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音楽大好き男の徒然なる日記

週のはじめに考える 非寛容を打ち払いたい(東京新聞社説)/今こそ中村哲さんを想う

2021-09-18 | 日記
東京新聞 2021年9月12日付社説
「週のはじめに考える 非寛容を打ち払いたい」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/130425?rct=editorial

国際テロ組織アルカイダが起こした2001年9月11日の米中枢同時テロから20年がたちました。

米国は翌月、アルカイダを保護していたアフガニスタンのタリバン政権を倒すため、
同国に侵攻。
2003年3月には、フセイン政権下のイラクと開戦しました。

フセイン政権は崩壊しましたが、アフガンでの米軍駐留は先月の撤退まで続き、
結局、タリバンが復権しました。

テロと二つの戦争。
この巨大な暴力の連鎖はいまも世界に影を落としています。


◆秩序崩した暴力の連鎖
一連の出来事が衝撃的だったのは、領土を基盤とする国民国家の概念や戦後の国際秩序という
「常識」を揺るがしたからです。

アルカイダが米国を攻撃した理由はパレスチナ問題でのイスラエル支援など、
米国を西欧によるイスラム圏侵略の中枢と見なしたためです。

イスラム主義者の世界観は既存の国境とは無縁で、世界をイスラム圏と異教徒世界に二分します。
「9・11」もイスラム圏防衛の聖戦と位置付けていました。

一方、当時のブッシュ米大統領も米軍を「十字軍」になぞらえました。
信仰の力で「アルコール依存症から生まれ変わった」と公言する大統領は
国内のキリスト教右派の一群と親密でした。
その一群は聖書の記述を根拠に、
イスラム圏との攻防が「キリストの再臨」や「千年王国」を近づけると信じ、
これらの戦争を後押ししたのです。

ブッシュ政権の中枢を操っていた新保守主義派(ネオコン)も
剣呑(けんのん)な集団でした。
彼らは先制攻撃戦略の信奉者たちです。
「怪しければ、殴られる前に殴れ」という論理です。
当然、国連憲章下の国際法では認められません。
それでも戦争を起動したのです。

国と国の構図では収まらない対立にあおられ、
弱肉強食の論理が横行しました。
一連の争いは戦場の外にも流血を広げました。

具体的には欧州でのテロです。
イスラム教徒の目からは、アフガンとイラクでの戦争は西欧の侵略にほかならず、
一部の若いイスラム教徒は凶行に走りました。

イラクでは敗戦により国民国家の体裁が崩れ、
同じイスラム教徒の間での宗派対立が激化し、
それがスンニ派の過激派「イスラム国(IS)」を生み出しました。

米国主導の「対テロ戦争」も乱用されました。
各地の強権的な政権は反政府派弾圧の口実に使います。
それは国家を支える「法の支配」の論理を衰退させました。


こうした強権政治や宗教的な扇動に異議をとなえたのが、
2010年暮れから始まった「アラブの春」です。
チュニジアで警官から暴行された青年が抗議の焼身自殺をしたことが起点となったのです。

瞬く間にいくつかの独裁政権が倒されましたが、
民主化には結実せず、
少なからずの国が内戦に陥りました。
その結果、膨大な難民が欧州に流れ込みました。

それ以前の断続的なテロ事件の影響もあり、
欧州では難民排除を叫ぶ排外主義の嵐が吹き荒れました。
新自由主義政策による格差拡大もそれに拍車をかけました。

各国では出自にとらわれない普遍的な人権尊重の精神が揺らぎ、
逆に民族や宗教をよりどころとする風潮が強まりました。
国際的にも協調よりも自国優先が当たり前のように語られ始めます。
米国のトランプ前政権が好例です。



◆「敵」なくす共同作業
こうして「9・11」とその後の戦争は、
世界を非寛容と敵意の海に塗り替えていきました。

一部で揺り返しや多様性を訴える声もあります。
しかし、殺伐とした空気はいまも世界中に漂っています。

こうした流れを覆すことはたやすくありません。
危機に際しては誰もが自己防衛のため、民族や宗教への帰属を深めがちです。
そのために本来なら共存可能な異分子を「敵」と想定するのです。


どうすべきなのか。
「敵」をなくすことが最短の道に見えます。
人種や言語が違っていても、誰もが同じ痛みを感じる人間にすぎないことに気づくべきです。

折しも世界はコロナ禍に襲われています。
出自にかかわらず、人間である限り、誰もが感染してしまう。
そして一人でも地球上で感染している限り、この悪夢は終わりません。
「敵」づくりはコロナ封殺の障害にしかなりません。


「災いを転じて福となす」という言葉があります。
感染症との共同の闘いが、
「9・11」から始まった非寛容の空気を打ち払う契機とならないか。

角度を変えて見れば、災いであるコロナ禍も世界を救う好機であるかもしれません。

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「9.11.」の衝撃のニュースから10年が経った。
あの犠牲者とその家族・友人たちの報道がされる。

