転換基準「200人未満」を下回る。
道と沿線自治体との協議はなお時間を要する見通しで、
道は地域交通としての鉄路存廃論議よりも、
全道的に重要度が高い貨物列車の存続に向けた検討を優先すべきだ。
2030年度:195人、
2060年度: 81人。
道庁は昨年4月下旬に函館市内で開いた協議会で、
新函館北斗~長万部(129.7キロ、支線含む)の将来の輸送密度の予測を示した。
函館市内と新幹線とのアクセス輸送を担う函館~新函館北斗(17.9キロ)が2030年度5,592人、
2060年度2,963人となったのとは対照的だった。
さらに道庁は第三セクターが全区間の鉄路を維持した場合の収支予想も提示。
運賃収入の5倍以上の貨物列車線路使用料が得られると試算したが、
出席者からの「貨物列車の運行本数は将来も維持されるか」との質問に対し、
道側は「ここは旅客鉄道をどうするかを議論する場」と回答を拒んだ。
沿線自治体が「バス転換」を選択した場合、
道は改めて、JR貨物、荷主などと協議の場を持つ考えという。
新函館北斗~長万部間の鉄路は地域旅客交通としての利用度は低いものの、
貨物輸送の面で見ると道内から本州へ農産物を、本州から道内へ書籍や生活物資を運ぶ
重要な「大動脈」だ。
北見のタマネギや十勝、富良野のジャガイモなどの出荷に加え、
宅配便やネット通販など道民の多くが利用するサービスは、鉄道輸送が多くを担っている。
北海道運輸局のまとめによると、2017年の道内~道外間の物流のうち
鉄道貨物は453万4,000トン(7.5%)を占め、比率は全国物流の鉄道貨物(5.3%)より高い。
ホクレン(札幌)が、2016年3月の北海道新幹線開業に伴い旧江差線を引き継いだ
第三セクターの「道南いさりび鉄道(五稜郭~木古内間、37.8キロ)」に出資したのも、
鉄道輸送の重要性を鑑みたからだ。
また、函館線本線を迂回(うかい)する支線の砂原線(大沼~渡島砂原~森)や
藤城線(七飯~大沼、途中駅なし)は、
地域交通の利便性ではなく、急カーブや急勾配を避けるため、
主に貨物の広域輸送増強用に整備された区間だ。
貨物の運行本数確保など複線の役割も果たしている。
貨物列車が線路にかける重量の負担は旅客列車に比べ圧倒的に大きく、
支線内では最大88倍にもなると試算される区間もあり、線路維持のコストも大きい。
函館~長万部間が一部を除いてほぼ複線が維持されているのは、
頻繁に走る貨物列車のためとも言えるのではないか。
これについて、沿線自治体からも
「全道レベルの貨物輸送にかかるコストをなぜ、
旅客利用が少ない小さな地元沿線自治体が背負わなければならないのか」 との声が出始めている。
渡島管内長万部町は昨年2021年の町広報誌10月号で、町の考えとして
「北海道物流の確保は国や北海道庁が担うべきだ。
旅客需要がほとんど見込めない区間の場合、鉄道施設を沿線自治体が管理する仕組み自体に無理がある」
との主張を表明。
現在の枠組みによる鉄路の存続論議に疑問を投げかけた。
新幹線の札幌延伸後、在来線の「函館~長万部間」では特急列車の運行は想定されていない。
同区間の鉄道輸送は、旅客より貨物の重要度が高いのが、より明白になる。
そうであれば、鉄路をどうするかは旅客輸送の協議の結論を待つことなく、
国全体の物流を左右する貨物輸送の問題を先行して
国や道庁が協議、検討するのが筋だ。
需要が低い沿線自治体の旅客輸送の議論にこだわり、
道内全体に波及する物流に関わる問題を後回しにしてはならない。
<ことば> 「函館~長万部間を除く並行在来線の存廃協議」
北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線のうち、
特急や貨物が走らない「長万部~小樽間(140.2キロ)」については、道庁と沿線9市町の協議会が2月上旬、
「長万部~余市間(120.3キロ)」の廃止・バス転換を決定。
残る「余市~小樽間」も3月下旬、廃止・バス転換が決まった。
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自分としてもこれ以上付け足す必要がない程
まったく同感です。
とにかく北海道庁の「逃げ腰ぶり」に憤りを感じずにいられません。
新函館北斗駅開業からの6年間、何も学ばなかったのでしょうか。
北海道新幹線の「新青森~新函館北斗間」ももちろん、
残る「新函館北斗~札幌間」もコロナ禍が明けたとしても
採算性は確実に想定を下回るだろう。
いいかげん、北海道新幹線への甘い幻想を捨てるべきです。
それよりも東京~札幌間の大物流を絶対に絶やすことのないよう
少しでも所要時間を短縮できるよう
整備強化する環境(JR貨物の営業路線は国有化するなど)を
造るべきです。
さらに言うには、函館は今もなお北海道の重要な観光拠点であり、
ならば札幌・新千歳方面からの洞爺・登別経由の観光客の路線である現行特急「北斗」も
新幹線開業後も1日2往復は守るべきではないのか。
万が一「北斗」全廃となってしまったら、全国や道東からの観光客の大幅な減少も
覚悟しなければならない。