高橋のブログ

不定期に..

【2018.10.28、第87回日本音楽コンクール.ヴァイオリン部門本選を聴く】

2018-10-29 22:14:21 | 日記
今年は2次予選の1日目と本選のみの鑑賞。

私が初めてこのコンクールを鑑賞したのは第62回、1993年のことだ。私は当時28歳か。
今、53歳だから、四半世紀、このコンクールに接してきたということ。

戦時中も中止されることなく開催されてきた伝統のコンクール。コンサートと違って、毎回、会場に行くたびに自分も緊張する(関係ないのに)。

今年は応募が110人に留まった。その中から4人が本選出場。4月頃に課題曲等、要項が発表され8月末頃から1次、2次、3次と予選が行われ、
3次終了の9月1日に本選出場者が発表。それからの約2ヶ月弱、この4人は緊張感を持続しながら猛練習に励んできたことと思う。

今年の審査員は伊藤亮太郎、神谷美千子、三上亮、瀬崎明日香、影山誠治、小栗まち絵、漆原啓子、野口千代光、徳永二男の各氏、計9名。
会場オペラシティの2Fセンター席が審査員席。一般聴衆は立入禁止。

私は今回は2FバルコニーR席、センター寄り最前列で鑑賞した。毎回、このような席で鑑賞する。演奏を聴く一方、時々、審査員達を見つめるわけだ、

瀬崎さんが審査員の1人だったが第63回、第64回に彼女は本選に出場している(第63回は入選、第64回は1位)。
その後のご活躍ぶりは敢えて記さないが、今やこのコンクールの審査をする立場になっていることに月日の経過を感じた。


さて各自の演奏感想(素人感想)に入る。

(1)1番目は荒井里桜さん。藝高→藝大(2年生)で研鑽中。今回の4人中、一番有名な方のように思える。高校時代に学生音コンを制し、
既にプロオケとも共演している。私も1度だけだが実演に接している。今回、彼女はブラームスの協奏曲を選択。音程、リズム感も見事であり、堂々たる演奏。
ブラームスのこの曲は巨岩のような大きな存在だが、真正面から取り組む様子に深い感動を与えてくれた。
また既にプロオケとの共演も数多い(場数を踏んでいる)からか、リラックスしながら弾いているところも感じられた。
コンクールではなく演奏会という雰囲気。この曲の魅力を聴衆に強く訴えてくれた。

さすが、本選に上がってきただけの方だと感服した。


(2)2番目は福田麻子さん。藝高→東京音大(特別特待奨学生)。藝高から東京音大か..。師事した先生の強い薦めがあったのか、
東京音大からの熱烈なアプローチがあったのか..。
最近、東京音大はヴァイオリン部門にも相当力を入れてきている。このコンクールで悲願の1位を!という大学の大きな期待も背負っての演奏では?と思った。
彼女も既に各地でリサイタルをやっていてお名前は知っている。

バルトークの2番を選んだ。この曲で本選というと近年では第78回の尾池さん、あるいは第81回の会田さんの名演が今も印象に強い(それぞれ1位を獲得)。
この曲は何といってもまずは冒頭だ、ハープの怪しげなリズムに乗って、ソロが力強く奏でられるわけで、尾池さん、会田さんの時は、おおっ!と思わず声を
出してしまいそうな感動の瞬間があった。対して、今回の福田さんは、若干音程の狂いがあった。少し残念。


次々に出てくる難解な旋律に対峙していくも、この曲に対して私が抱いている土臭さ(泥臭さ)を感じなかった。もう少し表現力が欲しかった。


(3)3番目は関朋岳さん。東京音大附→東京音大。今年からN響アカデミー生になり、同オケの定期演奏会等にも乗っている方。ブラームスを選択。
長い序奏を終えて、ソロが始まるわけだが、このソロを少し聴いただけで、違和感を覚えた。
雑といっては大変失礼な話だが、弓を過剰に押し当てて弾いている感じで、また姿勢や手首の使い方も独特だった。
速い部分ではオケとも合わない。

大ホールを鳴らそうと力んだのか。あるいは1番目に同曲を弾いた荒井さんの名演を楽屋等で聴いて、少し動揺したのか..。
2楽章はとても歌心ある演奏であったが。

ただ、彼は他のコンクールで実績を得ているから、非凡な存在であることは確かだろう。



(4)4番目は唯一の高校生、佐々木つくしさん。藝高3年生。チャイコフスキーを選択。非常に清廉な音色、しかしやや音が細い。
チャイコフスキーはもう少し太い音が欲しいところだが、音程・リズム感は確かに素晴らしかった。
しっかり鍛えられていることがわかった演奏だが、それはいわゆる模範演奏に近かった。もう少し自己主張が欲しかった。



共演は高関・シティフィル。

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そういうことで私の評価は1位荒井、2位福田ないし佐々木(音質を取るか、音程を取るか)、入選が関。
聴衆賞予想は荒井であったが、実際の結果は3次予選の審査点も加わるため、この本選だけではわからない部分もある。


そして審査発表。【1位荒井、2位佐々木、3位福田、入選は関。聴衆賞は佐々木】。


今年は正直なところ、高いレヴェルの接戦には思えなかった。荒井さんだけがいつもの本選基準に合う演奏に感じた。



来年はまた高い位置での戦いを期したい。桐朋の奮起も同様。またコンクール定番のシベリウスが今回、取り上げられなかったのが少し寂しかった。


11/20の毎日新聞朝刊に各審査員の得点が公表される。

フライングブラヴォーは荒井さんの時。3FバルコニーL席、ステージ付近から聞こえた。オッサンの声。困ったものだ。

4人を本当に真剣に聴いたので、かなりの疲労感を覚えた。
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