だけど、決して忘れてはいけないのは、
世界貿易センタービルでの犠牲者が約3,000名ではあるが、
アフガニスタン戦争で犠牲になった人は「何十万人」であることを。
その地獄は未だ収まるどころか、タリバン政権の復活でまた強まりかねない事も。



思えば、冒険家・マゼランが新大陸を発見した時代から
白人&先進国がやってきた事(侵略&資源強奪)を遡って検証しないと
次の時代に進めないのかもしれない。

発展途上国の鉱物やダイヤモンドの原石、石油などの資源を奪い、
それに見合うだけの利益還元を先進国も大企業・商社はしてきただろうか―――?
たぶんしてこなかった筈だ。


たぶん日本のNGOもJETROも、それは言えるのではないか。
発展途上国の農業振興の目的のはずが、
いつしか住民に立ち退きなどを伴う「ダム建設」にすり替わってしまったケースなど・・・
漁業ひとつにしても漁師一人ひとりに「網と漁法」を普及すれば良いところを
地主・船主だけに大金を渡して、日本の商社が魚を買い占めてしまうだけの方法だったり・・・

それは富の独占という「格差」を生むだけの論理だ。


だから格差が生まれ、一握りの者だけが富を独占し、
その怒りのマグマが「9.11」で爆発したのではないだろうか―――?


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そうこうしているうちに、大事な日本人を思い出した。
アフガニスタンで医師として入りながら、庶民に向き合っているうちに
用水路の建設まで自らの手で始めた中村哲(1946~2019)さんだ。
ウィキペディア解説は、
https://w.wiki/3xfA


2008年には参議院外交防衛委員会で、参考人としてアフガニスタン情勢を語っている。
 「アフガニスタンにいると
 『軍事力があれば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。
  敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが
  一番の安全保障だと肌身に感じる。 

  単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった。
  憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、
  リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれているんです」
  (佐高信 さんとの対談で)

2010年、水があれば多くの病気と帰還難民問題を解決できるとして、
  福岡県朝倉市の山田堰をモデルにして建設していた、
  クナール川からガンベリー砂漠まで総延長25kmを超える用水路が完成し、
  約10万人の農民が暮らしていける基盤を作る。


彼なくして、アフガニスタンにおける日本への信頼は生まれなかっただろう。


そんな中村哲さんを追悼する、さだまさしさんの歌
「ひとつぶの麦~Moment」(2020)をご紹介いたします。

「風に立つライオン」(1987)を熟知するファンにとっては“二番煎じ”に感じる面もあるにはある。
過剰なオーケストレーションに頼った面や、
間奏にベートーベンの「悲愴」を取り入れた面などは。

だが、彼の“人となり”をしっかり取り入れた歌は、
多くの人に受け入れられる筈だ。

ひと粒の麦 ~Moment~ さだまさし 『2021新春生放送!年の初めはさだまさし』より


歌詞:J-Lyric.net
https://j-lyric.net/artist/a0004ab/l0508bb.html



  オリジナルアルバム『存在理由~Raison d'être レゾン・デートル~』(2020)に収録。



追記:
中村哲さんのアフガニスタンでの活躍を映画にした
「劇場版・荒野に希望の灯をともす」は今なおどこかの劇場にて公開が続いております。

劇場版「荒野に希望の灯をともす」予告編 ~中村哲医師 ドキュメンタリーの完全版~


百の診療所より一本の用水路をー

戦火のアフガニスタンで病を治し、井戸を掘り、用水路を建設した
医師 中村哲。
中村医師は何を考え、何を目指したのか?

20年以上にわたり撮影した映像素材に現地の最新映像を加えた
劇場用ドキュメンタリーの完成版!

2022年7月23日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー
【名古屋】シネマスコーレ ほか全国順次公開

製作・配給:日本電波ニュース社
2022年/日本/カラー/90分/ (C) Nihon Denpa News Co.,Ltd.

公式サイト:http://kouya.ndn-news.co.jp/
公式 twitter: https://twitter.com/kouya_2022
公式 Facebook : https://m.facebook.com/kouya2022

#中村晢 #ペシャワール会 #アフガニスタン  #ドキュメンタリー #映画 
#ポレポレ東中野

中村哲さんの功績を忘れない、と同時に
テロと中東の混沌が、未だ中東で続いていることを忘れてはならない。

その解決法も、アメリカ側の論理だけに賛同してはならない。
かつて建国時、遣隋使・遣唐使を派遣して宗教や文化を輸入した歴史を持ち、
今、西側G7先進国としての位置付けの、日本しかない解決法を生み出せる道はきっとあるはずです。


ペシャワール会:公式ホームページ
 http://www.peshawar-pms.com/index.html

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